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あの雨の日から、キヨくんは毎週のように俺の家に泊まりに来るようになった。毎回お菓子を買い込んではゲームをして。自堕落とは言いすぎだけど、ダラダラと2人で過ごす。
梅雨の時期も終わって、そろそろ暑い夏がやって来る。買い出しに行けばアイスばかり買ってきて、俺の家の冷凍庫を圧迫していく。
買い過ぎだって言ってみても、『俺が食べるからいいんだよ』って笑ってごまかされる。俺にとってはこの時間がすごく好きだった。
「レトさん、今日は映画でも見ようぜ」
「ええやん」
「新しいホラー映画配信されたって」
「俺ら耐性あるのに見る意味ある?」
「笑いながら見ればいいよ」
「怖がらせる目的なのに…監督泣くよ…」
いつものようにお菓子を買って、俺の家に行く。何度も来ているせいもあり、俺の家にはキヨくんの私物ばかりが置いてある。部屋着だったり歯ブラシだったり…完全に居候のそれだ。
家族公認だって言うのだからすごい。
「風呂先にいいよ」
「おう」
「俺ご飯温めるから」
「コンビニ飯も食い飽きたなー…」
「次はなにか作ろうか」
「だな」
キヨくんは自炊なんてしないみたいで、家族が作ってくれるからやったことないようだ。俺はほとんど1人だからたまにするけれど、得意じゃない。結果、コンビニばっかりってとこ。
バスルームからはシャワーの音が響く。こんなふうに誰かと生活するのなんて、今までじゃ考えられなかった。誰かといて安心するなんて…俺、やっぱり寂しかったんだな…
「キヨくんが言ってたのってこれ?」
「そうそう、怖いけどラストが感動するらしい」
「ホラー映画にその要素って…」
「怖すぎて抱きつくなよ!」
「いや耐性あるから」
部屋のライトを消して、ソファでご飯を食べながら映画を見る。贅沢な時間だ。まぁ見ているのはホラー映画だからとても優雅とは言えないけれど。
「あ…ここ出てきそう…」
「確かに…」
「うわっ、マジで出てきた」
「アハハハハハハハ!!!!」
「いや笑いすぎやろ」
ほんと、こいつといると雰囲気なんてすぐに台無しになる。まぁ確かに、あんまり怖くはないけどさ。
それでもラストのシーンはちょっと感動した。主人公の周りに起きていた怪奇は、今はなき元カノが主人公を守ろうとしてやったことだって。
『もういいんだよ、俺は大丈夫だから』
ホラー映画なのに泣きそうになった。感受性豊かだっていうのも困っちゃうよね。
さっきまで笑っていたキヨくんの顔をちらっと見てみて驚いた。
(泣いてる…)
あんなに茶化してたのに、こういうところではちゃんと受け止められるんだなって、ちょっといいなって思った。気づくと俺は、キヨくんの頭をそっと撫でていた。
To Be Continued…