「私の可愛いアマラはどこだ?」 聞き覚えのある声に、私ははっとして目を覚ました。
「この辺りにいるのは判っているのだ。私が迎えにきたのだから、どうか隠れていないで出ておいで」
ああ、お懐かしや。あの方の声がする。私はかつてあの方の愛を受け入れた身。若く、美しかったころの自分を思い出しました。と、同時にすっかり変わり果ててしまったこの身の上を恥じたでのす。
あの方は、春のぬかるんだ地面の上を行ったり来たりとしながら、私を探します。私はというと、あの方が踏みしめる地面の、もっと深いところにいて、口許を両手で塞ぎ、声を出さないようにしながら息をひそめていました。
「タマラよ、よもや私をお忘れか?」
愛しいあなた様を忘れるなど、どうしてできましょう。ですが、どうか私を諦めてくださいまし。念じた心は今にも張り裂けそうです。
ですが、このように朽ちた体を晒したところで、誰が視たって目を背けるような酷い有様ですから、きっと私への愛も冷めましょう。
ほどなくして、愛しいあの方は、落胆のため息をつきながら来た道を引き返してゆきました。
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