その日の夜、私はあの部屋にあった書物が気になって、側仕えの人達のめを盗んであの部屋に行こうと、襖の隙間から部屋の外を覗き込んだ。外には側仕えの女性がいた。部屋の前にいてはすぐに見つかってしまうので、その日は諦めた。だが、次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、同じ女性が私の部屋の前に立っていた。きっと担当が決まっているのだろう。しかし毎晩立っているのか……、彼女はいつ寝ているのだろう……?何者なんだ彼女は……。そんなことを思いつつ、私は書物を読むのを諦めようとしていた。
ある満月の夜だった。いつものように部屋の外を覗き込むと、なんと側仕えの女性がいなかった。部屋の外に出てみると、何やら奥の部屋が明るい。しかし、人がいる所に近づいたら見つかってしまうかもしれないので、私は書物の部屋に行くことにした。
書物の部屋に着くと、私は以前見つけた、表紙に文字が書いてある書物を探した。ところが、保管されている本の表紙を一通り見ても、その本一向に見あたらない…。しばらく探していると、奥に何かある事に気が付いた。
奥に行くと、そこには何か書き物をする机のようなものがあった。そして、その机の上には、一冊の書物が広げられている。それを閉じると、その表紙はまさに目当てのものだった。私は、その書物を手に取った。表紙には『雨宮記』と書かれていた。”雨宮”とはこの家の名だろうか…。なんとなく、この家には不思議な既視感があり、もしかしたら、その既視感の正体が分かるかもしれないと思い、その場で読み始めた。
それには、この村の歴史や、この村の伝承などについて書かれていた。さらに読んでいくと、家系図とこの家の歴史のようなものがあった。すると、家系図の所に、見るからに不自然な部分があった。なんと、母親の名がないのに、その子の名と父親の名が書かれている部分があったのだ。不思議に思い、その辺りの家の歴史の部分に目を移した……。
その瞬間、私は目を見開いて固まった。
「…え………。」
私は思い出してしまった……。自分が生まれたことで振りまいた不幸も…、私が生きていることで犯した罪のことも…。
それはまるで、優しい夢から覚めるようだった。
コメント
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いやぁめっちゃ気になる〜!!✨←どんな時間に見てんだ この圧倒的ミステリー感、、めっちゃ好きです() 次回も楽しみにしておりますm(*_ _)m でもゆっくりで大丈夫ですからね!(๑• ̀ω•́๑)✧
いつも連載遅くてごめんなさいm(_ _;)m