テラーノベル
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5話目もよろしくおねがいします!
今回はセンシティブな表現があります。
ご注意下さい。
スタートヽ(*^ω^*)ノ
パーティーの終わりが近づき、少しずつ人が引き上げはじめる中。
レトルトのスマホが震えた。
うっしーからだった。
「悪い。会場に昔の仕事仲間がいて、少し話したいことあってさ」
「先に帰っててくれる?後で連絡する!」
「……そっか。わかったよ」
レトルトは少しだけ間を置いてから、そう返事を送った。
(……まぁ、仕方ないか)
出口に向かって歩き出しながら、何度も今日の出来事が頭をよぎる。
煌びやかな空間、緊張した場。
キヨの堂々とした姿、スピーチの言葉。
──そして、P-Pの存在。
あの男。
やけにキヨとの距離が近くて、自信満々で、レトルトを品定めするような目をしてた。
(“今度、ふたりで新しいアプリ作るんだ”……)
キヨの何気ない言葉が、妙に心に残っていた。
ふたりで。
夜な夜な、開発作業とかしながら笑い合ってるのかな?
肩並べて、同じ方向を向いてるのかな?
自分はその輪の外。
“知らないキヨ”をたくさん知ってるような顔をしたP-Pが、
キヨの隣に立ってるのが、どうしても頭から離れなかった。
(……なんで、こんな気にしてるんだろ)
駅へ向かうはずだった足は、気づけば違う道を選んでいた。
ふと、視界の端に見えたのは──
あの小さな公園。
初めてキヨとふたりきりで過ごした場所だった。
夜の公園は、静かで、風がやさしく木々を揺らしている。
誰もいないベンチがぽつんと灯りの下に浮かび、まるでレトルトを待っていたかのようだった。
ゆっくりと歩み寄って腰を下ろす。
スーツの裾が少し突っ張るのを気にしながら、深く息を吸った。
(ここで初めてキヨくんと手を繋いだっけ)
(大雨の中、初めてキスしたのもここだったなぁ)
頬がほころぶ。
自然と笑ってしまうくらい、あの時間はあたたかくて、愛おしかった。
でも──
(あのP-Pって男……キヨくんにとって、どんな存在なんだろ)
浮かんだ疑問をすぐに頭から振り払った。
胸に残るざわつきは、まだ消えそうになかったけれど、それ以上に確かなものもある。
キヨが見つめる先には、いつもレトルトがいた。
「今夜は抱く」なんて、あんな大胆なことを言ったのも、
本気じゃなきゃ、言えない。
(──俺が、キヨくんの彼氏なんだ)
夜風がそっと頬を撫でる。
目を閉じて、心のなかで強く唱える。
(俺が、一番キヨくんのこと……愛してる)
嫉妬も、不安も、全部含めて。
この気持ちだけは、誰にも負けない。
レトルトは小さく息を吐き、そっと立ち上がった。
背筋を伸ばして、公園をあとにする。
もう、モヤモヤに飲まれたりしない。
キヨくんに会って、ちゃんと──伝えるんだ。
エントランスの明かりの下に、黒い影がじっと立っていた。
キヨだった。
スーツのジャケットは脱いで腕にかけている。
ネクタイもほどかれて、少し乱れたシャツの襟元。
けれど──
その目だけは、鋭くギラついていた。
『……遅かったね』
静かな声。
だけど、奥に燃える炎は隠しきれていない。
レトルトは、言い訳が喉まで出かかったのに──言えなかった。
息を呑む。
その視線に貫かれるだけで、全身がこわばる。
(……やばい、怒ってる。でも….逃げられない)
無言のまま近づいてきたキヨが、ふいにレトルトの手首を掴んだ。
ぐいっと引かれて、バランスを崩す。
「ちょっ──わ、待っ──」
玄関の扉を開ける間もなく、中へ押し込まれる。
バタン、と扉が閉まった瞬間、壁に押しつけられた。
そして、呼吸が止まるような深いキス。
「……ッん……っ、キヨっ…く、ま──まってっ……」
言葉を吐こうとするたび、唇が塞がれる。
噛みつくように、這うように、舌を絡めて、唇を貪って──
乱暴に。でも狂気を感じるほどの愛。
(苦しい……のに……でも、嫌じゃない……)
背中にまわった手が、スーツの布越しにぐいっと腰を引き寄せる。
体温がぶつかる。
キヨの熱が、やたら高くて、どんどんレトルトの心拍を狂わせる。
唇が離れたのは、ほんの数秒。
レトルトの目は潤んで、吐息だけが漏れていた。
「……俺のこと、すき?」
低く囁くキヨの声に、ゾクリと震える。
(やばい、今日は……キヨくん、完全にスイッチ入ってる……)
キスの合間にも、キヨの手は絶え間なくレトルトの体に触れていた。
スーツのジャケットが脱がされ、ネクタイがほどかれ、シャツのボタンはあっという間に全て外されていた。
そのまま腕を引かれ、ふらつきながら寝室へと引きずられていく。
「っ、まってよ、キヨく….」
言い終わる前に遮られる。
『待たないよ』
キヨの低い声が耳元を撫でる。
『今夜はレトさんに刻み込むよ。
俺のものだって──何度も、何度も…ね』
ベッドに押し倒される。
レトルトは抵抗する余裕なんてなくて、ただただキヨの体温に飲み込まれていく。
シャツがはだけ、ベルトが外される音がひどく大きく響く。
その音に、レトルトの肩がビクリと跳ねた。
「っ……こわ、いよ……」
涙を流すレトルトにキヨの動きが一瞬止まった。
ゾクゾクと例えようのない感覚が身体中を駆け巡る。
『レトさんの全部を愛してるよ……どんな顔も、どんな声も──ぜんぶ』
囁きながら、キヨの舌が耳の後ろをなぞる。
ひときわ敏感なその場所にゾクリと震え、レトルトの目に涙がにじむ。
「っ……や、ぁ……キヨくん、やだ……こんなの、やだぁ…っ……。キヨくん…すき…」
キヨの支配は、どこまでも深くて、どこまでも甘かった。
レトルトの拒絶の言葉さえ、すべてを肯定するようにキヨの愛撫が重なる。
泣きながらレトルトはその腕の中で、徐々に身体の力を失っていった。
『俺のこと、好き?』
「……すき、……すきだよ……キヨくん、だいすき…だよ」
『だったら──もう誰のことも見ないで。レトさんは、俺だけ見てればいいんだよ』
強引で、独占欲の塊みたいなキヨ。
だけど、その腕の中は──どうしようもないほど、あたたかかった。
つづく
コメント
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嫉妬は世界を救いますよ!!