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夜の横浜。
冷たい風にコートの裾を揺らしながら、中也は赤いマフラーを巻き直して歩いていた。
街はクリスマスムード一色。
恋人たちは肩を寄せ合い、子どもたちは手にした紙袋を誇らしげに振り回している。
中也「……くだらねぇ。こんな日に一人で歩く俺もどうかしてるな」
小さく吐いた息が白く滲む。
そう言いつつも、中也の手には小さなケーキの箱。
偶然通りかかった洋菓子店で、つい手に取ってしまったのだ。
中也「(別に、誰かと食うつもりなんかじゃねぇ。ただ、甘いもんが食いたかっただけだ)」
そう言い訳しながら。
その時。
太宰「やぁ、奇遇だねぇ、中也。」
背後から聞こえる聞き慣れた声に、全身が固まる。
振り返ると、街灯の下に太宰治。
黒いコートに、にやけた顔。
まるでこの瞬間を待っていたような余裕の笑み。
中也「……てめぇ、なんでここにいやがる」
太宰「んー? クリスマスイブに君が一人でケーキ持って歩いてるって聞いてさ」
中也「誰に聞いたんだよ!?」
太宰「秘密♡」
太宰は中也の手の箱を覗き込む。
太宰「可愛いねぇ、サンタの飾り付きショートケーキだ。まさか君、寂しくて自分で?」
中也「ぶっ飛ばすぞ」
中也は顔を真っ赤にして睨むが、太宰はまったく怯まない。
太宰「じゃあ、私の分もあるんだよね?」
中也「ねぇよ!」
太宰「え〜、じゃあ今から君の部屋行って一緒に食べよう。どうせ一人で食べてもつまらないだろ?」
太宰のずるさを知っている中也は、反論できず舌打ちした。
中也「……勝手にしろ。」
中也の家に着くと、太宰は勝手に暖房を入れ、ワインを開け、ケーキの箱を嬉しそうに開けた。
太宰「ほら、可愛いじゃないか。君が選んだんでしょ?」
中也「うるせぇ、ついでだ。別に深い意味はねぇ。」
太宰「ついでにしては、ちゃんとリボンの色も選んでるねぇ。」
中也「……殴るぞ。」
ふたりはテーブルを挟んで座る。
太宰がワインを注ぎ、中也が渋々グラスを受け取る。
乾杯の代わりに、沈黙。
外では雪が舞い始めていた。
太宰がケーキをひと口食べながら、ふと柔らかく笑う。
太宰「こういうのも悪くないね。」
中也「……何がだ。」
太宰「君と静かに過ごすクリスマス。」
中也「馬鹿か。俺は別に――」
中也が言い返そうとした時、太宰がいきなり頬にキスをしてくる。
中也「は、はぁ!?」
太宰「だって、頬にクリームついてたから〜」
中也の予想通りの反応にニヤリと笑う
中也「手前…」
耳まで赤くなってしまう中也
太宰「耳まで真っ赤になってしまったね」
中也「これは…酔ってるからだ!」
そう言いワインを飲み干す
太宰がゆっくり笑う。
「メリークリスマス、中也。」
「……勝手に言ってろ。」
外の雪が静かに降り積もる中、
部屋の中は暖かく、少し、騒がしい