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#甲子園
第35話 「初陣」
センバツ高校野球 一回戦。
柳城高校 ― 浪速学院。
甲子園初戦。
相手は優勝候補。
全国屈指の打線とエースを擁する強豪だった。
試合前。
スタンドの応援席。
おっちゃんが腕を組む。
「相手がどこやろうが関係なか」
おばちゃんが笑う。
「まずは楽しんでほしかね」
アルプススタンドには柳城の校旗が揺れていた。
そして――
プレイボール。
初回。
柳城はいきなりピンチを迎える。
一死一、三塁。
浪速学院四番。
誰もが先制を覚悟した。
だが。
ショート正面。
6―4―3。
ダブルプレー。
柳城ベンチが沸く。
「よしっ!!」
福間監督も小さく頷く。
三回。
柳城先頭打者がヒット。
送りバント成功。
一死二塁。
ここで三番打者。
初球を叩く。
打球は右中間。
タイムリー二塁打。
柳城先制。
1―0。
甲子園初得点だった。
アルプススタンドが揺れる。
舞はスコアを書きながら思わず笑顔になる。
五回。
浪速学院も反撃。
長打と犠牲フライで同点。
1―1。
試合は振り出しへ戻る。
七回。
柳城に最大のチャンス。
二死満塁。
打席は六番。
フルカウント。
スタンドが静まる。
投球。
高め。
振り抜く。
――カキン!!
打球はレフト前。
二者生還。
3―1。
柳城ベンチ総立ち。
「行けるぞ!!」
だが甲子園は甘くない。
八回裏。
浪速学院が一点を返す。
3―2。
なお二死二塁。
一打同点。
甲子園全体の空気が張り詰める。
打者は五番。
鋭い打球。
三遊間。
抜けた――
誰もが思った。
その瞬間。
ショート柴田が飛びつく。
捕った。
立ち上がる。
一塁送球。
アウト!!
大歓声。
九回。
柳城最後の守り。
二死。
ランナーなし。
最後の打者。
二球で追い込む。
三球目。
高めのストレート。
空振り。
三振。
ゲームセット。
柳城高校 3―2 浪速学院。
センバツ 18年ぶり勝利。
甲子園での歴史的な一勝だった。
整列後。
選手たちはアルプスへ向かって頭を下げる。
舞は涙をぬぐった。
福間監督は選手たちを見る。
まだ終わりじゃない。
柳城は挑戦者として、もう一つ先へ進む。
そして全国の高校野球ファンが、少しずつその名前を覚え始めていた。
第35話 終
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