テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
付き合って、最初の休日。
「……ここでいい」
ジェーンが指定した待ち合わせ場所は、少し落ち着いた街の一角。
人はいるけど、騒がしくない。
(ちゃんと“デート”だ……)
ジョン・ドウは少し早めに来て、そわそわしていた。
(今日はちゃんと恋人として……)
意識した瞬間、余計に緊張する。
「……来た」
振り向く。
ジェーンが歩いてくる。
いつもと同じ黒い服。
でも、どこか少しだけ整って見える。
(気のせいじゃない……)
「おはようございます!」
「……声」
「すみません!!」
でも。
ジェーンは少しだけ目を細める。
「……早い」
「待ちたかったので」
「……変わってる」
でも、否定じゃない。
「じゃあ——」
歩き出そうとした、その時。
「へぇ〜」
知らない声。
「これが例の“ジョンくん”? 」
「……っ」
ジェーンの動きが止まる。
振り向くと——
そこにいたのは、
紫の髪をアップにまとめて、紫のパーカーを着た女性。
少しラフで、でも鋭い目。
「……なんでいるの」
ジェーンが低く言う。
「たまたま」
即答。
明らかに嘘。
「紹介してよ」
にやっと笑う。
「気になるでしょ、妹の“デート相手”」
「デートじゃない」
「へぇ〜?」
完全に見抜いてる顔。
「……ジョン」
ジェーンが小さく言う。
「はい」
「姉」
「え」
「ブライト・アイズ」
——ジェーンの姉。
ブライト・アイズ。
「ど、どうも!!」
反射で頭を下げる。
「ジョン・ドウです!!」
「お〜、礼儀いいね」
ブライトが楽しそうに笑う。
「緊張してる?」
「してます!!」
「正直でよろしい」
完全にペースを握られている。
「で?」
ブライトが腕を組む。
「どこ行くの?」
「……言う必要ない」
ジェーンが即答。
「いいじゃん、ついてくよ」
「来るな」
「やだ」
即決。
「え」
ジョンが固まる。
数分後。
なぜか三人で歩いている。
(なんでこうなった……)
「いや〜いいねぇ、青春」
ブライトが横から覗き込む。
「手とか繋いだ?」
「……」
ジェーン無言。
「……っ」
ジョン固まる。
「図星か〜」
楽しそうすぎる。
「で、ジョンくん」
「はい!」
「うちの妹どう?」
「えっ」
突然すぎる質問。
「ちゃんとしてるし、怖いし、近寄りがたいでしょ」
「……」
ジェーンが睨む。
「でも」
ブライトがにやっとする。
「それでも好きなんだ?」
「……はい」
一瞬迷って、でもはっきり答える。
「……」
ブライトが少しだけ目を細める。
「へぇ」
少しだけ真面目な顔。
「いいじゃん」
軽く笑う。
「気に入ったかも」
「……勝手に決めないで」
ジェーンがぼそっと言う。
その時。
「……ここ」
ジェーンが立ち止まる。
目的の店。
落ち着いた雰囲気のカフェ。
(ここでやっと2人……)
「じゃ、あたしここまででいいや」
ブライトが手をひらひらさせる。
「え?」
「さすがに邪魔しすぎると怒られるし」
ちらっとジェーンを見る。
「もう怒ってる」
「でしょ」
笑う。
「ジョンくん」
最後に少しだけ近づいてくる。
「妹、扱い難しいけど」
小声で。
「ちゃんと見てあげてね」
「……はい」
真剣に頷く。
「よし」
満足げ。
「じゃ、楽しんで」
そう言って去っていく。
静かになる。
やっと、二人だけ。
「……すみません」
ジョンが小さく言う。
「なんで」
「いやその……」
「別に」
ジェーンは少しだけ息をつく。
「慣れてる」
「そうなんですか……」
「……ああいうの」
少しだけ間。
「嫌いじゃない」
「え」
「……騒がしいのも」
ほんの少しだけ、口元が緩む。
「行く」
「はい」
並んで歩き出す。
今度こそ、本当のデート。
さっきより、少しだけ距離が近い。