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朝の空気はまだ少し冷たくて、吐いた息が白くなる。
「さむ……」
💙はマフラーに顔をうずめながら、ゆっくりと通学路を歩いていた。まだ完全には目が覚めていなくて、足取りもどこかふわふわしている。
昨夜は遅くまでスマホを見ていて、寝たのはかなり遅かった。だから余計に眠い。
「……ねむ」
小さくつぶやいて、こすった目をもう一度閉じかけた、そのとき。
「おはよ」
後ろから、低くて落ち着いた声がした。
「……んわっ、」
びくっとして振り返ると、🤍が立っていた。
制服もきっちり着こなしていて、朝から余裕そうな顔。💙とは正反対だ。
「びっくりしたぁ……」
「そんな驚く?」
🤍は少しだけ笑う。
その笑い方は穏やかなのに、どこか人を見透かしているみたいで、💙はちょっとだけ落ち着かなくなる。
「おはよっ、〜」
「うん、おはよ」
自然に隣に並んで歩き出す。
💙は無意識に距離を詰めてしまう。寒いのもあるし、なんとなく人の近くにいると安心するからだ。
🤍はそれに気づいているのか、何も言わずにその距離のままで歩く。
「今日、めっちゃ眠そうだね」
「うん……昨日ちょっと遅くて」
「何してたの?」
「え〜っと、みんなと話してて……」
「みんな?」
「うん、はやちゃんとかじんととか……あとしゅんちゃんも」
その名前を出した瞬間、🤍の足がほんの少しだけ止まった。
「……へえ」
短い相槌。でも、さっきより少しだけ温度が低い。
💙は気づかないまま続ける。
「なんかずっと話しててさ〜、気づいたらこんな時間!?みたいな」
「楽しそうだね」
「うん、めっちゃ楽しかった!」
そう言って笑う💙。
その笑顔を見た🤍は、一瞬だけ視線を落とした。
「……そっか」
それだけ言って、また歩き出す。
少しだけ沈黙が流れる。
さっきまで普通だった空気が、なぜかほんの少し重い。
💙はその理由が分からなくて、でもなんとなく気になって、ちらっと🤍の横顔を見る。
表情は変わっていない。でも、どこか考え込んでいるようにも見える。
しばらく歩いたあと。
🤍がふいに立ち止まった。
「ねえ」
「ん?」
💙も足を止めて振り返る。
次の瞬間。
ぐいっと腕を軽く引かれて、距離が一気に近づいた。
「え、ちょ……!」
「誰にでもそうやって近づくの、やめたら?」
真っ直ぐな視線。
逃げ場のない距離。
💙は思わず言葉に詰まる。
「え……な、なんで?」
「なんでって」
🤍は少しだけ顔を近づける。
「勘違いされるよ」
低い声が、やけに近くで響く。
「……か、勘違いって?」
「分かってないの?」
少しだけ意地悪そうに目を細める。
「今みたいにさ、普通に距離詰めて、普通に笑って」
指先で、💙のマフラーの端を軽くつまむ。
「そういうの、簡単に期待させるから」
「……っ」
心臓が跳ねる。
そんなつもりじゃなかったのに、って言いかけて、でも言葉が出てこない。
🤍はその反応を見て、小さく息をついた。
「……無自覚なの、ほんとタチ悪いよね」
「ご、ごめん……」
反射的に謝ると、少しだけ驚いた顔をされる。
「なんで謝るの」
「だって、なんか……」
「別に責めてるわけじゃない」
そう言いながらも、視線は逸らさない。
むしろ、さっきより強い。
「ただ」
一歩、さらに近づく。
「俺はあんまり好きじゃないってだけ」
「……え?」
「他のやつにそういう顔してるの」
一瞬、頭が真っ白になる。
どういう意味か考えるより先に、胸の奥がざわつく。
「見ててイラつく」
はっきりと言われて、息が止まりそうになる。
「な、なんでそんな……」
「分かんない?」
少しだけ笑う。その笑い方は、余裕があるのにどこか意地悪だ。
「分かんないなら、そのままでいいよ」
そう言って、手を離す。
一瞬だけ距離が空く。
けど。
「ほら」
今度は肩に軽く手を置かれる。
「遅れる」
さっきまでの空気が嘘みたいに、いつもの調子に戻っている。
「……うん」
💙は戸惑いながらもうなずいて、また並んで歩き出す。
でも、さっきとは違う。
距離が近いことを、はっきり意識してしまう。
(なんなん、今の……)
頭の中で何度も言葉がぐるぐるする。
隣を見ると、🤍は何事もなかったみたいに前を向いている。
でも。
信号待ちで止まったとき、不意に視線が合った。
その瞬間。
ほんの少しだけ、満足そうに笑った気がした。
「……なに?」
「別に」
そう言いながら、また前を向く。
でも今度は。
💙の方が、目をそらせなかった。
.⋆𝜗𝜚☆