「私…ずっと辛くて。味方もいなくて、一人きりだと思っていました。けれど、アプリを通じてとても助けられました。今、ここまでやって来れたのは、あなたたちの…復讐アプリのお陰です。…ほんとうにありがとうございます」
「それが私たちの存在意義ですから」アズミが深く頷いた。「私も最初はひとりでした。でも、ボスに会い、このアプリに出会い、この活動に賛同したうちのひとです。この運営会社は、形は違えど同じような境遇を潜り抜けてきた女性たちの集団なのです。ですから、私たちはひとりでも多くの辛い立場にある女性を救いたいと考えています」
「そうだったのですね…」
「今回はイレギュラーでした。美晴さん、私たち『復讐アプリ』の運営については、どうか、内密にお願いします。くれぐれも他人に話されたりしないよう、お願いいたします」
「も、もちろんです! ぜったいに誰にも言いません!」
復讐アプリの秘密について他言するなどデメリットしかない。自分を助けてくれた彼女たちに、恩を仇で返すようなこともしたくない。
「あの…アズミさん。これからどうすればよいですか?」
「まず、相手に気付かれないようにここを出る方法を考えなくてはなりませんが、相原久次郎も松本幹雄も、もう部屋に戻っていると思いますけどね」
言われてみれば鉢合わせしそうなところを助けてもらったのだ。部屋に戻っても大丈夫な気がした。
「じゃあ、戻った方がいいですか?」
「まあ、焦らずに行きましょう」
アズミは笑った。
美晴は彼女の存在をとても頼もしく思った。
孤独に一人で悪と戦ってきた。力及ばず、大切な我が子を失くしてしまい、信じていた親友にまで酷い裏切りを受け、誰も信じられなくなっていた時だから、余計に心強く感じる。
復讐アプリが『わたしはあなたの味方です』と言ってくれたのは、ほんとうのことだった。
「美晴さん。不安に思うことはありません。私たち復讐アプリのチームが常にあなたを支えています。あなたは一人ではないのです」
「ありがとうございます…」
その言葉が、嬉しくて、嬉しくて。
暫く涙が止まらなかった。アズミは黙って美晴の背中を撫でてくれた。
辛く苦しい思いが、救われ、浄化されていく。
ようやく涙が止まったころ、美晴はアズミに質問をしてみた。
「あの…アズミさんはどうやって私を見つけたんですか? 顔も知らないのに…」
「顔は知らなくても、居場所ならわかります」
アズミは持っていたスマートフォンを美晴に見せてくれた。位置情報アプリがこの場所を指している。「復讐アプリにはGPS機能が埋め込まれています。それで、ご登録電話番号の追跡をするだけで、簡単に見つけられます」
なるほど…!
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