ダメダメ、樹とは付き合ってもないんだから、新しい下着なんて要らない。
何をバカなことを考えてるの、私。
本当に、ちょっとおかしい。
何だかふわふわ心が揺れて、落ち着かないまま、私は一通り買い物を済ませ、マンションに戻った。
夜までの間、ソワソワしっぱなしで立ったり座ったり。自分がこんな気持ちになるなんて、柊君とお別れした時は夢にも思わなかった。
落ち込んで、暗い毎日を過ごすはずだったのに、今、無性にドキドキしてる自分がいる。
よくわからない不思議な感覚。
そうこうしてるうちに、樹がやってきた。
部屋の前まで来てくれて、荷物を運んでくれた。
本当に……今から2人で暮らすの?
これは夢なのか、まだ信じられない。
車に乗り込むと、樹が言った。
「今日は俺の部屋で食事しよう。宅配頼んでるから」
「あ……うん、ありがとう」
部屋で食事って、緊張して喉通るかな?
それにしても、運転席の樹さん、本当にいい匂いがする。しっとりと、大人っぽい香りだ。
樹のマンションに到着し、荷物を持って部屋に入った。まず1番奥のかなり広いリビングに通された。
「後で部屋に案内する。とりあえずそこに座って」
「あ、うん」
ぎこちなく返事をして、私はリビングの大きめのソファに腰掛けた。
お願い、緊張よ、早く溶けて消えて……
まるでおまじないみたいに自分に向けて唱えた。
「これ、飲んで」
樹は、温かいミルクティーを入れてくれた。
「ありがとう」
「寒くないか?」
「ううん、ちょうどいいよ。ミルクティー、いただきます」
樹も少し離れてソファに座り、コーヒーを飲んでいる。私との距離は1mくらい。
すぐ隣にいる樹。
もちろん、樹は柊君とは違う。でも、もし、柊君と結婚していたら、こんなふうに毎日一緒にいられたんだろうな……
悪い癖だ、どうしてもすぐに柊君のことを考えてしまう。
無駄なことだとわかってるのに。
「ピンポン」と、チャイムが鳴った。
「俺が出る」
宅配が届き、樹はドアを開けて、リビングを出ていった。
その背中を見て、私は大きく深呼吸した。
「食べよう。いろいろ頼んだから」
戻ってきた樹が、テーブルに料理を取り出して並べてくれた。
「ありがとう、美味しそう。あっ、私にも払わせてほしいんだけど……」
「そんなことは気にするな。俺が誘ったんだ、お金のことは一切気にしなくていい」
「でも、そんなの申し訳ないよ」
「そんなこといちいち考えてたら窮屈だろ。ラクにすればいい。今日からここがお前の家だ」
「でも……」
確かに、樹がお金には困ることはないだろう。だからって、甘えてもいいの?
「そんな顔するな。ここにいる間はずっと笑っててくれ。頼むから……」
そんなこと言ってくれるんだ。
そうだね……私も、できることなら笑っていたい。
「ごめんね。本当に甘えちゃっていいのかな?」
「ああ、もちろんだ。さあ、食べよう」
樹は、さり気なく割り箸を渡してくれた。