玲央は近くの森に潜んだ。
「追っ手は……来てない、か…。」
「はあ゛ぁぁぁぁ。」
玲央は木にもたれ掛かり、大きなため息を着く
「いけると思ったんだけどねぇ…。 」
でも、一瞬は繋げた。これで千空達は場所が分かるはず。
スタンリーの銃口が、遠くで光を反射した。
(やっぱり、千空を狙ってるねぇ。)
玲央は息を飲む。千空がまだ敵の存在に気づいていないなら、狙撃は確実に成功する。
「……クソッ。」
玲央は舌打ちし、すぐに決断した。
(千空に気づかせるよりも、スタンリーの意識をこっちに向ける方が早い。)
銃を持つスタンリーは、一度標的をロストすれば新たなターゲットを慎重に狙うはず。その隙に千空たちが身を隠せれば、狙撃の成功率は一気に下がる。
玲央は一歩踏み出した。
(やるしかねぇ……!)
瞬間、玲央は全速力で走り出した。
ドンッ!
派手に物を蹴り飛ばしながら、わざと騒ぎを起こす。
「おーい! ここだよぉ!!」
叫びながら、千空たちとは逆方向へ駆け出す。
(これで、アイツの視線がこっちに向くはず……!)
数秒後——
パァン!!
乾いた銃声が夜に響いた。
(……きたねぇ!)
玲央は反射的に地面に飛び込む。すぐ後ろの地面に、小さな穴が開いた。
(やっべぇ……本気で殺る気じゃんか。)
だが、作戦は成功した。
スタンリーの視線は、完全に玲央に向いた。
(さぁ、追ってこいよ、最強の狙撃手さん。)
玲央は息を整え、再び走り出した——。
***
一方、その頃——
千空は玲央の叫び声と銃声を聞き、即座に身を伏せた。
「なんだ……?! 今のは……!」
ゲンが驚いて玲央の逃げた方向を見る。
「誰かが派手に騒いでるけど……千空ちゃん、まさか——!」
千空の目が鋭く光る。
「……囮だ。」
クロムが息をのんだ。
「玲央……!?」
「アイツ……こっちじゃなく、逆方向に走った。敵に追わせるつもりか……!」
千空はすぐに状況を整理し、確信する。
(アイツ、完全に俺らを助けるために動いてる。)
千空はすぐさま立ち上がり、仲間たちに指示を出した。
「いいか、今のうちに移動するぞ。玲央が命懸けで作ったチャンスだ。無駄にはできねぇ。」
ゲンが苦笑しながら頷く。
「いやぁ……玲央ちゃん、すっごいことしてくれるねぇ。」
クロムも拳を握る。
「だったら、俺らもやるしかねぇよな!」
こうして、玲央が囮になっている間に、千空たちは身を隠しながら次の行動に移るのだった——。
***
一方、玲央は深い森の中を走っていた。
スタンリーの狙撃は正確無比だったが、夜の森では視界が限られる。
(このまま逃げ切れれば……)
そう思った瞬間——
パァン!!
銃弾が玲央のすぐ横の木に当たり、木屑が飛び散る。
(……マジで容赦ねぇなぁ!)
玲央は息を切らしながら、それでも笑った。
(でも、千空たちはこれで逃げられる。)
「さて、こっからどうやって逃げ切るか、だねぇ……!」
玲央の命懸けの逃走劇は、まだ続く——。
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