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デートの後。
社内の明かりも少しずつ落ちて、廊下は静かになっていた。
「……帰る」
ジェーンが立ち上がる。
「はい」
ジョンも慌てて荷物をまとめる。
(終わり……?)
少しだけ名残惜しい。
でも、ここで引き止める勇気はまだない。
並んで歩く帰り道。
昼間よりも人が少なくて、足音だけが響く。
「……」
「……」
沈黙。
でも、気まずくはない。
むしろ——
(なんか、落ち着く……)
「……ジョン」
「はい」
ジェーンが少しだけ立ち止まる。
ジョンも止まる。
「今日」
「はい」
「……良かった」
短い言葉。
でも、しっかりと。
「……俺もです」
自然に返せた。
少しだけ間。
ジェーンは視線を逸らしたまま、
「……昨日の続き」
「……」
心臓が強く鳴る。
「考えた」
「……はい」
逃げるな、って言われた。
だから、ちゃんと聞く。
「……まだ全部分かったわけじゃない」
正直な言葉。
「でも」
一歩、少しだけ近づく。
「一緒にいると、落ち着く」
「……」
「さっきも」
少しだけ言葉を探して、
「……楽しかった」
それはもう、十分すぎるくらいの答えで。
「だから」
ジェーンが、まっすぐ見る。
「試す、じゃなくて」
一瞬、息を止める。
「……続ける」
「……え」
理解が追いつくまで、少し時間がかかる。
「それって……」
「……」
ほんの少しだけ、ためらってから。
「……付き合う、ってことでいい」
——はっきりと。
「……っ」
言葉が出ない。
頭が真っ白になる。
「……嫌なら」
ジェーンが少しだけ視線を逸らす。
「無理にとは言わな——」
「嫌じゃないです!!」
思わず、遮る。
「むしろ……すごく……」
声が少し震える。
「嬉しいです」
ちゃんと、言えた。
一瞬の沈黙。
そして。
「……ならいい」
ジェーンが小さく頷く。
その瞬間。
——ふっと、力が抜ける。
(……ほんとに……?)
じわじわ実感が湧いてくる。
歩き出す。
さっきと同じ道なのに、少し違って見える。
「……」
「……」
また並ぶ。
でも。
距離が、ほんの少しだけ近い。
ふと。
手が触れそうになる。
「……」
一瞬、止まる。
どうするか迷う。
(触れていい……?)
怖い。
でも。
「……」
ジェーンの方を見る。
目が合う。
一瞬だけ。
ほんの少しだけ。
ジェーンが、わずかに頷く。
——それだけ。
十分だった。
そっと。
触れる。
指先が重なる。
離さない。
握るわけでもなく、でも確かに繋がっている。
「……」
ジェーンは何も言わない。
でも、離さない。
少し離れた影。
「うわ……」
小声で息を呑む
シェドレツキー。
「成立したな」
静かに言う
デュセッカー。
「ついにだよ……」
「長かったな」
そのさらに後ろ。
腕を組んで見ている
ビルダーマン。
「……良い結果だ」
なぜか満足げ。
「帰るまで」
ジェーンが小さく言う。
「はい」
「……このままでいい」
「……はい」
それだけで、十分すぎた。
夜の静かな道。
ぎこちないけど、確かな距離。
まだ始まったばかりの関係。
でも。
ちゃんと繋がっている。