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王国に向かう道のほとんどは砂地が占めている。だが少ないながらも、体を休める草地が所々存在していた。聞いた話では盗賊連中は冒険者パーティーの装備を草地で回収するらしい。


「草地は土の地面だからね。砂地は砂ばかりで休めない。魔物から逃げて、手をついて休めるのは草地だけってこと」

「砂だって同じでは?」

「それは駄目ですよ。流砂が起きる時がありますから助からないことの方が多い」

「流砂か。だから草地に逃げ込んでそのまま息絶えてしまう……そういうことか」

「男たちはそう言うんだけど、でもそこそこ強い冒険者たちがその場で全滅するなんてちょっと考えられないんだよね」


全滅した連中の装備だけを外して盗る――随分と調子のいい話だ。ルティが装備を見つけた時は放置してあったのを持って来ただけに過ぎない。何であれそれが盗賊連中の身を助けているのなら、これ以上詮索する必要は無いか。


「アック様、何か見えますです~」

「……?」


地下都市を出てからかなりの距離を歩いて来た。道中の途中は盗賊たちとすれ違い、声をかけられたりもしていた。もちろん途中で弱い魔物とも遭遇している。だが、肝心の冒険者パーティーとは一度も出会えていない。


レイウルム半島の地形は海に囲まれ、南北にまっすぐ突き出た半島だ。中央部の所々に森林があり、小さな山も見える。そんな森林の奥には流れる川や魔物の棲み処となっている湖があるようだ。


そのせいか冒険者のほとんどは山の洞窟を経由して、砂地から王国を目指すらしい。おれとルティが漂着した海岸は、半島の最奥部にあたると聞いた。地下都市は半島の中間に位置している。


地下都市からも遠く離れ、王国に近づいたと思っていたそんな時。小高い丘、あるいは盛り上がった土の辺りに人らしき影が動いているのが見えた。


「あそこは砦?」

「そんな、そんなはずは無いのに……。ここは余裕なき道。砦を作る余裕なんて……」

「アック様っ! 何か飛んで来るです!!」

「うっ?」


ルティは動体視力がいい。それに加え素早さに長けている。その彼女が庇うようにして、おれとアクセリナに覆いかぶさってきた。


「――!」


一瞬の出来事だったが、かろうじてアクセリナとおれはケガを負わなかった。


だが、


「はぎぅぅぅ……ちょっとだけ当たってしまいました~」

「お、おい、大丈夫なのか?」

「はひぃ~」


呪われていようが何だろうが、おれは多少なりとも装備を身に着けている。回復士アクセリナも回復士専用のチュニックを身にまとっていて防御力は高い。だがルティはメイド服エプロンのままだ。


今までの彼女は拳の強さと隙の無い攻撃もあって、ダメージを負うことが無かった。それがまさか不意打ちによる攻撃だけで負傷するとは思うはずも無く。様子を見るに、どうやら背中から腰にかけて何か所か当たってしまったようだ。


「――これは、毒のやじり……!?」


ルティに突き刺さった矢に対しアクセリナが驚いている。


「毒……?」

「ルティちゃんが今まで毒を受けたことは?」

「無い。というよりダメージそのものを負ったことは無いな」

「そ、それもすごいけど、問題はこの毒です。魔物から受ける毒じゃなくて、これは明らかに薬師《くすし》が調合したもので……」


ちょっとした油断だった。とはいえ、毒を受けたルティは苦しそうにしている。


「砦から見えている連中の仕業だとしてもだが、もしかして高レベル冒険者か?」

「ええ、おそらく」


ここまで歩いて来た前後の道は事前にサーチしていた。しかし危険は感じられなかったことで、敵やら何やらと細かくは見ていなかった。


それだけにまさかの奇襲に遭うとはな。


「悪いが、早く毒を取り除いてくれないか?」

「この毒は薬師によって作り出されたもの。回復魔法ではどうにも……」

「な、何とかならないのか!?」

「アック様~……大丈夫~ですから~……ふぎぅ」

「と、とりあえず、少しだけ後退して水のある所に……」


魔物からの攻撃ならまだ理解出来る。だが、よりにもよって冒険者から毒攻撃を受けるとは、完全におれの油断だ。


おれとルティはアクセリナに付き添われながら湖に近い森まで後退。湖には魔物が棲んでいるが、おかげで砦の冒険者が近づいてくるおそれは無かった。


抱きかかえたルティを素早く横に寝かすが、


「応急手当……体力を回復させるだけなら出来ますが、毒を出すとなると……」

「どうすればいい? おれに出来ることは無いのか?」

「お、お待ちください。考えますから!」


回復に関しては回復士に任せるしかない。おれもさすがに毒だけを取り除く魔法は分からないからな。最悪ガチャを引いて何か出来そうな気もするが……。


「アック様、それは駄目です~ほへぇ~」


ガチャをしようとする動きに気付いたのか、弱々しいルティがおれを止める。弱々しいその動きが何とも言えない。


「アックさん。ルティちゃんの服を脱がしてくれませんか?」

「――はい!?」

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