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「この落ちこぼれバイトが!! お前なんかの存在は黙っとけ!!」
「! 申し訳ございません…… 改善に努めて参ります!」
「もういい。お前はクビだ。とっとと帰れ。お前みたいな、役立たずの人間は要らない。」
「はい…… 今日までありがとうございました。」
「……」
「(無視、か……)」
私は 土井梨香子(どい りかこ)。
今年22歳になったばかりで、未だ将来の夢なども決まっていない、独身の一般のフリーターだ。
そんな私は 未だ仕事に手慣れておらず、小さなミスから大きなミスも繰り返していた。
しかも 店長が有り得ない程厳しく、たった一つのミスでも 説教を何時間と受けていた。
―――そして今日。
とうとう、この店をクビになってしまった。
私的には結構好きな店だったから、ハズレの店を引いてしまったようだ。
―――クビになったのなら、それが最後。
私は、次に働く場をすぐ決定しないといけない。
「(面倒……)」
___まぁ、フリーターを辞めれば良いだけの話なのだけれど。
それが出来れば苦労していない。
「はぁあ……」
夜遅くの帰り道、思わずため息を一つ漏らした時だった。
「そこのお姉さん、ちょっとこっちに来てくれない?」
「!!(え、誰…??)」
私にいきなり声をかけてきたのは、白いパーカーを被った 男性だった。
暗闇で顔は見えないが、声からして たぶん若者だろう。
彼は不気味な笑みを浮かべていて、両手に何かを抱えているようだった。
「君さぁ、今の自分の人生に呆れてるんじゃない?」
「え……(ほんと何なの…?)」
いきなりそんな話題を出されてあたふたする私に、彼は言葉を続けた。
「僕さぁ、良い物持ってるんだよねぇ。買ってかない?」
「何、ですか…、あなた。 買いませんよ。」
「へぇ、買わないんだ。後悔するだろうなぁ、絶対。 だって、新品の人生が買えるってのにさ。」
「人生を、買う……?」
謎の発言をただ繰り返す彼。
私は、そんな恐るべし誘惑に誘われてしまった。
「ねぇ、買ってよ。値段以上の価値があるに決まってるからねぇ。」
「……仕方無いな。 買います買います。値段は?」
私が呆れた、と声をあげると、彼は素直に喜んでいた。
どうせ安くて、機能も大した事ない物なんだろうけど。
そんな物なら買っても良いや、と思ってしまった。
彼の 少し子供っぽい声には、断れない恐ろしさも交えている気がした。
「値段?ちょっと驚くかもね。 ―――今回は安くしてあげる。 5億で。」
「は、はぁ……っっ!??」
「そんなに驚く? さ、とっとと払ってよ。」
「そ、そんな事言われたって… 5億なんて払えません!!高すぎる……」
「人生買うってのに、5億も払えないの?君、人生の価値を分かってないようだね。 僕が教えてあげるよ、その価値を。」
「…?」
「君の両親、凄く金持ちだろう?性格は悪いけど。」
「え? なんで知ってるの…… 怖い、、」
何故か私の両親の事まで知っている彼。
彼は、人間じゃないのかも―――。
「だからさ、5億なんて安いものじゃん。 買ってよ。金は出してくるから。」
「わ、分かりました……?」
怖くて思わずそう言うと、彼の手元に 急に何個もの札束が現れて、宙に浮いた。
「5億、頂きました。 これで会計は終わりさ。 享年15歳の幸せな人生、思う存分楽しむんだね。」
「交通事故で亡くなったら、またこの現実世界に戻ってくるさ。 ストレス発散になると良いねぇ…」
「それじゃ、さようなら。」
彼は一言そんな言葉を残し、空中に浮かんで消えてしまった。
彼は一体、何者なのだろうか―――。
というよりも、5億で私は何を買ったんだろうか?
何も貰っていないのだけれど……
享年15歳って、どういう事……?
交通事故……?
そんな彼の言葉を思い出していると、急にめまいがしてきた。
そして視界がグラグラと歪み、やがて意識は遠のいていった―――。
「まぁ、何と元気な赤ちゃんなの!! 元気に泣いて、素晴らしいわ!これが、私が望んでいた人生よ!」
誰か分からない女性が、泣いている。
目の前で、大泣きしている。
意味が分からない。
その隣には男性も居て、同じく涙を溢している。
訳の分からないまま、私の記憶は途切れていた。
「……(私ったら、なんでこんな小さな時の記憶があるのかしら?)」
今年13歳になる私は、ふと赤ちゃんの頃の 微かな記憶を探っていた。
―――よく考えると、何故この年でこんな事を理解できたのだろうか?
本当に謎の、記憶のカケラ。
私はさり気なくそんな事を考えながら、中学校生活を送っていた。
そして今日は体育大会。
両親もやって来て、楽しい最初の体育大会になる予感だ。
私の家は比較的裕福で、幸せな生活を毎日送れている。
こんなに幸せな家庭、あるだろうか?
「世界で一番幸せな家庭」を名乗れる自信があるくらい、一日一日が輝きに満ちている。
そんな中、季節は夏に向かっていた。
そろそろ海で泳げるくらいの気温になってきて、私達は旅行に行くだろう。
そしてその地は、安定の沖縄だ。
親戚が沖縄出身、というのもあり、毎年沖縄で数日間を過ごしていた。
いつも新鮮な気分になれる沖縄は、私の大好きな場所だ。
本当に最高!
―――こんな気持ちになり、私は思わず笑みを零した。
―――3年後
今年で中3になる私。
そんな私は、今年、家族で海外に行く事になっていた。
それも、オーストラリアへの旅行だ。
これが 私初の海外旅行となる。
それもあり、私は今か今かと この日を待っていた。
―――そして今日
私達は、ついに待望のオーストラリア便の飛行機で 現地に着陸したんだ。
まさかこの年で海外に行けるなんて____。
本当、私は恵まれている。
そんな思いを寄せて、私達はオーストラリアの色々な観光地を回りに回った。