コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「気持ち、楽になった?」
「ん…」
キヨくんは何も言わず、俺の背中をポンポンと叩いてくれた。されたことがないから戸惑って、それでも安心できたのは何でなんだろう。
でもそれと同時にどこか落ち着かない気持ちになる。自分の耳元で囁く低い声が、体の熱がそうさせてるのかもしれない。
ちょっとドキドキして、心臓が少しだけうるさくなった。
なんだろう…
しばらくして体が離れた。そっとキヨくんの顔を見ると、なんとも温かみのある表情をしていた。
「キヨくん…」
「…なんだよ」
「ありがと」
「…おう」
「また来てね、お兄ちゃん」
「誰が兄だよ!!」
そうからかうと、さっきまでの笑顔に戻っていた。
「ほら、兄弟みたいだなって」
「俺のが少し年下だから、レトさんが兄だよ」
「そっか」
「出来の悪い兄だなぁ」
「急に口悪いな!?」
あの雰囲気が嘘のように、キヨくんも俺をからかう。
「そろそろ寝るか」
「そうだね、もうこんな時間…」
時計に目をやると、時刻は夜中の2時を回っていた。いつもならもうとっくに寝付いている時間だ。初めての来客で浮かれていた俺は、日付をまたいでいるのに全く気が付かなかった。
床に布団を敷き、キヨくんの寝るスペースを作ってやる。あいにくベッドはシングルだからね。
「俺もベッドがいい」
「布団じゃ嫌?」
「そうじゃないけど…」
「ごめんキヨくん、俺がベッドじゃないと寝れないの」
「ああ、なら仕方ないか」
そう言って寝転がりながらスマホの画面を見る。どうやらアラームをセットしているみたいだった。せっかくの休みなんだから昼まで寝ればいいのに。
「レトさん」
座面に顔を向けたまま、俺の名前を呼ぶ。
「寂しいなら一緒に寝ようか?」
(え?なんて言った?)
「泣き虫なんだから、ね?」
ちらっと顔を見るとバチッと目が合って、バカにしたような顔で俺を見ていた。
「うっ、うるさいな!」
「どう?」
「絶対嫌や!!もう寝る!!」
夜中なのに大声でキヨくんの誘いを断った。正直なところ、嫌ではなかった。でも…
「はいはい、おやすみ」
さっきのあの妙な雰囲気に飲まれてしまいそうな自分がいて、困惑した。あんなことされてドキドキしたのも初めてだけど、それを許してしまう自分にも疑問を抱く。いったい何がそうさせたのか、考えていると目は冴えて、全く寝付けなかった。
久しぶりの人肌で脳がバグった、そう思うようにした。
…キヨくんはというと、静かに寝息を立てている。俺のことなんてお構いなしにズルいやつ。
To Be Continued…