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「……オイ、起きろよっ!」
頬が平手でパンッと叩かれて、私は薄っすらと目を開けた。
「いつまで、寝てやがる……」
忌々しげに口にする、私の前に立つ男──
それは、シュウだった──。
「シュウ…あなた…」
「いつまでも、気ぃ失ってんじゃねぇよ…」
シュウが、わざとらしく顔を近づけてきて、口の端を吊り上げて笑う。
「なんで…こんなことを……」
私は、どこかの廃屋らしい場所で、イスに座らされ、後ろ手に手首を縛られていた。
「なんで…だって? そんなこと、テメェが一番よくわかってんじゃないのかよっ…!」
耳をつんざく怒鳴り声とともに、座らされている椅子の脚が蹴り飛ばされ、縛られている椅子ごと、後ろにひっくり返った。
打った背中に強烈な痛みが走って、「うぅ…」と、呻き声を上げると、
「……二度と関わるなと、忠告をしたはずだ……」
シュウが低く言い、冷ややかに私を見下ろした。
……この男に、もうカイの移籍の話がバレてしまったんだと悟る。
水面下で……話は慎重に進んでいるはずだったのに、この男の情報網にいつの間にか引っかかり、知られてしまった。
「二度と……って、一体なんのことなのか、よくわからないけど……」
たとえバレたとわかっても、ギリギリまでカイのことを守りたくて、私は精一杯の虚勢を張り、シュウの顔をキッと見据えた──。