カステル家騒動
この世界は…数千年もの間、互いに憎み合う人族と魔族が大戦争を繰り広げている…。
魔族は魔王を旗頭として一致団結し、
人族はアシェラ教皇を盟主として、大陸中の人間国家が反魔族連合の軍隊に参加した…。
魔術や剣にスキルと言った物が振るわれるような戦争を千年間行い続けている大陸…。
その地は全ての種族の間でエルコンド大陸と呼ばれている。
そんなエルコンド大陸西部に存在する島国イステール連合王国…。
僕はそのイステール連合王国に仕える、カステル伯爵家の四男、オルドとしてこの世に生を受けた。
世間一般の人からすれば、
大貴族の家に生まれた僕は人生勝ち組だと思うかもしれないが、実際はそうでもない。
むしろ次は平民として産まれる事を切に祈る毎日だった…。
この国の貴族の間では稀に、
身体から鱗を生やした子供が産まれる事があり、国の法律によって、鱗を生やした子供は悪魔の象徴である蛇の使いであるからは、積極的に浄化しなくてはならない。
僕の国にはそういう決まり事がある。
そして僕の身体には鱗が産まれつき生えている…
後は何も言わなくても察してほしい…。
まぁ、でもそんな化け物の僕がここまで16年も生きていられたのは、普通に母と父の愛の賜物だ。
母さんは僕を家の地下室に隠して育ててくれたし、
父さんはカステル伯爵家当主として、全力で隠蔽工作をしてくれた…。
…二人には本当に感謝していて、いずれ二人の重荷になってしまっている自分自身とも決着をつけようと思ってる…。
そんな暗い思考に囚われていると、自室のドアから乱暴なノック音が響いた…。
「…オルド…そこに居るな…?」
少し疲れている様に聞こえたが、それは紛れもなく父さんの声だった。
「…はい、お父さん。」
僕が返事をすると、父さんは扉を開けて部屋に入ってきた。
「オルド…大変な事になってしまった…。
時間が無いから簡潔に言うが…お前の存在が国にバレた…。すぐに教会の聖騎士達がここに詰めよせて来るだろう…」
僕は全身から血の気が引いて、青くなっていくのを感じた…。
「そんな…!僕は…。」
「いいか?ここが一番大事な話だ…、よく聞いてくれ…。」
父さんは切羽詰った様子で言葉を捲し立てる、
僕はその様子にますます鼓動が早まるのを感じたが、口を閉じて耳をすませた…。
「お前、これは知ってるか?」
すると父さんは胸元から、薄い紫色に発光した四角いキューブを取り出した。
「これは使った者を此処ではない何処かへ飛ばす事が出来る、失われた聖遺物だ…。
お前は今すぐこれを使って、何処かへ逃げるんだ…。」
「…そんな…父さん…!!…僕一人で…どうしたら……」
「静かに…。……実は恐らく聖騎士が我が家を包囲している頃だろう…。
もうこれしかおまえが生き延びれる方法が無いんだよ…!……わかってくれ。」
僕は少しの間お父さんと抱擁を交わす。
「カステル家当主、ルイス伯爵。
貴公が穢らわしい悪魔の子を匿っている事は確認済みである!これは教会に対する不信行為だ!
即刻、投降しなさい。」
ドアを無理やりこじ開けようと、木が軋む音が聞こえる。
聖騎士が僕を殺しにやって来た。
父さんの手は震えていた。
父さんがこれ程 何かに怯えているのを見るのは初めてだった。
母さんにはもう会えないのかもしれない。
もうこれ以上親に迷惑はかけれない。
僕はその失われた聖遺物を受け取り、握り締めた…。
すると、忽ち紫色の閃光が辺りに満ち、僕の意識は遠のく。
その刹那、父さんの絶叫が耳にこだました。
続く。