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シンヤたちがオルドレンに到着し、誇り高きCランク魔導師のアーシアとひと悶着を起こしてから数日後――


「ふふん。ついに私の実力を見せつけるときがきましたわね」


自信満々といった様子の少女が、Bランク昇格試験の会場を訪れていた。

少女の名はアーシア。

シンヤやミレアとはまた違った地域で名を上げている新進気鋭の魔導師である。

彼女は今回、このオルドレンで行われる昇級試験に合格することで、晴れて一流魔導師の仲間入りを果たすことを狙っていた。


「くっくっく。ようやく私にも運が向いてきましたわ」


アーシアは邪悪な笑みを浮かべた。

思えば、苦労してきたものだ。

それは魔物討伐に関するものではない。

女としての苦難であった。


「男に言い寄られるなど、まっぴらごめんですもの。だから私は、ずっとソロで活動してきたのです。なのに、あの忌々しいシンヤとかいう奴のせいで……」


アーシアは数日前のことを思い出し、歯ぎしりをした。

下賤な者たちが騒いでいたので、彼女は喧嘩両成敗とばかりにその場を収めようとした。

有象無象のチンピラ紛いの冒険者たちは彼女の雷魔法『スタン』により気絶させられたのだが、1人だけ平気な顔をしている者がいたのだ。

それがシンヤであった。


彼はあろうことか、アーシアに反撃してきた。

魔力を増強させる効果のある特殊な下着――黒のTバックを彼によってズリ下ろされたことで、彼女は実質的に無力化されてしまった。

さらにはその後の攻防で2人共がバランスを崩し、ノーパンの状態で彼の顔の上に騎乗してしまったのだ。


「本当に腹立たしいですわ。あんな変態野郎のことなど忘れてしまいましょう」


アーシアは首を左右に振った。

そして、意識を切り替える。

今は目の前の試験に集中しなくてはならない。


今回の試験内容は、大きく5つに分けられる。

1つ目は持久力試験。

2つ目が筆記試験。

3つ目が攻撃力試験。

4つ目が耐久力試験。

そして最後の5つ目が、総合力試験の模擬試合だ。

以上の内容で合否が決まる。


まずは最初の持久力試験に向けて、アーシアは集中力を高めていく。




「ふむ……。さすがは中級以上の冒険者が集まるだけあって、なかなかレベルが高いですわね」


アーシアは会場内の参加者たちを見回して、そう呟く。

Bランク昇格試験の参加条件は、Cランク冒険者であることだ。

当たり前だが、Bランク以上に昇格済みの者はいないし、逆に駆け出しのEランクやDランクも参加は認められていない。


Cランク冒険者は、中級である。

S、A、B、C、D、Eと6段階ある内の、上から4番目。

数字だけで言えばど真ん中よりもやや下なのだが、この階層はピラミッド型となっている。

Cランクが実質的な中級と考えて間違いはない。


Sランクは世界規模で見てもかなり少なく、下手な小国の王などよりも影響力は大きい。

Aランクも各国の騎士団や魔導師団の団長・副団長クラスの実力を持つと見なされる超精鋭だ。

Bランクが、そこらの村人や町民が憧れる現実的な夢であった。

とはいえ、実際にそこに至る者はごく少数なのだが……。


中級であるCランクに達した時点で、中小規模の街や村を拠点に活動する分には十分だと言えるだろう。

この城塞都市オルドレンには、そんなCランク冒険者がたくさん来ている。


「ですが、私ならなんとでもなるでしょう。先日も、私の『スタン』であっさり無力化できましたし……。あの憎きシンヤとかいう憎き男のことは忘れましょう」


Bランク昇格試験に挑む者たちは、前述の通り全員がCランク冒険者である。

だが、その中でもやはり実力の差は生じる。


Cランクに昇格した直後に勇み足でBランク昇格試験に挑む者もいるし、堅実にCランクで経験を積んでから挑戦する者もいる。

あるいは、活動拠点が田舎でありなかなかBランク昇格試験に挑む機会がなく、過剰とも言えるほど長い経験をCランクで積んでからようやく昇格試験に臨む者もいるからだ。


数日前の冒険者ギルドでの一件から判断するに、騒ぎを起こしていたチンピラ紛いの冒険者たちはCランク冒険者の中でも下位であり、アーシアは上位に食い込む実力の持ち主だと思われる。

ならば、Bランク昇格試験も問題なくクリアしていけるはずだ。


「まずは持久力試験ですわね。やや苦手な分野ですが……。逆にこれが1つ目で良かったと考えるべきでしょう」


アーシアの言う通り、最初に行われる試験は持久力試験だった。

1つ目の持久力試験、2つ目の筆記試験は、足切りの意味合いが強い。

極端に達成困難な基準は設けられていない。

3つ目の攻撃力試験、4つ目の耐久力試験こそが実質的な本番である。

魔導師のアーシアにとっては、万全を期せば十分に合格が狙える内容だ。

最後の5つ目の模擬試合に向けて、各試験を余裕を持って突破していきたい。

彼女がそんな風に考えている間にも、試験会場には続々と冒険者が集まってきているのだった。

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