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もちぷよ
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やわしゅん狂
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はる☻
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泣きじゃくる彼の背中を落ち着かせるように優しくトントンとあやすように叩きながら、どれくらいの時間が経っただろう。
やがてしゅんの呼吸は徐々に落ち着きを取り戻し、僕の胸元からゆっくりと身体を離した。
さっきまでの大泣きが急に恥ずかしくなったのか、僕の様子を伺うように、潤んだ瞳で上目遣いにじっと見つめてくる。
その瞳はまだ静かに揺れていて、目元は真っ赤。 顔は涙でぐちゃぐちゃに汚れていた。
「ふふっ。しゅん…顔、すごいことになってるよ。かわいい」
「うぅ……」
しゅんは困ったように眉を下げて笑いながら、自分のシャツの袖口で乱暴に涙を拭っている。
……愛おしい。
本当に、どうしようもないほど愛おしい人。
この人はこんなにボロボロになるまで僕のことを一途に好きでいてくれるのだ。
誰かにこんなにも求められることが、今の僕にとってどれだけ幸せで救いになることか。
「ねぇ、しゅん。しゅんは、これから俺と……どうなりたい?」
僕は彼の顔を見つめ、ストレートにこれからの関係を問いかけてみた。
もし、今この瞬間にしゅんからもう一度「付き合ってほしい」と言われたなら、僕はたぶん、迷わずにコクンと頷いていたと思う。
彼の愛に今度こそ真剣に向き合うために。
そして、彼を安心させてあげるために。
何より、僕自身がもうこの曽野舜太という男を心から好きになってしまっているから。
だけどしゅんの口から出たのは、僕の予想とは違う言葉だった。
「……俺は…じゅうがただ傍にいてくれるだけで、それだけでほんまに幸せなんさ……。もっと言うなら、じゅうが幸せでいてくれれば、笑っていてくれたら、俺はそれだけで十分幸せなんよ。ほんまに」
「……、」
付き合いたいとか、恋人になりたいとか、そういう利己的な欲望ではなく、ただ僕の幸せを願う底なしの全肯定。
あぁ、そうか……。
今はまだ、その時ではないのだろう。
彼が僕を尊重して待ってくれているのだから、僕ももっと自分自身を好きになって、自分の足で立てるようになるまで、このもどかしい距離を大切に温めなきゃいけないんだ。
そう思った。
「しゅん、ありがとう……」
僕は胸いっぱいの愛おしさを込めてそれだけを伝えると、彼のまだ熱い頬にそっと両手を添えて、心からの笑顔を向けた。
しゅんも嬉しそうに目を細める。
それは二人だけの、世界で一番甘くて優しい時間だった。
それを無残に切り裂くように、僕のスーツのポケットの奥から、無機質な電子音が響き渡った。
プルルル……プルルル……!
一気に血の気が引いていく。
僕は聞こえないフリをしてそのまま彼の頬に触れ続けようとしたけれど、静まり返った部屋の中で、その不躾な着信音をしゅんが聞き逃すはずがなかった。
「……出ぇへんの? 電話」
しゅんの声のトーンから、一瞬にしてさっきまでの子供のような甘さが消え失せる。
このタイミングで僕に電話をかけてくる相手なんて、一人しか思い当たらなかった。
電話の相手は、恐らくはやちゃんだ。
タイミングとしては、間違いなく最悪の瞬間だった。
僕はそっと手を下ろし、気まずさに耐えかねてしゅんの顔を見上げる。
「はよ、出たらええやん」
しゅんの口元は、綺麗に弧を描いて柔らかく笑っている。
なのに、その奥にある瞳は光を一切反射しない真っ黒な目に変わっていた。
ここで電話に出るのがどれほどマズい展開になるか、流石の僕にだって分かる。
僕が何もできずに硬直している間に、数十秒の長いコールはブツンと切れた。
あぁ、よかった……!
僕は胸の中で思い切りホッと大きな息を吐き出す。
はやちゃんに感づかれる前に、今のうちにスマホの電源を完全に切ってしまおう。
そう思ってポケットから大慌てでスマホを取り出した、まさにその瞬間だった。
プルルル……! プルルル……!
画面が暗くなる前に、二度目の着信が画面に滑り込んできた。
はぁ……最悪だ。
液晶の真ん中には、くっきりと“佐野勇斗”の四文字が白く光っている。
そしてその画面は、僕のすぐ隣にいるしゅんの視線にもバッチリと最悪な形で目撃されてしまっていた。
「出たらいいやん。大切なヒーローからの電話やろ?」
低く冷たい声。
昨夜のあの恐ろしい雰囲気がフラッシュバックして、冷たい汗がこめかみのあたりをタラリと伝うのを感じる。
「なに? なんで出ないん? もしかして俺に何かやましい事でもあるん?」
「な、なにが……? やましいことなんて、何もないよ…っ」
「じゃあ出たらええやん。後ろめたいことが無いなら、俺の前で堂々と話せるやろ?」
しゅんの突きつけてくる凍りつくような正論に、僕はぐうの音も出ずに何も言えなくなってしまう。
でも、本当にやましいことなんて何一つないのに。
ただこれ以上二人の男の間で修羅場を大きくしたくないだけなのに。
それでも勝手に勘違いして怒るのはしゅんの方じゃないか、と、僕は理不尽な天秤に心の中で泣きたくなった。
その時、僕の手元から、強い力でスマホが乱暴に奪い取られた。
しゅんは僕の制止を無視して、画面の通話ボタンを勝手に親指でスライドさせると、そのまま僕の耳元へとスマホを強引に押し付けて固定した。
『おい!!! 柔太朗!! 電話くらい一発で出ろって!! 今どこにいる!? 大丈夫なんだよな!?』
受話器の向こうから、スピーカーから漏れ出るはやちゃんの焦り狂った怒号が響く。
僕はしゅんの大きな手に頭を固定されるようにして、されるがままに、彼の目の前ではやちゃんと会話をすることを強制させられた。
「だ、大丈夫だよ……っ」
『お前の会社の前でずっと車停めて待ってたのに、お前が一向に出てこねぇんだもん! 会社から出てきた奴に聞いたら、山中ならもうとっくに帰ったって言われたぞ! で? 今どこにいるんだよ!? 会社で少し話すだけじゃねぇのかよ? さすがにあいつと二人きりになったりしてねぇよな!?』
はやちゃんの切羽詰まったような声。
スマホがこれだけ至近距離にあるのだ。
このはやちゃんの声は、全部ではないにしても、隣にいるしゅんの耳にも間違いなく確実に届いてしまっているだろう。
もし、ここで応対を一つでも失敗したら、しゅんはまたあの怪物の顔に戻って、今度こそ僕を……。
「大丈夫、だから……本当に、なんでもないから……」
『お前……まさか、今……あいつの……っ』
受話器の向こうで、はやちゃんの声が急に息を呑むようにして小さくなった。
昔から僕のことを誰よりも近くで見守ってきてくれた、勘の鋭いはやちゃんだ。
僕のこの防衛本能でガタガタと震えている生気のない声のトーンから、何か決定的な異変を完全に感じ取ったのだろう。
お願いだから、察して今すぐ電話を切ってくれ。
これ以上はやちゃんの声が部屋に響くのを、僕は恐怖で耐えられそうになかった。
「は、はやちゃん、本当に大丈夫だから……っ! じゃあね!」
『……はぁ、お前なぁ……。なんかあったらすぐに電話しろ。俺、今からすぐそこに行くから』
「大丈夫だっていってるじゃん……っ」
『大丈夫なやつが、そんな怯えて震えた声……出すわけねぇだろっ』
はやちゃんが周囲を気にするように声を低く潜めたせいで、急に電話越しの声が聞き取りづらくなった。
その不穏な気配に呼応するように、僕の頭を固定しているしゅんの顔色は、みるみるうちに、嫉妬の炎で暗く曇り狂っていく。
「……ごめん。本当に大丈夫だから。もう、切るね」
『お、おいっ!! 待てって、柔太朗!! ちょっ――』
プー、プー、プー……。
僕は恐怖が限界に達して、しゅんの手の下から無理やりスマホを力任せに奪い取ると、はやちゃんの声を遮るようにして、大慌てで画面をタップして通話を終わらせた。
to be continued…
コメント
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コメント、失礼します!作者様の本作品、愛読させていただいています。毎回、心を奪われ心情が手に取れるような書き方をされていて、本当に尊敬します。私は🩷🤍様推しだったのですが、この作品で❤️🤍様も好きになりました。(元から🤍様右でしたら好きでしたがより興味を惹かれました)ハラハラドキドキ、内容も書き方も大好きです。展開が綺麗に描かれていて…、もう感動です。 次回が気になる展開で…!楽しみにしていますね!