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なんだか、急に呼吸が荒い
心臓がうるさいくらいにドクドクと音を立てていて自分の鼓動が耳の奥で響いているようだった。
さっき、仁さんに薬を飲んだばかりだと言ったのに、体の熱っぽさは全く引いていない。
むしろ、じんわりと内側から熱が上がってくるような感覚が
どんどん強くなっている気がした。
ヒートの波が、思ったよりも早く、そして強く押し寄せている。
仁さんのあの「危ないし」という言葉が、頭の中で何度も反響する。
俺のフェロモンが漏れていたのだろう。
仁さんの服。
無意識のうちに、俺の視線は部屋の隅に置かれた洗濯カゴへと向かった。
さっきまで、そこには仁さんの匂いが染み込んだ服があった。
しかし、もう彼の手に返してしまった。
俺の体を包み込んでくれた、あの温かい匂い。
もう一度、あの匂いを嗅ぎたかった。
あの時、仁さんが「もう2着ぐらい貸そうか?」と言ってくれたのをどうして断ってしまったんだろう。
今からまた、仁さんの部屋に行って
「やっぱり服、貸してください」
なんてそんなこと、口が裂けても言えるはずがない。
でも、このままだと本当に辛い。
全身を蝕むような熱と、体の奥底から突き上げてくるような衝動。
こういうとき、番がいるオメガならアルファとセックスをしてこの苦しさを抑えることができるのだろう。
でも、俺にはそんな存在はいない。
ましてや、仁さんにそんなことを頼めるはずもない。
たとえ、どれだけ体が熱く、理性を保つのが難しくなっても、そんな選択肢はありえない。
どうにかして、この熱を鎮めなければ。
そう強く思った時
俺の頭の中に、たった一つの
でも最も原始的な解決策が浮かんだ。
少しでも、この苦しさを抑えるために、俺はゆっくりと立ち上がり寝室へと移動した。
この部屋は壁が薄い
隣室の仁さんに、絶対に聞かれてはいけない。
恐怖と羞恥が入り混じったような感情が、俺の全身を支配する。
プルプルと震える手で俺は自分の服のボタンを外し始めた。
一枚、また一枚と慣れない手つきで生地を剥いでいくたびに熱を帯びた肌に触れる空気がひやりとして
そしてすぐに粟立った。
その瞬間、ぞわりと全身に鳥肌が立ち
まるで微かな電気がるかのような感覚が背筋を貫
く。
理性では止められない衝動が、身体の奥底から込み上げてくるのが分かった。
「…はあ、はぁ……」
汗ばんだ指先が、自分の下着のウエストゴムを震えながら掴む。
ゆっくりと、それはあまりにもゆっくりと腰から引き下ろしていく。
布地が肌を滑り落ちるたびに内側から湧き上がるどうしようもない熱が肌を一層火照らせていくのが分かった。
まるで、肌の表面に薄い膜が張られたように、じんわりと汗が滲む。
下着が膝を滑り落ち、足元に落ちた瞬間
熱を帯びた肉棒が、自重でぶら下がるようにその全貌を露わにする。
根本は既に硬く熱を帯び
僅かに先端からは透明な液が、まるで懇願するかのように滲み出ているのが見て取れた。
(だめだ…だめだって……)
声にならない懇願が、喉の奥で詰まる。
唾をゴクリと飲み込み、震える指先で自分の熱い肉棒をゆっくりと扱き始めた。
滑らかだったはずの肌は、既に汗と
抑えきれない欲でしっとりと濡れ、触れるたびに
ねっとりとした甘い快感が指先に絡みつく。
熱い。焼けるように熱い。
全身の血が、まるで一つの目的に向かうかのように、その場所に集まっていく感覚だ。
ドクン、ドクンと血管が脈打つ音が
まるで心臓そのものがそこにあるかのように鼓膜の奥で響き渡る。
ヒートの波が、理性という名の
かろうじて保っていた堤防を乗り越えようと内側で激しく暴れ狂う。
抗うことのできない本能が、俺の理性を食い破ろうと、獰猛な獣のように襲いかかってくる。
口から漏れそうになる
情けない喘ぎの息を、必死で片手で覆い隠す。
自分の指が、唇に食い込むほど強く押してられているのが分かった。
奥歯を強く食いしばり、眉間には深い皺が刻まれる。
あらゆる音を吸い込もうと、集中する。
聞こえるのは、自分の荒い呼吸と皮膚と皮膚が擦れる、じっとりとした粘つくような音だけ。
それが、まるで遠くで聞こえる波の音のように
俺の意識を抗いようもなく深みへと誘っていく。
それだけでは足りない。
どうしても、もっと深く
俺自身を侵してほしいという衝動に駆られて
肉棒から手を離して、自分の後ろに指を一本そっと挿れてみる。
キュッ、と締め付けられるような
最初は抵抗するような感覚が、体の奥の普段触れられない場所に直接響き渡る。
ぞくり、と背筋を這い上がるような甘美な連れに思わず全身が激しく震えた。
普段とは違う
未知の刺激に、思考が完全に麻連していく。
頭の中が、押し寄せる快感と
どうしようもない罪悪感と
そして鮮明すぎる仁さんの残像で
ぐちゃぐちゃになり、全てが溶け合って混ざり合う。
仁さん……っ
脳裏に浮かぶのは、仁さんの顔だった。
いつもは無愛想なのに
ときおり優しく、どこか困ったように笑う彼の顔。
俺をあの時、抱きしめてくれた腕の感触。
仁さんの落ち着く匂い。
ダメだ、そんなことを思ってはいけない。
仁さんは、俺にとって、ただの友人だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
ただ、それだけのはずなのに、どうしてこんなにも、彼のことで体が熱くなるのだろう。
まるで罪を犯しているかのような罪責感がじわじわと胸に広がる。
こんなことを、もしさんが知ったらきっと軽蔑するだろう。
その視線を想像するだけで、全身の血が凍るように冷たくなる。
「ダメだ……っ、はあ、はぁ…」
そう心で唱えても身体の熱は
仁さんを求める渇望は、ますます募るばかりだった。
指の動きはもう自分の意志とは関係なく、ただ快感を求める本能のままに動いている。
汗ばんだ指が、ねっとりとした音を立ててアナルを往復する。
快感の波が、全身を何度も何度も駆け巡り、意識が遠のく。
必死に耐えているのに、口からが止めどなく垂れてくる感覚があった。
それは自分の意志とは関係なく
ただひたすらに、身体が求めるままに分泌されている。
声が漏れないように、必死に歯を食いしばる。
額には、脂汗がにじみ出ていた。
視界がぼやけ、焦点が定まらない。
もっと、もっと、と体が強請る。
指の動きがどんどん早くなり、呼吸は限界まで引き上げられた。
理性はもはや形骸化し、ただ快感だけを求めて動いている。
好奇心から指をもう一本増やしてみると一気に圧迫感が増した。
しかし痛みはない。
むしろもっと気持ちよさを求めて更に奥に指を押し込む。
脳に火花が散ったような感覚になり、意識が消えかける。
もう自分が何をしているかもわからない。
ただ、本能のままに快感を貪った。
指が激しく上下する度に水音が激しくなり、いやらしい音が響き渡る。
頭が真っ白になって何も考えられない。
もう限界だった。
(…….ダメだ、イク…!)
その瞬間、視界が閃光に包まれた。
全身が痙攣し、足がピンと伸びる。
指がさらに奥を突いた瞬間、脳まで焼かれるような熱が走った。
呼吸は荒れに荒れて、肺がきしむ。
喉の奥がヒューヒュー鳴りそうなのを、必死に食いしばって抑えた。
身体は重く、けれど浮いているような錯覚に襲われる。
(声は出すな…っ、声だけは……絶対に…っ)
そう言い聞かせても、身体の反応は止められなかった。
手の先、つま先
そして胸の奥まで、鋭い衝撃が突き抜ける。
長くせき止めていたダムが崩壊するようにそれは一気に溢れ出た。
理性が崩れる音が、耳の奥で響く。
「…….ッ、ああっ……!」
不意に、喉の奥から押し殺しきれなかった
あまりにも情けない、しかし甘く
そして淫靡な声が小さく
けれど、これほどまでに確かな声が俺の口から、意志とは裏腹に漏れてしまった。
それは、静まり返った部屋に
まるで凍りついた空気を切り裂くかのようにくっきりと響き渡った。
その声が、自分の耳に届いた途端
全身の血が、瞬時に氷へと変わったかのような感覚に襲われる。
しまった。
その瞬間、俺は一瞬にして
先ほどまで全てを支配していた
あの灼熱の快感の波から、無情にも現実という名の冷たい水の中に引き戻された。
背中に冷たい汗が流れ落ちるのが分かった。
いや、もうすでに全身が凍えるような汗でびっしょりになっている。
心臓が、まるで爆発したかのように大きく、不規則に跳ね上がる。
ドクン、ドクン、ドクン…と、鼓膜を突き破るような激しい鼓動が
まるで部屋中に響き渡っているかのように錯覚す
る。
耳鳴りのように、その音が脳を揺さぶる。
途端に、全ての快感が嘘のように消え失せ
代わりに全身を駆け巡ったのは、尋常ではないほどの緊張だった。
頭をぶんぶん振って、現実から目を背けようとす
る。
が、その声は、確かにこの部屋の空気を震わせた。
そして、俺の鼓膜に、あまりにも鮮明に焼き付いている。
一瞬で冷めきった意識の中で、耳が異常なまでに敏感になる。
それでも、俺の胸を占めるのは
もし、誰かに聞かれていたら
もしも隣の仁さんに聞かれていたら、という拭い去ることのできない不安だけだった。