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ホウ酸
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ふらん
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誰も、動けなかった。
増えた。
確かに、増えた。
さっきまで一体だった“それ”は、今や三つに分かれて地面を這っている。
顔のない頭部。
歪な腕。
潰れたままの身体。
なのに。
――生きている。
「いやいやいや無理無理無理」
ぐちつぼが後ずさる。
「これどうすんの!?」
「俺に聞かれても困るんすけど!?」
ぴくとですら焦っている。
もうこの時点で相当ヤバい。
――ぐしゃ。
また、一体増えた。
「うわ増えた!!」
「見りゃわかるわ!!」
じり、と“それ”らが動く。
速くはない。
でも確実に、こっちへ来ている。
「……逃げる?」
ぐちつぼが小さく言う。
「いやでも、学校の外出たらどうなるかわかんなくない?」
「じゃあどうしろってんだよ!」
「落ち着いてください二人とも!俺が考えるんで!」
そう言いながら、ぴくとは既にスマホを高速で操作している。
何をしてるのかは知らんけど、指の動きだけ異常に速い。
その間にも、“それ”は増え続ける。
五体。
六体。
「うわもうキモいキモいキモい」
「ホラー耐性無さすぎだろ」
「お前はもっと危機感持て!」
その言葉に、少しだけ引っかかった。
危機感。
……なんだろう。
怖いはずなのに。
「あ」
気づく。
俺、
“こいつらのこと、ちょっとわかるかも”。
「……らっだぁ?」
ぐちつぼが怪訝そうにこっちを見る。
「いや、なんか」
言葉にしづらい。
頭の奥が、妙に冷えている。
「……たぶんだけど」
“あいつら、核がある”。
「「……は?」」
ぴくととぐちつぼの声が重なる。
「え、核?」
「なんでわかるんすか?」
わからない。
わからないけど。
「なんとなく」
その瞬間。
ぞわっ、と背筋が粟立つ。
“それ”らが、一斉にこっちを向いた。
「っうわ」
顔なんて無いはずなのに。
見られた。
そんな感覚だけが、はっきりと残る。
「らっだぁ、それどこにあるかわかる?」
「……たぶん」
自分でも怖いくらい、自然に理解できた。
胸の辺り。
黒い、塊みたいな。
「あれ壊せば、多分死ぬ」
言った瞬間。
“それ”らが、走り寄ってきた。
「うわ来た!!」
「避けてください!!」
ぴくとが叫ぶ。
同時に、床へ光る文字が広がった。
それが壁のようになって、相手を弾いていく。
「え、何それ!?」
「結界っす!」
飛び込んできた一体が、光の壁にぶつかる。
――ぐしゃぁっ
潰れる。
でも、
「また増えるっ!?」
「クソっ、マジでキリない!」
その横を、別の一体がすり抜けた。
「らっだぁ!!」
ぐちつぼの声。
気づいた時には、身体が動いていた。
視界が青く染まる。
“それ”の胸へ、腕を突き刺す。
触れた瞬間、
“そこだ”と思った。
ぶちっ
柔らかい感触。
次の瞬間。
黒い塊が、砕けた。
すると。
――ぱきん。
“それ”の身体全体に亀裂が走る。
そして今度こそ、
さらさらと砂みたいに崩れて消えた。
「……え」
静まる空間。
残っていた“それ”らも、ぴたりと止まる。
「マジで核じゃん!?」
「いやなんで知ってたんすか!?」
息を切らしながら、ぐちつぼとぴくとが叫ぶ。
でも、それより。
俺が、一番わからなかった。
なんで今、
俺は “食べ方がわかった”?
NEXT=♡1000
コメント
2件
らっだぁの青鬼化が進んでんのか… 最後どうなるんだろうか