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#女主人公
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「……違う、あんなの私じゃない! 先生、あれを止めて!!」
閉廷後の接見室
美月は狂ったように机を叩き、喚き散らしていた。
法廷で実の母親を告発し、ボイスレコーダーを突きつけた彼女の精神は、すでに限界を超えている。
「落ち着いて、美月さん。作戦通りですよ。お母さんは今、検察の厳しい追及を受けている。あなたの『無実』は、もうすぐそこです」
私は努めて穏やかに、聖職者のような慈愛を込めて囁く。
だが、美月の目には、もはや私への不信感が芽生え始めていた。
「嘘よ……。あんた、さっき笑ってた。香織が私の過去をバラした時も、お母様と私が言い争った時も、あんた、心の底から嬉しそうに……!」
「……あら。バレちゃった?」
私は表情を消した。
冷徹な、如月凛の顔。
あるいは、10年前に彼女たちが踏みにじった、渡邉結衣の顔。
「先生……? 何、その顔……怖い、やめて……!」
「ねえ、美月。拘置所の夜は長いでしょう? 天井を見上げていると、自分が殺した子供たちの顔が浮かんできたりしない?」
「殺してない! 私はやってないって言ってるじゃない!!」
「ええ、今回の幼稚園の事件はね。……でも、10年前は? 体育館の裏で、私に『お母さんが死刑になったら、あんたも毒を飲んで死ねば?』って笑いながら言った、あの時の罪は、いつ償うつもり?」
私はゆっくりと立ち上がり、彼女の耳元に唇を寄せる。
「いい? これから、あなたの周辺に『新しい証拠』が次々と出てくるわ」
「10年前の事件で使われたものと全く同じ、青酸カリの瓶。……それが、あなたの実家の庭や、あなたが昔使っていたタイムカプセルの中からね」
「な、なんで……そんなの、あるわけ……」
「私が『用意』したのよ。10年かけて、あなたを確実に処刑台へ送るために」
美月は言葉を失い、金魚のように口をパクパクとさせた。
絶望
これだ、この顔が見たかった。
一方で、法廷の外でも私の仕掛けた「毒」が回り始めていた。
美月の母・恵子の醜い内輪揉めは、SNSを通じて瞬く間に拡散され
白鳥家は「呪われた一家」として日本中の好奇の目に晒されている。
恵子の夫である有力政治家は、即座に離婚を発表。
彼女は一夜にして、権力も財産も失った。
「先生……お願い、もうやめて……。私、何でもするから……」
「何でもする? だったら、次の公判でこう言いなさい。——『10年前の事件も、すべて私がやりました』って」
「……っ!?」
「そうすれば、お母さんは助かるわよ。……まあ、もうあなたを『娘』だなんて思っていないけれどね」
美月を精神的に孤立させ、逃げ場をなくし、最後には自ら地獄の底へ飛び込ませる。
これが私の「弁護」だ。
「さあ、選んで。一人で絞首刑になるか、母親と一緒に泥沼に沈むか」
私は震える彼女を置き去りにし、接見室を後にした。
廊下を歩く私の靴音が、静かな拘置所に冷たく響く。
復讐は、もはや私だけの手を離れ、彼女たちの自責と
恐怖という名の「歯車」によって、勝手に回り続けている。
止めることなど、誰にもできない。
たとえ、この私にだって。