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第6話:「学園祭近づく!?ツムといちか、コラボの予感!?」
「学園祭のポスター、いちかに描いてほしいってー!!」
ある日の放課後、美術部顧問がいきなり言ってきた。
「えっ、マジですか?」
「うん、演劇部からの依頼でね。テーマは“青春と逆転”らしいわ」
「……どういう劇か予想つかんな…」
しかも、ちゃんとした部員が私ひとりしかいない今、実質全責任を負う美術部の若きエース=私である。
でも描きたい。ワクワクする。
だけど——
「どうしよ……キャラデザ、ちょっと詰まりそうやなあ……」
机の上に構図ラフを並べて、頭を抱えてると……
「困ってるいっちゃんに現れるのが、俺・宮侑!!!」
「でた!元気な金髪!!!」
「俺、構図案出したろか? 題して、“青春と逆転と俺”」
「最後余計や!!!」
ツム、もはや日替わりスタッフみたいに登場してくる。
最近は「筆洗い番長」とか名乗って、筆洗うのめっちゃ速い。
「でもさ、俺な、ちょっと案あるんよ」って、侑がドヤ顔して言ってきた。
「え?どんなの?」
「シルエットに男女の後ろ姿があって、
でも男の方が“陰”で、女の子が“光”の方に走ってる感じ。
けど、ふたりの影がちゃんと重なってて——
って、なんか……ポエミーか!?!?」
「いやちょっと待って、それめちゃくちゃ良いぞ!?」
「マジ!?!?まさか俺、美術部向き!?」
正直、ツムの案、すごくよかった。
ぐっと世界観が固まって、アイデアが一気に広がった気がする。
「……ツム、ありがと。マジで助かった」
「えっ、なにそれ、俺、今、役立った!?
北さんに“美術室では空気になれ”って言われてた俺が!?」
「どんだけ扱い雑やってん」
でも、私が笑ったら、ツムがすごく嬉しそうに言った。
「……いっちゃんが笑ってくれるだけで、俺もうポスターの一部なった気分や。
もはや背景や。背景の空くらいでかいやつ」
何言ってんだこいつ。
「つまり、存在感MAXやん!!」
「ツッコミに疲れるからもう少し静かにしてくれ」
……だけど。
こんな時間、悪くない。
一緒に何かを作るって、すごく、近い。
ただの“見るだけ”じゃなくて、
今、ツムと私は隣で同じ景色を描いてる。
それがちょっと、心のどこかを温かくした。