「マナ、わかったよな?」
慌ててマナの頭を掴んで、頭を下げさせた。
「まぁ、いいわ。あとは明石くんに任せるわ」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、またね」
「はい、失礼します」
そして白鳥先輩たちは俺らを部室に残して出て行った。それと入れ替わりにゆずきが部室の中に入って来た。
「マナ、大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ! どうしてもっと早く助けてくれなかったの?」
「ごめん――」
ゆずきは謝りながらマナを起き上がらせてあげていた。
「圭ちゃん、私のこと〝コイツ〟とか〝五十嵐〟って呼んでたけど、どういうつもり? ふざけんなよ!」
「それは、しらとっ――」
「それに、私とはただのクラスメイトって言ってたし――。やっぱり本当はそんな風に思ってたんだ」
マナは冷やかな目で俺を見ていた。
「そんな訳ないだろ!」
「そうだよ、圭太はマナを助けようとして、あんな風にやってくれたんだよ!」
「誰がそんなこと信じると思ってるの! 私は土下座させられた上に、頭をふんづけられたんだから。冗談じゃないよ! お前らいい加減にしろよ!」
マナはゆずきの言葉にも耳を貸すことなく、怒りながら部室を出て行った。
「マナ――」
「とりあえず、この場は乗り切れたから良かったとしよう」
「そうだけど、マナのあの言い方許せないよ! 圭太はマナのために助けてくれたのに――」
「俺のことは気にすんなって! それより、ゆずきはマナの唯一の友達なんだから、これからもよろしく頼む」
俺はゆずきの肩に手をのせて、そう言った。
「わかってるけど――」
部室を出てからしばらくは、ゆずきは一言も話さなかった。何か考え事をしているような顔をしていた。
「どうした?」
「なっ、何が?」
「深刻そうな顔をしてるけど、何かあるのか?」
「そっ、そりゃ私だって悩みの1つや2つくらいはあるでしょ」
「そうだよな、普通あるよな?」
「当然でしょ!」
「俺に出来ることがあるなら言ってくれよな! 力になるからさ」
「あっ、ありがとう。でも、圭太にしてもらうことなんて何もないから――だっ、大丈夫だよ」
「そうか――でも、話したくなったらいつでも相談にのるし、助けるから言ってくれよ」
「相変わらず優しいんだ。でも、私は圭太と友達でいたいから言わないよ」
「何だよそれ。訳わかんねえ」
「いいよ、訳わかんなくて。そっ、それより、白鳥先輩とはどういう関係? お互い知った顔だったみたいだけど――」
「親同士の知り合いなんだ。それで以前から親しくしてもらってる。それだけだ」
「そっか、良かった」
「何が良かったんだ?」
「べっ、別に変な意味じゃないから! 私が言いたいのは、圭太が白鳥先輩と顔見知りだったおかげで、マナを無事に取り返せたってこと――」
「今回は無事で済んだけど、また飯塚にちょっかいを出すようなことがあったら、何をされるかわかったもんじゃない。でもマナのことだ、きっとあの男に会いに行くに決まってる」
「先生に相談した方がいいんじゃないの?」
「ダメだ。白鳥先輩の親も、マナの父親と同様に力を持ってる。学校に相談しても、もみ消されるのがおちだ」
「だったらどうしたらいいの?」
「学校が終わったら、もう1度説得してみる」
「私も一緒に行くよ」
「ゆずきは止めといた方がいい。嫌われるのは俺一人で十分だ。ゆずきは、これからもマナの味方でいてやってくれ」
「――――」