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サロンでレイルの話を聞いた。
掻い摘んで言うと学園の問題児フローラ。アドリアンとオーラスの二人を攻略終了という内容。
どこでそんな情報を得たのかと思ったが、セバスさんだろう。
セバスさんは普通の人じゃない。
5年前の足音から疑問を感じてきたが、年月が過ぎるとセバスさんは諜報員なのではないかと思った。
おそらく入学式の途中に調べに行ったってところか。
大体の情報源はセバスさん。
「現状、要注意してほしい。特に私と……ギルメッシュだな。彼女は高貴の身分の者だけを狙っている。相手の弱みにつけ込み接近、言葉巧みに籠絡する。様々な情報が入り混じっている」
言葉巧み……レイルは納得のいかない様子だった。
言葉だけで落とせるほどアドリアンもオーラスも簡単なことではないから。
「こりゃ、実物見なきゃわからねぇな。あのクソ王子もナルシスト野郎もたかが言葉に騙されるタチかよ。未来視があるのかもな。ま、冗談はさておき。レイルの噂が真実か否か直で見なきゃなわからねぇな」
「ええ。……人柄はともかくそこまで愚者とは思えませんし」
ギルメッシュとクルーガーは首を捻る。
確認のように言っているものの、やはり現実的に難しいと踏んでいる。
この内容は一度話したことある内容だが、現状のすり合わせ、そしてこの場にいるアレイシアとアリスに情報共有しているのだろう。
「あの、ひとついいっすか?」
「なんだ?」
一度話が途切れた後、アリスは右手を挙げた。
……余計なこと言わないよな?
少し警戒しておこう。
「どんな容姿の方なんすか?」
「……確かピンクブロンドでおっとりした雰囲気……だったか?」
「殿方の容姿もお聞きしてもいいっすか?」
「そうだな……」
アリスはいくつかレイルに質問した。
攻略対象の容姿、性格など。
……どうしたんだ?
「ふむ……なるほど、ありがとうございました」
レイルからいくつか情報を聞き出したアリスは考え込む。
一体何がしたかったんだろう。
「何か気になることでもあったのか?」
「いえ、今後の参考にしようと思っただけです」
「そうか」
アリスはあくまで確認として聞いただけのようだ。
乙女ゲーをプレイした者として気になるらしい。
『……マジっすか。これでもうアドアレもオラアレも期待薄だと。……ち、余計なことしてくれたっすね。……一度話さなければっすね。……」
なんか物騒な単語聞こえたんだけど。
まだ腐った展開期待してたの?
やめてくれない。マジで。アレイシア一筋って言ってんのに。
余計なことされるの困るし、後で再度忠告しておこう。
内心方針を決めるが、アリス以外質問はなかった。
それ以降質問はなく、この会は終了となった。
一つ疑問があるとすれば、何故アレイシアもアリスの二人に話したのか。
その疑問だけが残る。
……だが、その疑問はすぐに解消することになった。
それはサロンを出る際にレイルから僕だけに渡された一通の手紙。
《今晩腹を割って話したいことがある。深夜一人で私の部屋に来てくれ》
そう一文が書かれてあった。
……どうしたのだろうか?
その、春の夜空に星が煌めく静かな夜。僕は部屋を抜け出し見回りの警備を避けながらレイルの部屋に向かう。
部屋に着くとノックすることなく入室する。
「どうしたんだよこんな回りくどいやり方、らしくない」
そう軽口を挟みつつ、座っているレイルと側で控えるセバスに近づく。
チェイサーテーブルの上には軽くつまめる菓子と茶がすでに用意されていた。
……長丁場になりそうだな。
「すまなかった。……至急確認したいことがあってな」
いつにもなく真剣な表情のレイルに僅かに警戒する。
普段と雰囲気が違う、なぜか緊張してしまう。僕はセバスさんに椅子を引いてもらい席に着く。
「アレン、私は君は昔から人並外れた叡智を兼ね備えていると考えていた」
突然の前振り。
さて、どう返すべきか。
「それは過大評価されたものだね」
「ああ、最近過大評価しすぎていた」
当たり障りのない返答をしたつもりだが、真っ向から肯定される。
……やばい、レイルの意図がわからない。
「回りくどい言い回しはやめようか」
一度間を置く。
少し背筋に力が入り筋肉が強張る。
「単刀直入に聞こう……君はメーデン男爵令嬢についてなにを知っている?初めて彼女の話をした時に明らかに取り繕った反応をしていた。今日知り合ったはずの、特待生の態度も不自然すぎた。君たちが今日初対面だったことは調べがついている」
『ドクン…ドクン…ドクン』
……失念していた。
大方、部下に見張りをさせていたのだろう。
一度アリスの存在を聞いた後、随分と興味を持っている素ぶりを見せていた。
それに沈着冷静なレイルからは想像できないほど鼓動が速くなっていることも気になる。
5年の付き合いだが、何となく問い詰めている形だが、緊張していて不安な感情が入り混じっているような表情をしてることを察することができた。
……さて、何と返答すべきか。
嘘は通じない。僕はもともとポーカーフェイスが苦手でこの手のやり取りは不得意。
レイルもそのことを知っていて回りくどいやり方をやめてくれた。
ここは真摯に受け答えすべきだ。