※実際の個人、団体とは関係ありません
※口調が違う可能性があります
※少しホラー寄りです
苦手な方はご注意下さい
蒸し暑い夏の日
買い出しの帰りにいつも通り
店に続く路地裏の道を通っていた
もう少しで着くというところだった
道を曲がった瞬間いきなり突風が吹き
一瞬目を閉じてしまった
目を開けた時、僕は信じられない光景を
見た
そこはどこまでも続く広い野原だった
よく漫画やアニメで見る青々とした
爽やかな雰囲気な野原ではない
地面に生えている草は枯れている
1本だけの木は茶色く変色し
とても寂しい雰囲気だ
路地裏にはこのような場所など
あるはずがないのに
ここにいてはいけないと直感で思い
急いで野原に背を向け入ってきた
野路裏に戻ろうとした
「ちょっと待った!」
声をかけられ肩を掴まれた
後ろを振り返ると僕とあんまり
変わらない身長の人間が立っていた
服装は黒いシャツの上にフードの着いた
白いパーカーを重ね着をしている男だった
顔はフードを深くかぶっており
よく見えないが声を聞く限り男だろう
「ここは基本的に1本通行だろう?
“入り口”から出ようとしたら何があるか
わからんぞ?」
男の言っている意味が分からず
「どういう意味です?
僕、この場所初めて来たんですけど」
そう言うと男は少し見開いて僕の
顔をじっと見て あー…と小さく言うと
「なるほど…迷い込んだんだな」
は?と思っていると
「意味わからんって顔してるな
まぁ、ここで会ったのも何かの縁だ
“出口”まで案内してやるよ」
男は僕についてくるように促した
「いやー、君は幸運だな!
俺に会えなければ今頃どうなってたか」
「僕、この辺りに住んでるんですけど
こんなとこ初めてだったんで
助かりました」
少し笑ってそう言うと男性は
「そうだろうな!
生者がここに来る事は普通
あり得ないからな」
「…聞きたいことがあるんですけどー
あー、とすみません名前聞いても
ええですか?」
「名前?あーっと、そうだな…」
と少し考えると
「じゃ、シロって呼んでくれ」
「シロ?それ名前ちゃいますよね?」
「”名前”というか”呼び名”だな
悪いが本名は言えない…より
聞かないほうがいい」
前を歩いていたシロが僕の方を
振り向き少し笑ってこう続けた
「君も名を名乗らない方がいいぞ?
周りの奴らに聞かれたら厄介な事に
なるからな」
『他の奴ら』という言葉に僕は
辺りを見渡したが
シロと僕以外には誰にもいなかった
それを不思議に思いシロに聞いた
「あの、僕達以外に誰にもいないん
ですけど…」
「ほー、じゃあまだこちら側には
引き込まれていないみたいだな」
「は…?」
シロの言っていることがよく分からず
間抜けな声が出てしまう
「あー、そうだそうだ
まだここの事あまり詳しく説明して
無かったなぁ」
うーん…シロは自身の顎に手を当て
少し考え話し始めた
「ちょっと長くなるがなぁ
ここはな、簡単に言うと亡者の住む
“あの世”とあんたの住む”この世”の
境目みたいなもんだ
ここにいる亡者は大体は未練があって
あの世に行けない者達だ
未練を果たそうとさっき君が入ってきた
“入り口”から出て行こうとする奴らは
多い
この場所の決まりを知らずにな
たまたま俺が見かけた時は君の時と
同じ様に止めたりしてるんだ
さっき自分の名を名乗らない方が
良いと言ったがそれはな
名前は最も自分を示す物だ
それを聞かれると段々と君も
こちら側に引き込まれてしまう」
「…じゃあ、いない訳じゃ無くて」
「あぁ、君には見えてはいないだろうが
周りにいるんだよ未練があるのに
その未練が解消出来ない奴らが
沢山な
隙を見て君をこちら側に引き込もうと
している、
気を付けてくれ」
「…はい、ありがとうございます」
「因みに黒いモヤみたいなもの見えたら
こちら側に近づいている証拠だからな」
「それは今ん所見えて無いですね」
「そうか、それなら良かった」
それからしばらくシロの後ろを
ついて歩いていた
“出口”というものにいつ着くのか…
そう思っていると
「お、あったここだ」
そう声を上げる方を見るもただの
虚空が広がっているだけだった
シロを見るとまた少し笑い
「”出口”はな、少し分かりづらく
なってるんだ、見えないだろうが
この空間に入ると君の世界に戻れる」
「いやぁ、ここまで親切にしてもらって
助かりました」
「ほらほら、礼は良いからはよ入れ
悪い影響が出る前にな」
そう言われぐいぐいとその空間に
シロに押し込まれる
完全に入る前に
「そうそう、最後に1つだけ
仲の良い相手がいたらそいつらを
大切にな」
じゃあなと手を振るシロを見た後
僕はここに来た時と同じ突風に吹かれ
また目を閉じてしまう
目を開けると自分の店の前だった
今までのは何だったんだろうかと
思っていると持っていた携帯に
同期から連絡が来ていた
返信をしつつ僕は店に入った
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