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白山小梅
12
弁明とも言えない拙い自白だったけれど。あの時の思い出を紡ぐと、柊のまぶたが丁寧に上下する。
「まって、」
何故か珍しく、柊の表情に焦りが垣間見えた。
柊からの返事といえば、てっきり、そうなんだ、と納得してもらえると思っていたから、頭の上にクエスチョンマークが乗る。
「誰と笑ってたって?」
「え……?友達と笑ってた」
「いつ」
「あたしが手紙渡した日。放課後、屋上に繋がる階段で?」
柊は納得したように「あー…あれか…」と頷くと、諦めたような笑みを浮かべた。
「…とりあえず一つずつ潰していく。柴崎、俺の名字知ってる?」
「ばかにしないでよ!柊に決まってる!」
「柴崎の手紙な?隣の、楠、の靴箱に入ってたんだよ」
今度は、あたしに向かってまめでっぽうがポスンと発砲されるから、雷に打たれたような衝撃で「へ!?」
とあんぐりと口を開ける。
なんてことだ。まさか、まさかの、あれは全部あたしの手違いだったってこと!?
「先に楠が見つけたからもちろん先に読まれて。……俺が上手くカバー出来ればよかったんだけど、上手に立ち回れなくて」
「え、ええ!?」
さらなる衝撃に、ぼん!と頭の中心で爆発が起こった。
てことは、柊は最初から何も悪くなくて……全部、あたしのせいで勘違いが始まったの?
衝撃の事実にみるみるうちに頬に熱が溜まっていって、顔だけ異常に熱い。
「ご、ごめん……え、どうしよ、そうだったの……?」
「てか、俺も悪いけどさ?柴崎だって、あんな大事なもの靴箱なんかに入れんなよ。せめて手渡せよばーか」
ピン!とおでこをデコピンで弾かれてしまい短い痛みが走る。慌てて額を守り、反撃開始だ。
「て、手渡せるわけないじゃん!」
「なんでだよ!」
「だって!柊のことだし、その場で読み上げそうじゃん!そんなの、恥ずかしくて無理」
「恥ずかしいとか今更かよ。……で?その日何言おうとしてたわけ」
気まずそうだった柊は、どこへ行ったのか。柊はいつもみたいに煽るような笑みを浮かべる。
全身真っ黒な服で、いつもより大人っぽい柊は、同い年とは思えないほど色気を纏っているのだから、どうしたって抗いたくもなる。
「…〜〜、言わない!」
ぷい!とそっぽを向いて歩こうとすると、それより先に、華奢な長身があたしの進行方向を遮るように立ちはだかるのだから、当然あたしの足は止まるしかない。
「あれあれ?好きな男に手紙書くの、初めてだったってたった今聞いた気がするけど、あれは寝言なのかな?」
「っ!!」
こばかにされてるっていうのに、扇情的なまなざしに見下ろされ口を噤むしかない。アイスブルーの瞳には、そういう威力がある。
柊はいつだって、立ち入り禁止のラインを容易に越えてくる。
臨戦態勢を敷くあたしのこころに入り込んで、思考を、感情を、全部柊のものにしてしまう。
「寝言じゃなければ、告ろうとしてたっていうのも、本気?」
ああ、駄目だ。こんな勝ち目のない戦、最初から完敗である。
「……してた……してました!告白を予定してましたっ!」
なんとも可愛くないボリュームで声を張り上げると、余程おかしかったのか、柊はくたっとした笑顔を浮かべる。
「っそ、そんなに馬鹿にすることないじゃん!」
「いや、言っていい?」
笑い混じりの柊だけど、あたしはツンとするしか出来ない。
だって、まじかよって笑うでしょ?
だって、嘘だろって信じないでしょ?
「なにを、」とあたしが口を結べば「超うれしい」
何ひとつあたしの思いどおりにならない柊は、あまったるい声を聞かせるから、心臓に悪い。
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