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「そ、うです……けど……」
あんな光景を目の当たりにした直後ではいつも強気な優來も素直に答えるしかなかった。
「ふーん? 何か今日はやけに素直じゃん?」
どこか面白がるような至の声に優來は気まずそうに視線を逸らす。
「……だ、だって……」
「ん?」
続きを促すように至が首を傾げたその時、至の背後で何かが動く気配がすると先程地面に倒れされた男の一人がゆらりと身体を起こしていて、
「テメェ……呑気に女とイチャついてんじゃねぇよ――!」
怒声と共に男が二人目掛けて駆け出してくる。
「きゃっ……!」
その姿に気づいた優來が悲鳴を上げかけた瞬間、至は小さく息を吐いた。
「……はぁ」
そして優來を背中に庇うように振り返った次の瞬間、振り上げられた男の腕を素早く掴んだ。
「優來との時間、邪魔してんじゃねぇよ!」
「ぐっ……!」
怒りを露わにしながら容赦なく男のみぞおちへ拳を叩き込み、男は呻き声を漏らしてその場に蹲った。
すると至はそんな男を見下ろしたままゆっくりとしゃがみ込んで、
「で? まだやる?」
低く冷えた声と共に再び男の髪へ手を伸ばしかけたその瞬間、
「や、止めて!」
背後から優來の声が飛んできた。
「これ以上騒ぎになったら、警察呼ばれちゃう……!」
その言葉に至の動きが止まり、暫く男を睨みつけていたがやがて舌打ちを一つすると、
「ッチ……」
伸ばしかけていた手を下ろした至は立ち上がった。
「命拾いしたな、クソガキ」
不服そうに吐き捨てながらも至はそれ以上男に手を出すことはなく、何事もなかったかのように優來の手を取ると、
「行くぞ」
「え……あ、はい……」
戸惑う優來の手をしっかりと握ったまま至はその場を後にした。
「あ、あの!」
暫くの間手を引かれるまま歩いていた優來はようやく声を掛けた。
「ん?」
振り返った至に優來は繋がれたままの手へ視線を落とす。
「手……離して……」
「ああ、悪ぃ」
指摘された至は何の躊躇いもなく手を離した。
あまりにもあっさりとした反応に優來は少し拍子抜けしながらもさっきの出来事が頭から離れずにいた。
「……さっきの……何で、あんなことに……」
聞かなければいい、そんなことは優來自身が一番よく分かっていた。
わざわざ尋ねたところできっと良い話など出てこない。
それでもどうしても気になってしまった優來。
好奇心に負けるようにして口にした問いに至はさほど気にした様子もなく答えた。
「あれは、あのクソ共が勝手に突っかかって来たんだよ」
「勝手にって……」
本当に何のきっかけもなくいきなり喧嘩になるものなのだろうかと優來が疑わしげな目を向けると、至は少しだけ考えるような素振りを見せた。
「まあ、一人と肩がぶつかりはしたけどな」
「それが原因なんじゃ……」
思わず口から出かかった言葉を優來は途中で飲み込むも、至は悪びれるどころかむしろ当然のことのように続けた。
「あれはアイツらが悪いんだよ。広がって歩いて騒いでるから。言っとくが、ぶつかって来たのもあっちだからな」
「そ、そう、なんですか……」
(やっぱり聞かなければよかった)
至と話をしていると常識というものが少しずつ分からなくなってくると優來は密かに感じていた。
コメント
1件
うわ〜、至くん、ほんと危ない男だね……でもそれがカッコいいんだよなあ🥀💥 優來を守るところは熱いけど、「優來との時間、邪魔してんじゃねぇよ」って台詞がもうヤンデレ感すごくてドキッとした💘 で、手を離すときがあっさりしてるのも、ギャップ萌えっていうか。 でも優來の「常識が分からなくなる」って気持ち、すごくわかるよ…この感覚、癖になるのかも🌙
管野アリオ
875
#オリジナル
重田💋(omoda)
886