⚠️ご注意下さい⚠️
がっつりのR18ものではありませんが、
優里さんが鈍感ちゃんのTASUKUに、
自分を意識して欲しいという、
アピールの一環でちょいちょいボディタッチ絡みしてます。
嫌悪感や苦手意識がある方はご遠慮ください。
星崎視点
謎の視線のせいで僕はあまり熟睡できなかった。
寝起きで顔を洗うと鏡に酷い顔をした自分が映る。
こんな顔を見せたら深瀬さんに心配させてしまうと焦った。
でも焦ったところで目の下のクマは消えてなくならない。
適当な服に着替えると、
せめてものボロ隠しとして、
10分で効果が切れる使い捨てのマイマスクでケアをする。
じわじわと目元が温かくなり、
血流がほぐされていく気がした。
これで誤魔化すしかないな。
ただでさえ心配させたくない人なのに。
ピンポーン
「はい?
あ⋯ふーさん。
ちょっと待ってください」
一度玄関を閉めてから、
ルームチェーンを外して、
深瀬さんの応対をする。
やはり目元で気づかれたのか、
表情が一瞬固くなったが、
あえてそこには触れずに、
アパートから僕を連れ出してくれた。
「こういうのやりたいとかあるの?」
「ロックなフレーズと敢えて、
アルペジオを組み合わせて曲を作ってみたいですね」
発想が自分でもトリッキーだと思う。
だが型にハマる音楽ではなく、
自分にしか表現できない音楽を追求したいのだ。
「へぇ〜⋯それは面白そうだ」
深瀬さんは優しい。
だからこんな斬新すぎる発言をしても、
すんなりと受け入れてくれる。
他の人だとこうはいかない。
セオリーを壊しすぎて言語道断だとか、
音楽の基礎をわかっていないだとか、
なかなか理解してもらえないのだ。
僕は音楽の感性が破壊的なのだろう。
その後は一変して、
飼ってみたいペットの話になり、
かなり踏み込んだパーソナルな話題に変わった。
「せーの⋯猫!」
「犬!」
「え!?
ふーさんって犬派だったの?」
こんなどうでもいい話で笑い合えている間は、
余計なことを考えなくていいからかなり気が紛れた。
周りから向けられる視線が怖いとか、
相手が特定できていないため、
逆恨みなのかストーカーなのか原因がわからない。
その不安を深瀬さんが、
優しさで拭い去ってくれた。
しかしその一方でただの後輩のためだけに、
普通ここまで親身になるものだろうか?という、
疑問は拭いきれなかった。
(僕の存在はふーさんの負担になってないのだろうか?)
僕が困るとすぐに対策を練って、
いつでも助けてくれた。
そのことに関してすごくありがたい。
世話焼きな先輩だなとは思うが、
僕はそう言った行為基、
深瀬さんの優しさを受け取るばかりで、
返せているのだろうかと不安になるほど、
却ってよくしてもらいすぎている感じが否めなかった。
そんなことをウダウダ考えているうちに、
深瀬さんが運転する車を慣れた手つきで、
近くの駐車場に停めて店まで二人で歩く。
「なんか⋯久々にゆっくりするな〜」
「そうなんだ。
俺も仕事が詰まってたから同じだよ」
そんな話をしていると店が見えてきた。
店先に誰か立っているのが見えた。
あれ⋯優里さんがもう来てる?
早いな。
一人だけ待たせてしまい、
なんだか申し訳なくなった。
これは謝った方がいいーーーー
「えっ⋯もしかして優里くん!?」
僕が声をかけるよりも先に深瀬さんが反応してしまい、
僕は思わず言葉を飲み込んだ。
「馬鹿!
声がでかい」
よく見ると一般人の通行人から何事かという、
不審そうな視線を向けられた。
深瀬さんは僕の友人が優里さんだとは、
顔を近づけないと分からなかったのか、
優里さんは完璧にオーラを消した変装姿だった。
深瀬さんが自分の声で優里さんが危うく、
身バレしそうになったと焦ったのか、
口を開きかけた。
しかしそれよりも先に声を出した人がいた。
「⋯⋯⋯なんで」
そちらに目を向けると、
驚きながらもショックを受けたような表情をする大森さんたちがいた。
そしてその視線は紛れもなく、
僕に向けられていた。
わざわざ会う日をずらしたというのに、
ここで遭遇するとは思っていなかった。
「今日話がしたいって誘ったら予定あるって言うから、
てっきり仕事だと思ってたのに⋯⋯」
「ぁっ⋯⋯⋯」
まずい。
いっそのことどうにかして誤魔化すか?
こういう時に限って、
うまい言い訳が全く浮かばない。
適当に逃げたい。
正直かなり気まずすぎた。
その空気を優里くんが一変させるように、
敢えて明るく弾んだ声で言う。
「ならこのメンツでメシ食えば良くね?」
「俺は構わないけど⋯⋯」
僕を置いてどんどんと話が進んでしまい、
逃げ場がなくなってしまった。
それでもミセスメンバーと食事なんてしたら、
ひたすら黙食になりそうだったので、
優里さんが提案した相席は正直助かった。
「優里さんがいいなら」
あれ⋯なんだろう?
大森さんの様子がおかしい。
視線が鋭くなったと言うか、
表情がかなり険しくなったような?
しかしそれはほんの一瞬のことだった。
軽く目が合うと人当たりのいい顔で笑っていたので、
やっぱり考えすぎかと思い直した。
(気のせいだよね)
そもそも誰とでもすぐに打ち解けるような、
万人受けする人柄を持っている大森さんが、
優里さんと険悪な関係にあるだなんて、
そんな噂も耳にしたことがなかった。
この二人は共演NGではなかったはずだが、
一体どんな関係なのだろうか。
などと勘繰ってしまうが、
とりあえずいつまでも、
店先で屯しているわけにはいかないので中に入った。
「いらっしゃいませ!
あの⋯いま座敷席の一つしか空いてませんが、
そちらでもよろしいですか?」
活気のあるよく通る声が響いたかと思えば、
申し訳なさそうな小声で、
愛想のいい接客をする店員が空き状況を説明した。
「大丈夫です」
優里さんがそう答えて、
僕たちはすぐ席に通された。
8人は余裕で座れそうな広々としたところで、
小上がりの座席は畳張り、
机の下はポッカリと穴が空いた掘り炬燵だった。
ごゆっくりという声がかかり、
店員が去っていく。
「い草だ。
畳の匂いって落ち着くな⋯」
「お前は匂いフェチか」
その自覚はなかったが、
匂いは思い出と結びついているようには感じていた。
例えば畳と線香でおばあちゃんの匂いとか、
畳と煙草とお酒でおじいちゃんの匂いとか、
そんな感じだ。
二人共もう亡くなっているから会えないけど、
匂いで思い出したら、
物理的に会えた心持ちがする。
だから僕は匂いに執着しているのかもしれないなと思った。
その人を失っても忘れないために、
記憶に匂いを刷り込んでおきたい願望の表れだろう。
「あ⋯こういうのって、
確か上座とか下座とかあるんだっけ。
僕はどこに座ればいいですか?」
適当の場所に座ることができずに、
僕は思わずこの中で年長者である、
優里さんに助言を求めた。
「古臭っ!
固いこと言わずに座りたいとこでいいんだよ」
こういうところは優里さんらしい。
あくまでも好きなようにすればいいと、
こちらに選択肢を譲ってくれる。
彼はこういった、
相手に気を使わせない気遣いができる人であった。
だから一緒にいて一番、
居心地がいいのも彼の隣だ。
結局右奥から深瀬さんが座り、
その隣に僕、
優里さんが座り、
さらにテーブルを挟んで左奥から若井さん、
藤澤さん、
大森さんという順番で座ることになった。
早速メニュー表を広げる面々。
肉料理、
魚料理、
野菜や果物を使ったメニューなど豊富なラインナップが並ぶ。
選択肢が多いのはいいが、
なかなか絞り込めそうにはないため、
うんうんと思案顔で唸っていた。
「よし⋯⋯⋯決めたっ!」
しばらく悩んでようやく全員のメニューが決まった。
深瀬さんがベルで店員を呼ぶと、
優里さんがきちんと記憶していたようで、
全員分の料理と取り皿をさらっと注文した。
(全員分のメニューだなんてよく覚えきれたな)
こういう細かい気使いが、
意識せずとも何気げなくできるところが、
優里さんは人柄だなと思った。
「お待たせしました」
僕が頼んだのは優里さんと同じ定食もので、
ご飯と、
味噌汁と、
漬物、
そして丸鶏一羽分も使った蒸し鶏、
さらに色鮮やかなビーツのサラダもあった。
鶏は高タンパク、
そしてビーツにもビタミンB群やビタミンC、
ビタミンEなどが豊富に含まれているため、
スーパーフードとして有名だ。
タンパク質はビタミンCと一緒に摂取することで、
相乗効果を発揮して吸収率が高くなるのだ。
そのため効率よく栄養を摂ることができる。
味付けはポン酢とシンプルでトッピングに大根おろし、
少し荒めで無塩のクラッシュアーモンドがのっている。
一口蒸し鶏を頬張る。
パサつきがなく、
しっとりと柔らかい食感で、
口の中で解れていった。
(低温調理で処理でもしたのかな?
こんなにしっとりさせるのってかなり難しいんだよな)
目を閉じて堪能していると、
何故かふいに背中がゾクゾクとした。
「⋯んあぁっ!
ちょっとどこ触ってるんですか?」
「相変わらず背筋いいなと思ってさ」
そのゾクゾクの理由は優里さんが僕の背中に触れていたからだ。
僕が食べる時の基本スタイルは正座のため、
体制が崩れそうになった。
面白がっているのか揶揄っているのか正直よくわからない。
でもこういう悪戯はよくされていた。
しかし人前ではなく、
二人だけの時が多かったため、
僕は余計に驚いていた。
「見た目でわかることですよね?」
「んー⋯なんとなく?」
何故か曖昧に交わされた。
その後は何もなく、
この量で足りるのかとか、
味付けはちょうどいいかとか、
ひたすら料理に関する話ばかりをしていた。
「そういえば優里さんって細いですよね」
僕は最近体重が増えたため、
しばらくサボっていた、
ランニングを再開したばかりだった。
「ジムで鍛えてるからな」
僕はそう言う優里さんのお腹に触れる。
服の上からでも、
腹筋が割れているとわかるほど硬かった。
優里さんは俺と違って、
ボディタッチに慣れていないからか、
体がビクリと反応した。
「ジムかー⋯僕はそういうの続かないだろうな」
なんて独り言をボソリと呟くと、
今度は優里さんの大きな手が伸びてきて、
僕もお腹を触られた。
「確かに柔らかいな」
どうせ僕は割れてないさ!
走る距離長めにしようかな。
とはいえ急激に増やしすぎても、
体に負担がかかるから悩みどころだ。
「そういえば服って普通なんだね」
いきなり若井さんから突然そう話題を振られた。
深瀬さんも優里さんも変装しているから、
おそろくそのことだろう。
一方の僕は日本でTASUKUだからと、
声をかけられたことが一度もないため、
ラフな格好で特に変装らしい変装を全くしていなかった。
「向こうじゃ⋯⋯無理だけど、
日本は知名度低いから、
身バレしないんですよ」
そう答えるとああ、
と納得したような声が返ってきた。
大森さん相手だと半端ないほどに緊張して話せないため、
今まで若井さんや藤沢さんとも話したことがなかった。
そのためうまく話せるか心配だったが、
意外と話すことができた。
「oh…no! you TASUKU!?」
別の席のお客さんだろうか。
明らかに外国人らしい男性が僕に声をかけてきた。
え?
まさか身バレしないから平気だと言った、
その瞬間にファンに遭遇するなんて、
誰が予測できたんだ。
「い⋯yes」
「l mess you!」
「so happy!」
どうやらその人は、
英語圏の出身らしい。
例えプライベートでもファンとこうして、
直に触れ合えるのは嬉しいものだ。
「shake your hands?」
「sure!」
優里さんが隣にいるためぶつかってしまわないように、
気をつけながら僕は膝立ち状態になって、
ファンと握手を交わした。
(ヤバい。
嬉しすぎてニヤニヤが止まらないかも)
そのやり取りを見ていた藤沢さんが、
僕に質問をしてきた。
「英語の発音が綺麗だね。
ファン層もやっぱり海外の人が多いの?」
「まあ⋯そうですね。
ありがたいことに9割以上の方が海外勢です」
その割合は流石に想像していなかったのか、
藤澤さんはしばらく固まったまま絶句した。
その後もずっと他のメンツとだけ話して過ごしていた。
正直なところ大森さんと何を話せばいいのか、
全くわからなかったのであまり絡まれなくて、
僕はどこか安心していたのだがーーー
「優里さんは星崎と付き合い長いんですか?」
え?
急に僕の話?
それに本人いるのに、
どうして優里さんに聞いたのだろうか。
「お互いが下積み期間中に知り合ったから、
7年くらいだな。
ちなみに深瀬とは3年だよ」
大森さんとは緊急帰国してから知り合ったので、
せいぜい1ヶ月ちょっとくらいしか付き合いがない。
この中でもいちばん関係が短いので、
いまだに付き合い方がよくわからなかった。
「⋯⋯そんなに?」
大森さんは驚いたような反応を示した。
僕のことなんて聞いて何がしたいのだろうか。
どうにか今の話から大森さんの関心を逸らしたくて、
話題を変えようとした時、
その言葉が咄嗟に出てきた。
「路上と⋯缶コーヒー」
「うわ、
懐かしいなー」
よかった。
空気を読んで優里さんが、
すぐに反応してくれたので、
どうにか助かった。
大森さんが深掘りするように、
優里さんへさらに質問を重ねた。
「俺ね⋯最初こいつにナンパされたの」
「し、
してません!
勝手に話盛らないでください」
「本当ですか?
ジョークですか?」
(そんなん確認するまでもなく、
優里さんの揶揄いネタジョークに決まってんだろ!?)
頼むから鵜呑みにしないでほしいものだ。
面白がって適当のことばかり言う優里さんと、
何故か興味津々で前のめりな大森さんを、
ハラハラしながら見守る僕と言った、
ある意味カオスな状態になっていた。
大森さんを見ながら話すことはできないので、
目の前にいた藤澤さんに向かって僕は話し出す。
「僕は元々ピアニストだったけど、
優里さんの路上ライブ聞いて、
ギター⋯⋯格好いいなって」
懐かしいな。
そこからはギターリストになるために、
独学で猛勉強した。
そこからさらにアコギだけでは、
バリエーションが足りないからと、
さらにエアギターも同じく独学で習得し、
フィンランドのオーディション番組にて、
度胸試しでエアギター世界大会に参加したところ、
チャンピョンに選出された。
「マジっすか!?」
その話を聞いていた若井さんが、
興奮気味に食いついてきた。
「でも練習のしすぎで演奏した時は平気だったけど、
ステージ降りたら左手に激痛がきて、
病院行ったら疲労で骨折だった」
若井さんはその発言でポカンとしていた。
まあ確かにエアギターで骨折などあまり聞かない話だ。
動きを大きくしないと人の目をひけないため、
弾くフリでも体全身を使うため、
パフォーマンス後の疲労感は半端ではない。
「手はギタリストの命なんだから、
大事にしなきゃだめだろ」
さりげなく僕の手首を優しく撫でながら、
少し怒りと心配が入り混じったような声で囁く。
怒っているのは僕が無茶をしたからだ。
本当にどこまででも、
誰に対しても分け隔てなく、
優里さんは優しい。
「ごめんなさい。
でも今日はやたら触ってきますね」
「瑠璃夜の接触癖がうつったんじゃない?」
え?
本当にそれだけなのだろうか。
なにかおかしい気がする。
どこが?って聞かれても答えられないのに、
優里さんに少しだけ翳りを感じたような気がしていた。
雫騎の雑談コーナー
はいっ!
予告していた通りの食事会シリーズ3弾目です。
3人の誘いのうち深瀬さんと優里さんを優先して、
大森さんを蔑ろにしていたTASUKU。
そりゃあいくら優しい大森さんでも怒りますよね。
しかも相席まで抵抗するんですから。
でも好きだから怒れないっていうもどかしさが、
これで出てるのか?
ちょっと弱いのか?
さらに「優里さんがいいなら」発言で、
大森さんの視線が鋭くなったのも、
TASUKUに対しての怒りというよりは、
優里さんへの嫉妬丸出しです。
ちょっとかわいそうな気はするけどね。
なのに自分を取り合って、
そうなっているという認識ではなく、
二人がいわゆる「混ぜるな危険」的な、
険悪な関係だと勘違いしている始末です。
私が自分で書いてても思いますが、
本当にまどろっこしいですよね。
さっさとくっついちゃえばいいのに、
大森さんが向けている好意の「こ」の字もTASUKUには、
全くもって伝わってないんですね。
ということでラスト!
食事会シリーズ最終話はついに大森さん視点で展開しますよ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!