私の高校はバイト禁止だ。
でも私はバイトをしている。
なぜかって?
それは私の家が貧乏だから。
私の母は早くに亡くなった。
父は元々居なくて母子家庭だった。
私の他に、今残された家族は
中2の弟の樹と小4の妹の花がいる。
多分、高校にバレたらバイトが出来なくなるかもしれない。
でも、お金が無いのだから
こうでもしないと生きていけない。
案外、バイトはバレずに続けてきたが
今日は遂にバレてしまったらしい。
今日、職員室に呼ばれたのだ。
「ここ、バイト禁止なの知ってるよね?」
私の周りは冷たい空気に包まれる。
「はい…」
私が力無く答えると、
「家庭のことは聞いてるけど….これは流石に…」
私のバイトは至って普通だ。
カフェのバイトなのだ。
先生は何がダメなのだろうか。
私の中にたくさんの疑問が飛び交う。
「バイト辞めてね?」
「えっ?」
驚いて声を出してしまった。
「でも、それじゃあお金が…」
「はぁ….水咲さんならちゃんと校則守れると思ったのになぁ…」
先生がため息をつく。
ちゃんとって何?
まただよ、また。
この先生はいつも私を “ 出来る子 ” のように
話すが、私は至って凡人だ。
「分かりました…では..」
早くこの場から逃げたかった私は
小走りに職員室を後にした。
だが、前を向いていなかったせいか
誰かにぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさ━━━━」
「ごめん!!大丈夫!?」
私が謝る前に謝ったのは岩瀬先輩だった。
「あ、大丈夫です…」
「…..さっきのやり取り見ちゃったんだけど..」
「料理とか出来るの?」
「まぁ、家事全般…」
「じゃあさ、俺の家政婦になってくんない?」
「え?」
次の日、
昨日の出来事が衝撃的すぎて全く眠れなかった。
「姉ちゃん?もう朝なんだけど」
「遅刻するよ?」
「お姉ちゃん、お腹空いた!!」
「え!?今何時?」
「8:12」
「ちょっと待って今すぐ作る!!」
「俺はもう行く」
「ご飯は?」
「いらない」
「….分かった」