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「舘さんっ♡ちょっといい?」
「何?どしたの、ラウール」
収録後、他のメンバーはほとんど帰ってしまった楽屋に、ニコニコしながら俺のところにやってくる末っ子。
「耳貸して」
「耳?」
なんだ?内緒話でもあるのか?
俺以外誰もいないけど…
左側にいるラウールに耳を傾ける。
「じっとしててねー」
「?…んッ」
耳朶を何やらくにくに摘まれて、思わず体が身じろいた。
「ごめん、痛かった?」
「いや…痛くはない、けど」
…痛くは、ない。けど、ムズムズしてくすぐったい。
「あぁ~…」
ニヤニヤしながら何かを悟ったように頷いているラウールは、相変わらず耳朶を離さない。
「ん、何?」
「舘さんて…ココ、感じやすい?」
突如、耳にふっと熱い息がかかる。
そうだよ、俺、耳の周辺弱いんだよ…
「んっ!…ちょ、ラウール!」
「ふふっ舘さん、かぁいい♡」
…10歳も下のメンバーに可愛いとか言われたくないな。ラウールの方が可愛らしいのに。
「からかうなって」
「…めめだったら、いいのに?」
「はあ?」
まだ幼さの残る顔が、間近でじっとみつめる。
人形のような顔立ちに、少しドキリとした。
「ラウール?」
「もうちょっと、待って?」
耳元で囁く唇が、吐息と共に耳を掠める。
「んっ」
耳朶には、熱い吐息と僅かな違和感。
それが何か、その時にはわからなかった。
耳をなぞる細い指と、僅かに身じろぐだけで触れそうな唇が、俺の弱い所を絶妙に刺激する。
「…ぅ ラウール…何」
瞬間、かぷっと軟骨を甘噛みされた。
「ン…っ!」
思わずビクリと肩が震え、堪らず自分の左耳を押さえて飛び退いた。
「ラウール!いい加減に…」
「ふふっごめんごめん!もういいよー」
ようやく離れてくれた…。
そして、僅かに感じた違和感の存在に気付く。
「え、これ?…ピアス?」
最近着けていなかったから、なんだか変な感じがする。
「そう。おそろい♡」
自分の左耳をちょんちょんと指差しながら、にっこり笑顔を向けてくる。
「は?何で…?」
「俺も舘さんもいっこしかホール開いてないでしょ?」
「うん…?だから?」
「かたっぽあげる♡」
だから、何で?
理由はわからないけど、なんだか満足そうにしている末っ子を見ると断ることができない。
「あー…ありがとう?」
「どういたしまして!」
(…何だったの?)首を傾げる俺にバイバイと手を振って楽屋を出ようとして、ふと振り向き、
「オレのかたっぽ、大切に持ってて?」
そう言い残して、無邪気な笑顔を見せながら楽屋を後にした。
目の前の鏡を見ながら、暫くボーゼンと自分の左耳を見つめる。
さっきの、何だったんだろ?
ひょっとしたら、何か相談したいことがあったのかも…?
いや、相談ごとなら俺じゃなくて目黒か。
じゃあ、何だった?
「オレの、かたっぽ…?」
思考がぐるぐる頭を巡っていると、ガチャリと楽屋の扉が開いた。
「舘さん!ごめんっ、遅くなった!」
他の打ち合わせで、最後になった目黒が勢いよく入ってきた。
「おつかれ」
「おつかれさまです」
言うなり、目黒は俺に抱きついてきた。
誰もいないからいいけど…
「待っててくれたんですねっ」
「目黒が待っててって言ったんでしょ?」
「そうなんすけど…」
抱きしめていた目黒の腕からふっと力が抜ける。
「あれ?舘さん、ピアス、してました?」
流石、目ざとい
「あー、ちょっと、ね。たまにはしてみようかなって」
咄嗟に誤魔化してしまって、自分でも驚く。
ラウールから貰ったなんて、言わない方がいいよな…
「…ふーん?」
まじまじと、左耳のそれを見つめられる視線が痛い。
「綺麗なピアスですね。舘さんに、似合ってる」
…チクリと胸が傷んだのは、何でだろう?
「…ありがとう」
これ、いつも着けてなくてもいいよね…?
普段ピアスしてないの、ラウールも知ってるはずだし、そもそも着けててじゃなくて持っててと言っていた。
(オレのかたっぽ)
その言い方が引っかかって、嫌でも意識してしまう。
「舘さん?帰りましょ?」
荷物を持った目黒に顔を覗き込まれて、一先ず思考を中断する。
「ん、帰ろうか」
「舘さん、何食べたい?」
お互いに明日は仕事が入ってる。
今日の収録後、食事だけでも一緒にと、目黒に誘われていた。
「そうだねぇ…パスタの気分かな」
「じゃあイタリアンだ」
「目黒はそれでいいの?」
「俺は舘さんと一緒なら何でもいいんです」
「何それ笑」
魚介のペスカトーレに白ワイン…
あ、最高だ
なんて考えながら、行きつけにしている店に向かう。
隣を歩く目黒が、じっとこちらを見ているのに気付いて「何?」と顔を合わせた。
「…それ、気になるんすか?」
「?何が?」
「ピアス」
自分の左耳をちょんちょんとしながら、目黒に言われてはっとする。
「舘さん、ずっと触ってるから…」
無意識に触れていた
ラウールのピアス。
「あー、うん。最近着けてなかったから?違和感あって…。無意識だった」
「じゃ何で着けたの笑」
「わかんない笑」
…いつまでも誤魔化せる自信がないなぁ
正直に、ラウールからもらったって言えば良かったか…今更だけど。
「ひょっとして、誰かからもらった?」
…鋭い。
「まあ、実は…」
「…ふーん」
「ごめん。隠すつもりはなかったんだけど…」
「俺に気を遣ったんでしょ?舘さんらしいっすね」
「ごめん」
「でも、それ渡したやつ、なかなかだね」
「え?」
「だってそれ、片一方でしょ?てことは、お揃いで相手も着けてるじゃん」
その通り…。
「しかも、無意識に意識させられる。策士だわー」
「誰かとか、聞かないの?」
「どうせメンバーでしょ?」
どうしてわかるの…
「俺への宣戦布告ってことでしょ?…上等。見つけ出してやるよ」
めめさんのお目々が怖いよ?
「ノリでくれただけだから!」
…だよね?
「ケンカ腰やめて」
「…舘さんには迷惑かけないから。心配しないで」
いやいやいや、だって、目黒を一番慕ってるコなんだよ、これくれたの。
心配しないでってほうが無理なんだよ
「本当に、深い意味はないからね!」
「はいはい」
早く行きましょと、手を引かれる。
本当に納得したのだろうか?
「俺も何かプレゼントさせてくださいよ」
「なんでよ笑」
「何がいいかなー」
「いや、だから、いいって」
「婚約指輪とか?」
「バカなの?」
「今度一緒に選びに行きましょうね♡」
「人の話聞けばーか」
…左耳がムズムズする
微かなピアスの違和感と、ラウールのあの言葉。
確かに、無意識に意識が引っ張られて、いつの間にかあの無邪気な笑顔とともに頭の中を支配する。
何度もリピートされる
オ レ の か た っ ぽ
ラウールを絡めるの苦手だなと思いながらラウだてってちょっといいじゃんとか思ってしまう今日この頃。
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