「待って、それはどういう事かな。チタニーを使うって。君は自分の言っていることが分かっているのか?」
私は焦っていた。チタニーにはなぜか、全てお見通しな気がしていたからだ。それを全てさらけ出されてしまうのは違う気がする。
「彼女が何を知っていると言うんだ。私だってよく分からないものを。チタニーの言うことを君は信じているのかな」
「あら言うじゃない。ならリエンはチタニーを信じていないのね」
ティニは嘲笑を浮かべながら、思ってもいない事を本心に仕立てあげる。
「違う、信じるかどうかの問題ではないよ。本来、これは私しか分からないことだよ」
私は自分に言い聞かせた。そうだ、この写真をもらったのは私だけだ。私が手にしていた写真をチタニーは見つけただけで、これが何なのかは彼女にも分からないはず。
「いいえ、そんなことないわ。だって、チタニーはリエンを利用して、散々記憶を奪っているじゃない」
記憶を奪う…?私は、ティニの言っていることが分からなかった。
「ね、チタニー。全部知ってるんでしょ」
ティニが振り向く先、チタニーは静かに頷いていた。
「だからリエンがしたことじゃないの。全部、チタニーがあなたを利用したことなの」
チタニーは、私たちの方へ歩いてくると聖女のような清らかな声で語り始めた。彼女の話すことは全て事実だった。私の失われた記憶の時間さえもいとも容易く言葉にしていた。ドルの動きを封じた事、黒服集団の安息地へ先回り、火災という罠を仕掛けたこと。花園へ彼らが練った策を阻止したこと。それらを全て、私の身体を利用して行ったということ。ただ私にはとても現実に、ましてや私がそれらをこなしたとは考えられなかった。
「全部、みんなを助けるためだったの」
未来が見えると言ったチタニーの行動が正しいのか否か。分からなかった。ただ、それを告げる彼女は今にも泣き出してしまいそうなほど弱々しかった。冗談とは思えないほど、言葉は重かった。
もしそれが本当ならば、私が森へたどり着いてしまったのも、この私が写った写真も真実ということ。私が覚えていないのは、彼女がそれらを行ったから?
「だから悪いのは全てチタニーよ」
そこまでチタニーに説明をさせると、ティニはまるで彼女を吐き捨てるように言った。
「ティニ。そんな言い方はないよ」
私は彼女のあまりに投げやりな言い方を見過ごせなかった。
「ましてや、チタニーが本当にそんなことをしたのかな。全部、証拠がないじゃないか」
「あら、まだ庇うの?証拠なら貴方の失くした記憶で充分じゃない。それを否定できないでしょ」
彼女の言うとおり、それは避けられないものだった。少なくとも、未知な力をチタニーが持っているという事は私も感じていた。
「だからって、子供にそれを咎めても意味がないとは思わないかな」
ティニは事の善し悪しを明確にしすぎている。仮にそれが全て事実としても、何度も繰り返し罪を述べる必要は無いはずだ。
「そもそもそんな実体がないような話に、納得できるわけが無い」
ここで納得してしまえば、彼女に罪を背負わせることになる。それに、彼女がただの幼い少女という存在ではない事を肯定してしまう。私はチタニーにそんな事をしたくはない。
私が言い切るとティニは、軽蔑するように睨みつけてくる。
「ええ、リエンはチタニーの言うことも、私の言うことも信じないものね」
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