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10 - 〈一次創作〉あの人(前作の一次創作と関係あるのでそちらもぜひ)

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2023年01月28日

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冬の凍てつく寒さが体に沁みる。


少しでも暖まりたいと思い、私は暖炉に薪をくべ、火をつけた。


時刻はもう0時を過ぎる頃。


外は闇に覆われ、街灯も消えかかっている時間帯だった。


「力が…欲しいか…?」


ねっとりとした声で、隣のコウモリが囁いた。


「…そういうのいいから。」


私はきっぱりとそう答える。


しばらく経たないうちに、コウモリ…いや、キラは姿を現した。


「何だよケチくせぇ…。あ、さ~て~は~?」


「黙れ。」


「…はーい…。」


キラは私の言葉で分かりやすく勢いをなくし、隣にそっと座った。


…まあ、キラが言いかけていた「なにかがあった」のは事実だ。


現に、私がそうであるように、キラがそうであるように、*あの人*がそうであるように。


ここの世界、カイルムに来ていたのだ。


…ただ、厄介な点が一つある。


カイルムは、特定の者しか記憶を引き継いでいられない


ここに来る時の衝撃は遥かに強いのだ。


そして、自分の現世での記憶を忘れ、各々割り振られた立場で生きていく。


私が巫女であるように。


*あの人*が、―――であるように。




不意に、後ろのドアが鳴る。


小さいノック音、三回。


「神樂、あんたでしょ?」


私がそういうと、彼女は不服そうに「ぴんぽーん。」と言いながら入ってきた。…いや、不服そうなのはいつもの事か。


神樂はキラにお構いもしないで、キラの上に座った。


キラはそこから動くことができず、ただ固まっている。


「…ねえ、轟雷。」


神樂は私の名を呼んで、こちらを冷徹な目で見た。


「なに?神樂。」


私は笑って受け応える。


…しかし、次に神樂の口から出てきたのは、蔑みでもなく、罵りでもなく、純粋な疑問だった。


「…あなた、前世の記憶でも持ってるの?」


私の時が一気に止まる。


薪は少し形を崩し、パチッという音と共に燃え始めた。


「…ま、まさかね。」


苦し紛れに出た言葉はそれだった。



勿論、私は前世の記憶を持っている。


死因なんて、はっきりと。


死んだときの様子なんか、明確に憶えている。


…あれは、全部、全部。


*あの人*のせいだ。


*あの人*のせいで此処まで苦しんだ。


*あの人*に私の初恋相手を盗られたから。


*あの人*が…


*あの人*が…!


委員長を…盗ったから…。


でも…肝心の…*あの人*が思い出せない…。



考えを巡らせているうちに見えたのは、二色の布であしらわれたキャスケットを深く被った、誰かの姿だった。

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