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『うわぁ、流石真衣ちゃん!!今日もビジュ良いね〜〜!!』
『一生見てたい―― 美人すぎます!!』
『ファッションおしゃれ〜〜!! その服、どこに売ってるんですか?? 素敵ですね〜〜!!』
「ふふっ、またコメント来〜てるっ!」
私の投稿のコメント欄には、いつも溢れ返る量のコメントが来ている。
アンチもたまにいるけど、ほとんどが応援してくれてる人達だ。
そしてコメントを一件でも書くと、またコメントの嵐。
『いつもコメントありがとうございます!感謝です!』
「っとな!」
そう送ると、途端に返信欄には ファンが集まる。
私はもうこんな生活に慣れたから、それ以下の生活なんて考えられない。
だから、努力は人一倍する。
それが私なんだ。
私は 桜井真衣(さくらい まい)。
20歳になったばかりの新社会人で、主にインターネットで収益を得ている。
私の場合、元々こんな才能があったのかも知れない。
そのためか、下積み時代は経験せずに済んだし、すぐに有名人になれた。
それが普通だから、特に感謝などもしていなかった。
―――そんな幸せな私だけど、最近、この生活に飽きを感じていた。
退屈。
ただ投稿するだけ、コメントを貰うだけ。
新しい発見が無い。
お金は十分持っているし、有り余っている。
だからと言って、必ずしも幸せとは限らないんだ。
その事実に、私はつい最近気付いた。
―――そのせいで、この生活が 急激に退屈な物と思えてきたんだ。
「なーんか面白いこと、起こんないかなぁ〜……」
そんな独り言を、私は家の近くの細い路地で呟いていた。
この言葉に、返答は待っていなかった。
だけど、思わぬ答えが返ってきたんだ。
「今から起こらせてあげようか?“面白いこと”。」
「へ……?」
見知らぬ彼の、見知らぬ言葉。
私は、ただ止まって 彼をじっと見つめていた。
彼は白いパーカーを着て、フードを被っている。
そのため 顔は見えないけど、おぼこい声からして たぶん私と同世代くらいだろう。
そんな彼は、どこか恐ろしいオーラを放っていた。
そして薄っすら、彼の周りには霧が出ている気もした。
「君、有名なインフルエンサーだよね。そんな幸せな人生にさえ、退屈してるけどね……。」
「! なんで知ってるんですか、心情まで―――、、 怖いです……っ」
「大丈夫さ、怪しい者じゃ無いから。」
「(なんなのこの人―――。)」
「で、本題はここから。 君には、とある商品を買って欲しいんだ。きっと満足できるに違いないさ。」
「え?商品…? ――まぁ、物によりますけど。」
しょうもない物なら買わない。 貴重な物なら買う。
お金が有り余っているのだからこそ、勿体ない使い方はしない。
すると、彼がしばらくして言葉を続けた。
「―――君に買って欲しい物は、人生だ。」
「は?何言ってるんですか?」
「君、退屈してるんだろう?今の人生に。 それなら、新しい人生を手に入れようじゃないか。」
「は、はぁ―――? んもう、仕方ないな!買ったら良いんでしょ?買ったらっ!」
私は苛ついた口調で話しながらも、その話に少し、いやすごく興味を持っていた。
お金はあるし―――。 買っても良いか。
「えっとー、値段は?」
「うーん、そうだなぁ―――。 今回は努力家の人生だから…… ま、4億とかかな?4億ならあるでしょ?普通に。」
「はっっっっ!?? 4億なんて、そんな馬鹿げた―――、、」
「新しい人生を貰うのに、億も払えないの?払えるでしょ、君なら。」
「―――払えるっちゃ、払えるけど____。 その…… 勿体ないです!」
「勿体なくなんか無い。さぁ、買うか死ぬ―――、あぁ、買わないかどっちかですからねっ!」
「!!(死ぬ―――、 こんな彼なら、死んでも普通かも知れない___。 買おう…)」
「買います―――。 でも、4億は……」
「銀行から取ってくるから、大丈夫。 ―――ほら、取ってきた。」
そう言うと、彼の手元には札束がいくつか現れた。
一つ一つが大きな札束だ。
これが、私の銀行にあった4億―――。。。
「さぁ。新しい人生、思う存分お楽しみあれ! あっ、ちなみに、享年25歳でちょっと長いから、16歳からにしとくねー!」
「ん?」
最後まで訳の分からず終わってしまった―――。
というより、商品貰ってない!!!
詐欺じゃん詐欺! 訴えなきゃ―――!
私がそう思うと、それと同時にめまいが急に訪れた。
そして一瞬の間に記憶は遠のき、やがて暗闇に飲み込まれていった―――。
「んんっ…… っ…」
「(あ、れ…? ここ―――、どこ?)」
私がふと目覚めたのは、見覚えのない部屋だった。
そして寝転がっているのは、綺麗でオシャレなシングルベッド。
意味が分からない。
ここはどこ? 私は――― 誰?
「ちょっと、杏奈!何してんのよ!早く起きて、学校行く準備しなさーい! 今日は期末テストでしょ?急ぎなさい!」
「えっ?え…… 誰……?」
「は?あんた何言ってんの…… 頭おかしくなった?高校行きなさい!早く!」
「あっ!そっか… し、下降りるね!一階!」
「え―――? えぇ、早く降りてらっしゃいね。」
そう言って、お母さんは階段を降りていった。
―――そうだ、私、高校生だ。
今のは私のお母さんで、今日は期末テスト。
勉強は昨夜入念にしたから、絶対今学期末も一位になる!!!
そう、硬い意志を心に刻んだんだった!!
―――私は今、とっさに全てを思い出した。
―――あれは…… 何だったんだろう…。
不思議に思いながらも、準備を済ませて学校に向かった。
9年後―――
高校も大学も、ずっと勉強を怠らなかった私は、立派な研究者へと成長していた。
私は元々科学が大好きで、それだけを学んでいたいと思うくらいだった。
そしてその道を迷わず選び、迷わず研究者へと進んだんだ。
「えーっと、この所を坂井さん、やっておいてもらえますかね?」
「あ、白石さん!分かりました、すぐ終わらせます! え、この前の方は終わったんですか?」
「あー、はい。一応!」
「えっ!?早すぎません!? もう、流石白石さんとしか言いようが無いですね―――。 ありがたいですぅ!」
「いえ!やる事は先に済ませたいタイプなんでね笑」
「だとしても早すぎますよ! 本当にありがとうございます!」
私と同じ会社で働く 坂井さんは、私にいつも感謝をしてくれる。
私の仕事量に対しての済ませるスピードが早いからかも知れない。
―――でも、こうしてやっているとやり甲斐を感じるものだ。
本当にこの道を進んで良かったと感じている。
今日、また実験もするし。
それは、坂井さんと一緒にする実験で、これが成功すれば 世の中が一歩前進する。
――本番
私は緊張感を持ち、実験に望んだ―――。
「ここに薬、入れますね?白石さん。」
「あ、OKです――― あっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!! やめてっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!」
■■がとんでもない爆発音を立てて、周りに飛び散った。
そして________________、
「!! はぁっ、はぁっ……! 死ぬ、死ぬっ!!やめて…… って、あれ? ここは…」
「僕のこと、覚えてる?9年ぶりだね。 真衣さん。」
「!」
そう私に話しかけてきたのは、どこかで見覚えがある人物。
―――というより、私は―――
「あ! 私、、 真衣、か…」
「そうだよ。白石、じゃないからね笑」
「! 白石って、私の名前―――。 え?どれがどれ…?」
「まぁ君の名前は、真衣 だからね。 ____それより、努力家の人生は楽しかった?」
「え?あ…… ま、まぁ…(きっと、夢を見てたんだよね―――?)」
きっと長い長い夢を見て、今 目覚めたに違いない。
―――でも、あの生活、結構楽しかったなぁ…
それにやけにリアルだし… ほんと、夢の世界って不思議。
私がそう思っていると、彼が急に何かを取り出した。
それは大きな物体で、丸く、不気味な黄色に光っていた。
「何ですか?それ。」
「―――今から、君のインフルエンサーとしての裕福な人生を頂くよ。転売させてもらうね、ありがとう。」
「は?」
「―――さようなら、真衣さん。」
「………キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ザクッ、ザクッ……
人にナイフを突き刺すような音。
聞き心地の悪いその音が、何度も何度も聞こえてくる。
―――インフルエンサーの真衣は、人生を買うまで、自分が“死ぬ”ことを知るよしもなかった―――。
すると、彼はふと呟いた。
「良い人生がゲットで〜きたっ笑笑」