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中学1年生の旭飛は、どこにでもいる平凡な少女である。
学校に行き、部活に打ち込み、テスト勉強をする。
容姿もずば抜けていいわけではなく、運動はそこそこ。
友達も普通にいて、馬鹿やって騒いで。
特にトラブルも起こさなくて。
『平凡』を体現したような少女だ。
本人もそれを自覚している。
だから、これから先、一生平凡な人生を歩んでいくのだろうと思っていた。
急性胃腸炎で倒れ病院に搬送され、それと同時に「月儚病」と診断されるまでは。
「検査の結果ですが、旭飛さんは急性胃腸炎と————月儚病と診断されました」
「・・・え?」
月儚病のことは知っていた。
発症してから約1ヶ月で死ぬ病。
それぐらいしか知らなかった。
余命1ヶ月だなんて、可哀想と思っていた。
まさかその病が、自分の身に降りかかるなんて。
それからのことはよく覚えていない。
入院の手続きも、家から必要なものを持ってきてくれるのも、全部母がやってくれた。
時折、何かを言いかけて口を噤む母を見て、旭飛はなんとも言えない感情で胸がいっぱいになった。
とても、ショックだった。
もうすぐ、部活の大会があるのに。
行きたいところや、やりたいことも沢山あったのに。
余命1ヶ月という現実を突きつけられ、絶望に陥った旭飛は、病室のベッドの上で、ただただ窓の外を見ることしかできなくなった。