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第1章 第1話「新たな船出」
2018年春。
柳城高校のグラウンドは、かつて甲子園でベスト8まで勝ち上がった名門の姿はそこになかった。ベンチ脇にはペットボトルや空き缶が散乱し、内野は荒れ、外野には雑草が伸び放題。選手たちも声が小さく、どこか覇気がない。
「……まずはここからだな。」
グラウンドを見渡しながら、城島史也は小さくつぶやいた。17年前、柳城のエースとして甲子園のマウンドに立った自分が、再びこの場所に戻ってきた。今度は監督として。
かつての輝きは失われていたが、だからこそ火が灯る。
「この荒れたグラウンドを整え、もう一度、柳城を甲子園へ。」
その日、真新しい制服に身を包んだ新入生が入学式を終え、グラウンドを覗き込んでいた。小早川啓介。
中学時代は県大会ベスト8の捕手。身体は小柄だが、鋭い眼差しを持つ。
監督と選手。
この二人の出会いが、柳城高校再建の始まりだった。
「おい、新入生か?」
城島が声をかけると、小早川はまっすぐに目を合わせて答えた。
「はい。小早川啓介です。キャッチャーです。」
その返答に、城島は思わず笑みを浮かべた。
──いい目をしている。必ずチームの要になる。
荒れたグラウンドに立ったその瞬間から、柳城の新しい物語が幕を開けた。