月明かりが揺れる、まだ少し肌寒い空の下。
ベランダに置いてある小洒落た椅子の上で三角座りをしながら、煙りを吹かす。
あぁ、暫くぶりだな、この味。 誰かさんに止められて、いつからか禁煙していたけど。
その誰かさんが仕事で家を空けて1週間。
恋しくなった。
この味を、彼を。
「まだかな、」
小さく呟いてみたら何だか口の中が不味く感じて、一口だけで灰皿に残りを押し付けた。
「ただいまぁ」
「おかえり」
久しぶりの仁人だ、そう言った彼は靴を履いたまま玄関先で俺を抱きしめた。
首筋で息を吸い込んでいるのを感じる。
よかった、この期間を寂しく思っていたのは俺だけじゃなかったんだ。
そう思うと何だか甘えたくなって、目の前の肩口に額をぐりぐりと押し付けた。
「なあ、仁人」
首筋に顔を埋めたまま、名前を呼ばれる。
ん?と続きを促すと、隙間のなかった身体をそっと離された。
「吸ったでしょ、煙草」
「、なんで」
なんで。たしかに吸ったけど、それは3日も前のこと。
「なんで、じゃない。吸わないでって言ったでしょ?」
「仁人にはずっと元気でいてほしいの」
そんなん言われたって。あなたのせいじゃん。
「だって…寂しかったんだもん、くち」
「くち、?」
「勇斗とこんな会えないの、はじめてだったし」
彼の服の裾をきゅ、と握る。
すると彼は、俺の手をとってそっと握った。
「でもさ、おいしくなかった」
「はやとが…いい、」
1週間以上も俺を放ったらかしにしたんだから、責任くらいとってくれよ。
「お前まじで…なんでそんな、かわいいの」
俯いていた顔を上げると、あまりに愛おしそうに俺を見つめる彼と目が合う。
頬をそっと撫でた手は、後頭部へと回って。
逃げ場なんて与えないみたいに、唇を奪われた。
「まずこのにおい、消して」
「…くさい?」
「ううん。でも俺以外のにおい、つけないで」
「じゃあ…連れてって。はやとのでいっぱいにしてよ」
「ん。当たり前だろ」
その日は久しぶりに、甘く深い夜を過ごした。
終わり方迷子。さすがにスランプ…
コメント
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ちょっとほんとにだめかもどたいぷすぎてやばい、喫煙者設定なのすばらしすぎる、佐野さん何故か分かるのすきすぎる、もーーー、みるちゃんさいこうすぎるありがとうだいすきがんばれる、🥹🥹💘