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数字が読み上げられるたびに、自分の手元にある数字を探して期待と不安が交錯する。
「次、44番!」
「ない~」
「次、65番!」
「え、俺リーチリーチ!」
どんどん盛り上がりは増していき、俺も負けていられない。
せっかくならディズニーペアチケットか、食欲を満たす黒毛和牛が欲しいところだ。
そう思い、緊張しながら次の番号を待っていると。
「はい次!12番!」
その瞬間──。
視界の端で横に座っていた尊さんが、迷いのない動きで利き手を上げていた。
かと思うと「おっ、烏羽さん一番乗り!!?」と司会の声が上がった。
思わず顔を上げると、隣に座る尊さんが静かに立ち上がっていた。
いつもは冷静沈着な彼の指先が、信じられないほど軽やかに動いて、自分のビンゴカードを掲げている。
薄暗くなり始めたビーチで、ステージの光を背負った彼のシルエットがくっきり浮かび上がった。
「うわ早ー!?」「でも烏羽さん行く人いるん?」
周囲がどよめく中、尊さんは特に得意げな素振りもなく
しかし明らかに満足そうな、どこか誇らしげなオーラを纏いながらゆっくりとステージの方へ歩いていく。
(尊さん運強いなぁ……)
そう感心していると、司会に促された尊さんが壇上に上がって司会の横に立つ。
「おめでとうございまーす!!それでは一番乗りの烏羽さんにはディズニーペアチケットプレゼントとなります!…ちなみに、誰と行くかはお決まりですか?」
会場の全員が注目する中、司会にマイクを向けられた尊さんは、全く迷うことなく答えた。
『ああ、せっかくなので、恋人と』
それに俺が嬉しくなる前に、周りが一気にざわめき立つ。
「ええ、やっぱ烏羽さん彼女いるんだ…」「羨ましい~」など、どよめきに似た様々な声が聞こえてくる。
確かに尊さん、仕事もできてこのルックスだ。
モテるもんなぁ、と少しだけ複雑な気分になりつつも、内面ではニヤけそうになるのを必死に堪えた。
(尊さん、俺と行ってくれるんだ…嬉しい…っ)
そう思いながらステージ上の彼を眺めていると、ふと目が合った。
すると尊さんは、俺だけに分かるような穏やかな微笑みを浮かべていた。
まるで『あとでな』とでも言うように。
その後はビンゴ大会の勢いで2等当選者は黒毛和牛特盛1kgを田中が引き当て、3等以降の景品も続々と決まっていった。
そんなビンゴ大会の熱狂の中、俺のカードは結局穴だらけのまま終わってしまった。
「全然当たんないな」と少し凹みそうになったが
尊さんと、しかも無料でディズニーデートに行けることを考えれば、一生分の運を使い果たしたのかもしれないな
なんて思って、その場を楽しんだ。
ねむ