第1話 依頼
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〈ハイパーメモリーチップ〉
ドイツの科学者が開発したとされるこのメモリーチップは、1つのコンピュータから全世界のコンピュータへ秘密裏にアクセスすることが出来る。さらにはウイルスの侵入を防ぎ自己防衛システム搭載のため、今全世界が注目しているのだった。
そして1週間後の夜、豪華客船上にてそのメモリーチップのお披露目パーティーがイタリアの海上にて行われるそうだ。主催は科学者からチップを買い取った世界的有名な大富豪の公爵であり、そのチップを使って何かを企んでいるとの噂もたっている。
船の全警備システムはハイパーメモリーチップが管理しチップが搭載された端末は厳重に保管されながらのお披露目だそうだ。 約30分のお披露目が終わった後は船にある金庫へ厳重に保管されるため、チップを見ることが出来るのはその30分のみとなっている。
「つまりぃ?」
「つまりぃ??」
「その30分以内にぃ?」
「チップを??」
「盗るぅ?」
「と、思うじゃーん?」
「ハ?」
「いや違うんかい」
「依頼主によると、この公爵がチップ使ってなんか企んでるらしいんだよね〜」
「つまりぃ?」
「え…公爵タヒす…?」
「ぴんぽーん!公爵を暗殺して金庫の鍵をゲットしてから堂々と侵入してチップを回収しちゃいまーす!!」
机の上に広々と広げられた会場の見取り図に金庫の場所、公爵が泊まる部屋、が分かりやすく示されていた。天羽がもう一枚の紙を広げるとそこには当日配置される警備員が描いてあった。
「俺が遅くまで起きて頑張ったんだから感謝しろよな」
「わー文翔すごーい」
「すごーい」
配置図に夢中の2人は文翔に対して適当な反応を示し、全く興味がなさそうだった。
今回の作戦を考えた天羽は一から資料を読み返して作戦に抜けがないか確認していた。艿兎もそれに参加して一緒に確認し、気になったことなどは逐一天羽へ確認しているようだった。
「公爵の暗殺って誰がするの?」
「文翔にしてもらうよ!」
「俺、!?」
コーヒーを飲んでいた文翔が思わずコーヒーをこぼしそうになりながら言った。天羽は考えがあるのか、文翔に資料を見せていた。
「まず、にうねぇの護衛としてうちが側に居るじゃん?そしたらにうねぇが公爵に近づいて足止めをする!その間にウェイトレス役の文翔が当日会場で配る飲み物に毒薬を入れてそれを足止めされてる公爵に渡す!すぐ飲まないかもしれないからにうねぇがそこは催促してね?」
「りょーい…ってか天ちゃん静かに出来るの?」
「それは俺も思った」
「はぁ?失礼ね、ちょっとくらい静かにだって出来ますぅー!」
「まじか」
「すげぇ…」
「もー!2人ともうちをなんだと思ってるわけ?」
「無差別殺戮兵器」
「サル」
「失礼すぎるだろ!!!w」
あたかも当然かのように真顔で答えた2人に対し笑いながら珍しくツッコミを入れた天羽はわざとらしく咳払いをした後、入念に考えた計画書のコピーを2人に渡す。
「IDとか服はまた文翔に取り繕ってもらうとして…あ、この紙内容覚えたら燃やすんだよ?」
「そんなどっかの誰かさんみたいにゴミで出したりとかしませんてぇ〜」
「うぐ…」
そう言っている艿兎もだが、天羽以外の2人は既に一度ゴミ箱へ見つかるとヤバいことに成りかねない書類を捨てているのだった。
担当柄、徹夜しやすい2人だが艿兎はまだしも文翔は一定以上の睡眠を取らないととんでもないことをしでかすので徹夜明けは誰かが見張っていないといけないのだ。
艿兎の場合はただ脳と言動が一つにならず本人でさえも何をしているのか分からなくなるだけなのでまだましなのだ。
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「おー!やっぱ実物はテンション上がるねぇ!」
「だねぇ…」
「艿兎が迷子になる予感」
「こ、今回は天羽がそばにいるしぃ〜?」
「これで迷子になられたらうちどうしようも出来ないw」
この時、3人はまだ気づいていなかったのかもしれない。
「めんど…」
「そーだね、まあ行けるでしょ」
「やだめんどい帰りたい」
『頑張ってもらえると助かります』
「ほら、オペもそう言ってるし」
「…はぁ」
空から見下す別の刺客に。
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次回「任務」
コメント
1件
はい、早く書いてください 私の娘天羽を見たい!!! 早く!!!ブゥゥゥ