長くなってしまったので、前後編に分けております。お時間のある時に読んでいただければ幸いです。
途中アメ日要素ありますが、二人は仲が良すぎる親友の設定です。恋愛感情はありません
ああ、無性にむしゃくしゃする
手元にあった、酒瓶に入った水を一気に煽る
一応勤務中であるため、ウォッカはお預け中だ
アルコール不足が加わって、俺は今非常にイラついている
原因は、確実にあいつだ
脳裏に浮かぶ、赤白ボーダーと50の星
別部署なのに毎日のようにこちらの部署に来ては”お気に入り”に絡み、満足するまで騒いで帰っていくせいで、簡単に思い出せるようになってしまった
彼奴は所謂ライバルで、何かと俺を敵視している
そのせいか、事ある毎に俺へ突っかかってくるのだ
この間の会議でも直前にデータが吹っ飛んで作りかけの資料で発表する羽目になったことをあいつに馬鹿にされた
ちゃんと保存してあったはずだから俺のせいではないのに
とても癪に障ったことを今でも覚えている
はぁ…思い出すだけでムカついてきた
彼奴の”お気に入り”のいるデスクの方を見る
日本にウザ絡みするアメリカのなんて楽しそうなこと
嫌いな奴の幸せな様子なんて見るんじゃなかった
俺の分まで不幸を背負ってしまえと恨みの目線を送っていたその時、ふと閃いた
そうだ。日本を使っておちょくってやろう
あいつのことは嫌いだが日本のことは別に嫌いじゃない
だからあいつのお気に入りである日本を自分のものにしたらいい嫌がらせになるのでは無いか
久しぶりの悪戯に口角が上がる
これは面白くなりそうだ
その日から、俺は何かにつけて日本に絡みに行った
昼飯に誘ったり、飲みに付き合わせたり、差し入れをしたり…あ、これ餌付けじゃないか?
他にも、過労で倒れそうになってた時に仕事を手伝い休みをくれてやった
まあとにかく、色々理由づけてあいつが普段やっているように絡みに行った
勿論、アメリカに見せつけるようにしてだ
そして、この悪戯を続ける中で日本について、色々知った
意外と面倒臭がりで抜けてる所があること、言わないだけで自分の意見をしっかりもっていること、そして、ご飯を食べる時の表情がとても幸せそうであること
真面目なお人好しとしか思っていなかっただけに、知らない一面を多く知り、親近感が湧いた
日本もだいぶ慣れてきたのか、最初は呆れていたものの、徐々に笑顔を見せるようになり、他の国と同じ程親しい態度をとるようになっていた
懐かれたようにも感じて、悪い気はしない
それに、日本が笑顔を向ける時のアイツがなんともいい反応をするのだ
サングラス越しでも分かる、「なんであいつに」と言いたげな、悔しそうな表情
実にいい気味だ。いつまで耐えられるかな?
ざまあみろと心の中で笑って、明日は何を理由に近づこうかな、と胸を高鳴らせるのだった
悪戯を始めてから1ヶ月ほど経ったある日、早くも効果が出ていたようだ
静まり返る会議室、今日の会議の片付けのため残っていた俺と何故か椅子に座り続けるアメリカが言葉も交わさずに残っている
俺としては邪魔なので早く帰ってほしいのだが、何か用事でもあるのだろうか
ただ正面を見つめるあいつは一目見てわかるくらいには苛苛している
怖がる他の国達はさっさと出払ってしまった
怒っている理由は、きっと俺だろう
そう思い、片付けが終わったのでさっさと帰ろうとした時、あいつがガタッと音を立てて立ち上がった
「おいクソロシア」
怒りのオーラを纏いながら、ズカズカと近づいてくる
「お前に用がある。着いてこい」
お前の命令を聞く義理はないと思いつつ、あいつの後ろを歩く
何となく、面白いものを見れる気がしたからだ
向かった先は、防音加工の会議室
言い争いが頻繁に起こることから特別に作られた、議論が白熱しそうな時に使う部屋
ここに連れてきたということは、つまりそういうことだ
扉の閉まる音と同時に、数歩先にいたアメリカが急に胸ぐらを掴んできた
「いい加減日本から離れろクソコミー」
額に青筋を浮かべ、地を這うような声で宣うさまは威嚇のよう
あいつが日本に対しここまでご執心だとは思ってなかった
こんなに早く嫌がらせが成功するなんて嬉しい誤算だ
「なんだ、嫉妬か?」
「俺はただ、日本と仲良くしたいだけなんだがなぁ…」
「嘘つくな、日本を利用して俺をおちょくってるだけだろう」
こういう時だけ察しがいいんだな。まあ俺も見せつけるようにやってるから分からない方がおかしいのだが
焦っているようにも見える怒りの表情
いつも余裕ぶっているあいつが、必死になって俺を止めようとしている
ああ、なんて愉快なのだろうか!!
今までにない愉悦感で全身がゾクゾクと震えた
「お前が仲良くするのはクソチャイナで充分だ。俺のもんにまで手出すな」
「xaxa!!独占欲強いやつは嫌われるぞ?」
「事実を言って何が悪い」
一触即発、言葉通りの空間はかの戦を想起させる
冬将軍すら敵わないほど冷たく感じる空気は、思わぬ来客により打ち破られた
「あ、やっと見つけた」
珍しくノックもしないで部屋に入る日本。その姿を視認する前に、胸を掴む手が離されていた
「Japan!!」
目を輝かせ飛びかかるように抱きつくアメリカ
逃がさないとばかりに強く抱き締め頬ずりをしている
あれじゃまるで犬だ、どちらが飼い主なんだかわかったもんじゃない
じゃれつくアメリカを受け止め、上手く押さえ込んだ後、彼はこちらに視線を向けた
「ロシアさんもいらしたんですね!ちょうど良かった。カナダさんと中国さんが貴方達のことを探してましたよ」
「my broがか、それなら急がないと」
「了解。態々ありがとうな」
どういたしまして、と微笑む日本を労うように肩に手を置く
その時、日本の背後に回っていたアメリカがポカンとした顔で「お前そんな顔できたんだな…」と呟いた
そんな顔ってなんだ俺はいつも通りだ
それが面白くなかったのか、アメリカは日本を強く抱き締めながら問い詰める
「Japan!!なんでクソコミーと仲良くしてんだ!構うなら俺だけにしろ!」
「えぇ…隣国なんだから一応仲良くしといた方がいいでしょう」
「そうだ。遠くからしか守れないお前より隣国の俺との方が仲良くすべきなんじゃないか?」
「敵国が何言ってんだ同盟組んでから出直してこい」
まさに犬猿の仲、煽りと怒りの応酬は留まるところを知らず、どんどんエスカレートしていく
日本がなんとかアメリカを宥め事態が収まった時には、皆既に頭から用事がすっぽり抜け落ちてしまったようで、いつまで経っても来ない俺たちを探しに来たカナダと中国に3人まとめて叱られたのであった
数十分後、やっと説教から解放されて、自分のデスクに戻る
中国の奴いつも説教が長いんだよな、もっと簡潔に話してくれればいいのに
ふと、先に説教から解放された日本の方を見ると、部下から資料の束を引き受けるところを目撃する
あ、また部下の仕事無理に引き受けてる。自分の仕事も終わってないくせに
この間同じ状況で倒れる寸前までいったことを忘れたのか?俺が気づいて手伝わなかったら…
他人に優しすぎるのも問題だ。そういう所も好きなんだが
…………ん?“好き”?
無意識に生まれた予期しない言葉に、顔が熱くなる
いやいや、何考えてるんだ俺!おかしいだろ!あいつは敵国だぞ!?
頭をブンブン振って変な思考を振り払う
だが今、確かに思ってしまった
“日本のことが好きだ”と
ようやく冷静になった頭で、今までを振り返る
思えば最近、気がついたら日本を見つめていて、日本のことを考えてしまっている。彼の心安らぐ笑顔を見たいと思っている。当初の目的も忘れて会いに行ってしまうほど、日本との時間が楽しみな自分がいたことも否定できない
…こうなったらもう認めるしかない
俺は日本のことが好きだ
一度認めてしまえば、やることは一つ
しかし、ここで大きな壁が行く手を阻む
“敵国である自分を意識してもらうことの難しさ”だ
日本がいつもアメリカと一緒にいる最近は俺も一緒にいることが多いとはいえ、そういう意味で意識してもらうのは難しいだろう
それに……恐らく、日本はアメリカのことが好きだ
あいつといる時の日本は楽しそうだし、なりより彼らの間には強い信頼がある
ぽっと出の俺では間に入ることすら難しいことは十分承知だ
けれど…分かっていても、恋心を認めてしまった以上、自分のものにしたいという欲は異常な程に膨れ上がって抑えることが出来ない
こうなったら、全力でアピールして俺の想いを分からせるんだ
絶対に俺のものにしてやる、そう決意した
続く
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