あたしはいつもの路地裏…
では無い場所に来た。
先日、カフェで客たちが喋っていた内容。
きっとそれは、あいつが。
姉さんが連れてきた子。
分かるのは髪の毛の色。
この地域では髪の毛の色がついているのは、2人だけ。
今、は。
その子は全く話さなかった。
話そうとする度に避けられた。
それも今はいい思い出だけど。
やっと慣れてきて、よく遊ぶようになった頃。
その子が姉さんに連れていかれた。
その日は全く遊べなかった。
きっと明日にはいるだろう。
そう…思っていた。願っていた。
その次の日も、その次の日も。
その子は来なかった。
その次の日、ようやくその子が来た。
゙機械のような、人間のような姿゙になって。
それに、性格も明るく変わっていた。
その子は、全面ガラスの、敵が湧く場所…
いわゆるトレーニングルームに行って、その子は二本の短刀を使って。
戦っていた。
それ以降、あたし達は喋ることも、何もしなくなった。
無視されたわけじゃない。
あたしは、話しかけられなかっただけだ。
たしか…その子の名前は…
「どうも〜、こんばんは〜!独りですか?」
陽気な声の挨拶交じりの言葉は、上から聞こえた。
上を見たら、こちらを向いていた。
どうやらあたしに言っているらしい。
「あ、僕はリタって言います〜!以後お見知り置きを〜!」
相変わらずの陽気な声で彼女、リタは自己紹介をした。
あたしはその言葉には一切触れず、質問をした。
「…あなた、あたしに会ったことあるかしら?」
少女は上を向いた。
そして、こう言った。
「多分、覚えてます。」
「そう言ったら、どうしますか?」
「…さぁね。」
あたしは少し考えてから言った。
「えーっ。自分のことなのにわかんないんですか?」
その言葉が煽りなのか、純粋な質問なのかは分からなかった。
よく遊んでいても分からないことなんてある。
きっと。
「自分のことでも、分からないことなんていくつもあるのよ。」
「そうですかねー。」
彼女は気の抜けた声でそう言って二本の短刀を持ってこちらに向けた。
開戦の合図だろうか。
そんなことを思っていたら、彼女がこっちに来て素早く二本の短刀を振った。
それをかわし、武器のあたしと同じくらいの大きさのハンマーを持った。
今は重くはない。
ただ、戦う気は無い。
驚かすだけだ。
リタの攻撃を避けながら二つ、考え事をしていた。
一つ目はどうやって仲間に引き入れるか。
戦って勝ってしまえばまた一人になる。
リタがずっと居てくれるなんて保証も、あたしが勝てるかという保証もない。
二つ目は相手は色を使ってくるか。あたしは色を使うべきか。
あたしの色は「紅」、「黒」。
あたしは極力色を使いたくはない。
「黒」はまだいい。
問題は「紅」だ。
「紅」は狂気的になる。
どんな人であろうと。
どんなに理性が否定をしていようと。
狂気に塗れる。違くなる。
そんなあたしを、リタは警戒するだろう。
それは嫌だ。
もう。
二度と。
大切な人に拒否されたくない。
離れて欲しくない。
なんて。
あたしらしくない我儘だ。
こんなことを考えるのはやめよう。
今は、このことを考えるんだ。
リタを傷つけずに仲間に引き入れる方法はないか。
自分が仲間にしようとしている理由は分からない。
本当に分からないことしかないな。
そう思うと、何故か気持ちがグラグラした。
(それはそうと…)
いつの間にかリタの攻撃は遅くなっている気がする。
いや。
確実に遅くなっている。
疲労か。
それとも、体力温存の為か。
攻撃をしてこないあたしに全力で攻撃しても疲れるだけだ。
あたしが当たらない前提の話だが。
今。
「黒」を使うべきか。
でも、まだ使わないでも…
「お姉ちゃん、またそんなこと言って!
そうやって今できることをしないから、後々大変なことになるんでしょ!」
……
これは、神様がくれたチャンスだ。
「そうよね、イア」
聞こえぬように密かに言った。
このチャンスを逃さぬように。
二度とあの子に迷惑をかけないように。
(なんて、いい夢だ)
「黒」を使った。
これでいい。
万が一ダメでもあの子は笑って許してくれる。
「……っ」
それのおかげか、彼女はもう二度と攻撃をする気はない
…ように見えた。
「…゙諦めでどうしたんですか」
その声は、泣きそうに聞こえた。
(…何故?)
「僕だって、嫌だった。」
「離れたくなかった。…ずっと、話してたかった。」
「もう…大丈夫だって思ってたのに。」
「話しかけてくれなくなったのは…」
「…誰の…せい…なんですか」
彼女は俯いていた。
…周りから見たら騙してるみたいだけど…
「それもこれも…全部あたしの姉さんのせいよ。」
そう言って、あたしは彼女に─────リタに昔のリタのことを教えた。
リタは戻ってきた頃には記憶は殆ど消されていたらしい。
それでも、あたしと喋って、笑って…そうやって遊んでいたことだけはギリギリ覚えていた。
「…あれで、二回目だった。」
彼女はそういって、目と鼻を赤くして言った。
「僕には…」
「姉が…いた。」
その言葉に、あたしは妹の…
゙イア゙を思い出した。
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