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蛇珀と離れ離れになって数日後、いろりは新しい制服に袖を通していた。
いろりは一つ大人になる。
今日は高校の入学式、そして同時に彼女の十六歳の誕生日であった。
目が見えるようになってから母が買ってくれた立派な姿見。おろしたてのセーラー服を着て映る自分を見て、いろりは蛇珀様に見てもらいたかったな、と心の中で呟いた。
「……ダメダメ、そんなことを言っていては! 蛇珀様はもっとお辛い思いをされているんだから!」
いろりは首を横に振って自身を奮い立たせると、しかと鏡を見据えて頷いた。
そして新しい学校指定の紺色の鞄を肩にかけると、学習机の上に置いた小さな白蛇の陶器に手を合わせた。
「蛇珀様、行ってまいります。今日もどうか、ご無事でありますように……」
蛇珀が苦行に出てすぐ、いろりは例の神社でこの白蛇の置物を買い、蛇珀の代わりに毎日無事を祈っていた。
いろりは近くの高校ではなく、少し離れた、電車通学になる高校を受験し、見事合格していた。
中学の際はいろいろあったため、心機一転、思い切って新しい場所でがんばろうと決めたのだ。
受験試験の時はまだ蛇珀と出逢う前だったため、自身の今の状況など到底予測不能であったが。
見慣れない風景、初めての学校。
どんな人がいるんだろう? と緊張しつつ、いろりは広い高校の敷地内に足を踏み入れ、指定されたクラスに向かった。
一年A組、の札が上がったドアの前に立ち止まると、いろりは一度深呼吸をし、心の中で唱えるように言い聞かせた。
(大丈夫、大丈夫。私には蛇珀様がついてる。蛇珀様……力を貸してください)
左手首につけた数珠、蛇珀が唯一残したそれに触れ、いろりは思いきってドアを横に引いた。
「あ、いろりちゃーん! おっはよーぅ!」
緊張でやや俯いていたいろりは、相当緊張感のない声を耳にし、ゆっくりと顔を上げた。