テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
7話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
レトルトは、最初はただの偶然だと思っていた。
けれど――頭を撫でられたあの不思議な感覚を境に 日常のあちこちで“触れられている”ような感覚が増えていった。
友人と教室で笑い合っている時、
ふと頬にあたたかな指先が触れるような気配が走る。
驚いて振り返っても、誰もいない。
夜、布団に潜り込んで目を閉じると、
前髪をやさしく梳かれるような感触が訪れる。
その優しさは心をほどき、胸を締め付ける。
「……キヨくん、なんだよね…?」
自分に向けられている優しい気持ちに
レトルトは戸惑いながらも、次第に抗えなくなっていった。
もしこれが本当にキヨから伝わってきているのなら――
自分のことを想っているからこそ触れているのだろうか…。
そう考えるたびに、レトルトの胸は激しく高鳴り、 その優しい触れ心地に、どんどん心を奪われていった。
ある夜、
レトルトはベッドの上で人形を胸に抱え込んでいた。
そこから流れ込んでくるのは、キヨの心。
ドキドキと弾むような高揚感。
新しい何かを待ち望むときのワクワク。
時折、影のように差し込む不安や嫉妬。
――全部、全部、愛おしい。
見たこともない心の中を、
まるで隣で触れているように感じられることが嬉しくて、
レトルトは目を閉じた。
「……逢いたい。直接、キヨくんに触れてほしい……」
そう願った瞬間だった。
胸の奥が鋭く締め付けられ、息が止まった。
「……っぐ……!」
呻き声をもらし、その場にうずくまる。
痛みはすぐに消えた。
けれど、次に押し寄せてきたのは――
まるで火がついたような強烈な高揚感。
それはレトルトのものではない。
人形を介して伝わってくる、キヨの昂ぶりだった。
鼓動が速くなり、背中に冷たい汗が伝う。
「な、に……これ……」
甘さに似た熱を帯びた感情なのに、
どこか常軌を逸した危うさが混じっている。
怖い――そう思うのに、離せない。
人形を抱きしめる腕は、逆に強くなっていた。
レトルトはベッドに横たわり、人形を胸に抱き寄せる。
それはもう日課になっていた。
目を閉じれば、優しく撫でられる感覚が訪れる。髪を梳かれるような指先、そっと抱きしめられる温もり。
キヨから伝わってくるその触れ方に、レトルトは戸惑いながらも心を許し、夜ごと浸るようになっていた。
けれど、その夜は違った。
唇にふわりと何かが触れた。
「……え?」
驚きで目を見開く。誰もいない部屋。けれど確かに、唇と唇が重なる感覚があった。
人形を抱きしめる腕の中で、キヨの鼓動が流れ込んでくる。
――ドキドキと、高鳴る音。
その震えは明らかに興奮を含んでいた。
再び唇に触れる感覚。今度は強く。
そして、首筋へ、鎖骨へ、頬へ。
熱を帯びたキスの感覚が次々に落とされていく。
「……っ、キヨくん……」
思わず声が漏れる。
その瞬間、伝わってくるキヨの高揚はさらに熱を増した。
甘くて、怖い。
でも、抗えない。
レトルトの胸はドキドキと音を立てて、夜の闇に溶けていった。
――夜ごと訪れる、熱に浮かされたような感覚。
最初はただのキスだった。頬や額、首筋へと触れる唇の感覚が、次第に全身を覆い尽くすようになり、レトルトの夜を支配していった。
毎晩続くその嵐に、戸惑いながらも抗えず、レトルトの心も身体も高鳴りを覚えていた。
けれど、その夜はさらに違っていた。
全身を流れる熱の中、下腹部に突然、鋭い快感が走ったのだ。
「……っ、あ……!」
思わず身体を丸める。
それはまるで、自分の一番秘めた部分を直接触れられたかのような強烈さだった。
キヨの感覚が伝わってくる。
人形を通して、キヨが――レトルトを思いながら、昂ぶりに身を委ねているのが、はっきりと分かってしまう。
熱。欲望。震え。
それが流れ込んできて、レトルトの身体も否応なく反応する。
視線を落とせば、自分もすでに高ぶっていて――。
「……やだ、こんなの/////……」
言葉とは裏腹に、胸の奥で甘い震えが広がっていく。
二人の感覚はひとつに重なり、快楽もまた共有されていった。
――重なりあう感覚に、レトルトは呑み込まれていった。
自分のものではないはずの熱と震え。
けれど確かに、自分の奥から湧きあがるものとして広がっていく。
キヨの昂ぶりが、そのままレトルトの昂ぶりとなり、ふたりの境界は溶け合って消えていく。
「っ……あ……キヨ、くん……きもち..い」
波のように寄せては返す快感に、息も絶え絶えに身を震わせた瞬間――、ふたりの身体が同時に跳ね上がった。
絶頂。
燃え上がるような光が胸の奥で弾け、レトルトは目の前が白く染まるのを感じた。
そしてその最中、流れ込んでくるものがあった。
強烈な独占欲。
逃げ場のない支配欲。
「自分だけを見てほしい」「他の誰にも触れさせない」――そんなキヨの黒い感情が、甘い熱となって胸に注ぎ込まれる。
同時に、ぞわりと背筋を這い上がる快楽にも似た背徳感。
――自分がキヨを狂わせている。
その事実に、レトルトは震えながらも笑みさえ浮かべそうになる。
「……っは、あ……キヨくん……もっと……」
快楽と支配、愛と狂気。
すべてが溶けあって、レトルトは酔うようにその底なしの渦に沈んでいった。
つづく
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!