亜季ちゃん…‥
君からの最後の贈り物…しっかり受け取ったよ。
ありがとう…‥
亜季ちゃんからの送り物…‥
それは僕が20年以上も失っていた記憶…‥
そして君と遥香だけが知っている真実…‥
でも、この真実は余りにも衝撃的すぎた。
それは…‥
高校2年の時に起きた事故で僕の身代わりになって死んでしまった女友達が、未来からやって来た能力者によって再び命を吹き込まれた。
そしてその能力者は、そのままその足で更に過去に遡り、当時小学2年だった双子の亜季と葵の元に女友達を送り届けた。
過去と現在の世界を繋げる為に…。
それから能力者は“木箱”に入れたある薬を不治の病で入院している少女…茉奈に持って行こうとした。
でも時間を飛び越えるには、その能力者の体力ではもう1回が限界だった。
つまり自分の時代に戻るだけの力しか残されていなかった。
そこで能力者は僕から聞いていた話を思い出し、その時代の岐阜に住んでいる“まさおばあちゃん”の所に瞬間移動をして“木箱”を預けた。
10年後に必ず僕の家に郵送するよう言い残して…。
ところで事故に遭った女友達は過去に送り届けられたのに、通夜と葬式が何の問題もなく執り行われたのは能力者がその日の為に、ある計画を用意周到に進めていたからに他ならなかった。
それは今から数十年先の未来における科学技術の発展によって更なる進化を遂げていた最新鋭の技術で完全なコピーを作り上げたのだった。
つまり能力者は数十年先の未来に行って、女友達のコピーを作っていた。
それは姿かたちはもちろんの事、内蔵、骨、血管にいたるまで完全に再現された造形物であり、本物と見比べても見分けがつかないくらい精巧に出来ていた。
能力者はそれを事故現場で本物の女友達と差し替えた。
誰も気付くはずはなかった…。
そして過去に送り届けられて佐藤家の家政婦として働いている女友達が、別の人間として僕に会ったのは僕が高校2年の時…。
同じクラスメイトの双子の妹の葵が体調を崩して学校を休んだので、宿題のプリントと連絡ノートを届けに佐藤家のマンションに訪れた時の事だった。
勿論、僕はその女友達に気付く事はなかった。
まさか、佐藤家に仕えている家政婦の遠藤美咲が、これから事故で死んでしまう女友達だなんて…
この時は知る由もなかった。
それにあの時、彼女はマスクをしていて顔を見る機会はなかった。
ひと目でも見ていたら何かを感じたかもしれないが、その機会は訪れなかった。
また、あの時点で女友達は同じ世界に2人いた事になる。
でも、そんな2人が偶然に出会う機会などなく、タイムパラドックスによって宇宙が大爆発するという事にもならなかった。
そしてあの事故の後…‥
僕は、その女友達の事を忘れてしまった。
いや、正しくは能力者によって忘れさせられた。
今日、亜季ちゃんから過去に起きた全ての真相を映像で見せられるまで、僕は全く思い出す事はなかった…。
披露宴が終わった後、僕は美咲さんを誘って利根川の河川敷を歩いていた。
僕らは草の上に座り、夕日を眺めていた。
ふと美咲さんを見ると、夕日のせいだろうか…‥
いつもより血色がよく若々しく感じられた。
いやっ…気のせいなどではない。
美咲さんは間違いなく10歳以上は若返っていた。
「わかる?」
「えっ!? 何が?」