翌朝。
いつのまにか寝てしまった俺は、舘の作る朝食の良い匂いで目が覚めた。
慌てて服を身に着け、リビングへと出て行く。そこには寝起きとは思えないような、爽やかな顔で、舘が朝食を並べていた。
酔っていない時は、まったく隙のない男なのだ。
❤️「佐久間、おはよう。朝ごはん食べていくでしょ?」
🩷「そうしたいところだけど、うちの子たちのご飯まだだから」
❤️「あ、そうか」
舘は、一瞬、残念そうな顔をした。
一晩肌を重ねただけで、好きになるとかそういうのはないけど、やることやって、そのまま家に急いで帰るっていうのもな…と俺は何も言い出せずに立ち尽くしてしまった。
❤️「また来いよ。いつでも…」
🩷「うわーうわーうわー!!それはなしっ」
慌てて、舘から発せられそうな言葉を遮る。
舘は首を傾げた。
❤️「飯、食いに来いって意味だけど?」
🩷「えっ」
❤️「それともまた、俺を食べたいの?」
🩷「……いや。うん、まあ、悪くはなかった…てか、良かった…あの」
言葉を選んで直接口に出していくと、冷静な舘が珍しくもじもじしているので、俺はなんだかその反応にむずかゆくなってしまった。
🩷「帰る。酒は当分控えろよ」
❤️「あ……うん」
なにその反応。
ちょっと…可愛いじゃん。
🩷「じゃ、また」
❤️「うん、また」
玄関を出て行く間際。
舘が、俺を見送る無言の表情が、いつまでも胸の中に残って、なかなか消えなかった。
おわり。