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凛道桜嵐 新
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がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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千歳は早速狭山さんに相談のLINEを送ったそうなのだが、なんだか話が大きくなってしまいそうだ。
狭山さんが千歳のLINEを見た時、狭山さんがいたのが、緑さんがいる建築事務所だったそうだ。で、偶然ながら佐和さんと九さんもその場にいて、二人の耳にも【千歳が俺の名前を呼べない】と耳に入ったらしい。
俺達につながった、狭山さんのLINEビデオ通話で、九さんは断言した。
「間違いなく、封印しとった時の術が残っとる」
『へ?』
千歳はぽかんとし、俺もぽかんとしてしまった。
『え、それでなんで、こいつの名前が呼べないんだ?』
千歳は俺を指さした。
「人の名前を妙な呪に使わせないためじゃな。まあ、お主が祠にいる前提の術式だったんじゃが……」
九さんは、眉毛を寄せつつ説明してくれた。
「少し前までは祠の管理をする者がいたからのう、お主から祠の管理をする者を守るためじゃな。お主に一番近しい者を名前で呼びかけられないようにすれば、お主は祠を世話する者の名前を使って呪をかけることができん」
『でも、ワシ、こいつにそんな、変なことしないし……』
千歳はまた俺を指差し、困った顔をした。
「それはよくわかっておる。術式を解ける者に連絡を取ってやる。ただ、のう……」
九さんは顎に手を当て、考える顔になった。
「最高水準の術式が、最高水準の怨霊の動きを制限している状態……うーん……」
俺は画面の九さんに話しかけた。
「何か、その術を解くのに支障があるんでしょうか?」
千歳の行動が制限されている、と聞くと、かわいそうだ。できれば解いてあげてほしいんだが。
九さんは答えた。
「解くのは問題ないんじゃが……解く前に、見せて勉強させたい人間がたくさんおる」
「勉強?」
「お主はあまり知らんじゃろうが、怨霊や悪霊はそこそこいて、対処する人間もそこそこおる。だからの、対処する人間にとっては、最高水準の術式が最高水準の怨霊を現役で縛っているところを見るのは、非常に勉強になるでの」
九さんは画面の右に目をやった。狭山さんらしき肩が映り込んでいる方向だ。
「そこの金谷の婿ものう、いい目を持っているが、焦点を合わせる経験がイマイチでの。急ぐ解呪でないなら、勉強会の教材になってもらえんかの?」
千歳は首を引っ込めた。
『見世物みたいになるのは、ちょっと、やだ』
「見世物ではない、いたって真面目な勉強の教材じゃ」
『それは、そうだけど』
「それに、人の勉強を助けるのは、大変な人助けじゃぞ。前言ったことは覚えとるか?」
『う……』
そう、千歳は九さんに、いい神様として祀られるためになるべく人助けをしろ、と言われている。
俺は千歳に話しかけた。
「千歳、いろんな人にたくさん見られるのは、確かに緊張するけど、勉強のためなら変な扱いはされないよ。ね、しませんよね?」
俺は、画面外に多分いる、緑さんや佐和さんにも聞こえるように同意を求めた。
緑さんが画面に入ってきた。
「それは絶対しません! あの、多分関西の人たちも見たがると思うから、ちょっと調整に時間かかっちゃうかもしれないんだけど、変な扱いは絶対させません!」
『……じゃあ、教材、なる』
千歳は、渋々ながら頷いた。
そういう訳で、千歳の、俺の名前を呼べない問題は話が大きくなってしまったのだった。
コメント
1件
おお、なるほど。千歳さんが名前を呼べない理由、まさか九さんが仕込んだ祠由来の術式だったとは……。設定の裏付けがしっかりしていて納得感がすごいです。「最高水準の怨霊を縛る術式」を教材にしたいという九さんの発想も、この世界の民俗学的なリアリティを感じさせて好きです。千歳さんが「見世物はやだ」と渋りつつも人助けになるからと承諾するところ、心情の動きが丁寧に描かれていてほっこりしました。緑さんが「変な扱いは絶対させません」と断言してくれるのも安心感がありますね。