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⚠痛いどころではない描写があります。
最終決戦 2
・・・・・・・・・・
《助ケテーッ!誰カ!誰カ助ケテェーーッ!!》
「!?」
『銀子ちゃん!?』
無一郎の鎹鴉の銀子が必死の形相で飛んできた。
《アッ、茉鈴!!》
愈史郎と行動を共にしていた茉鈴が銀子を受け止める。
《茉鈴!無一郎ガ!無一郎ガ…!》
『無一郎くんに何があったの!?』
無一郎が上弦の壱と対峙し戦っていることを説明する銀子。そして既に左手を失ってしまったことも。
《同ジ空間ニ悲鳴嶼サンヤ風柱ノ弟モイタワ!デモミンナ苦戦シテルノ!無一郎モ自分ノ日輪刀デ柱ニ串刺シニサレチャッテ…!》
『そんな!』
「おい。事情は分かった。そちらに行って構わない。護衛ありがとう 」
話を聞いていた愈史郎が茉鈴に紙を渡した。
『これは?』
「俺の血鬼術だ。これをつけていれば敵にお前の姿は見えない。早く仲間の助太刀に行ってやれ」
『ありがとう愈史郎さん!無事でいてね!』
「…ふん」
茉鈴は銀子の案内で、上弦の壱と戦う仲間たちのもとへと急いだ。
刀が…抜けない……。
左手が切断されているから残った右腕しか使えないし、刀が突き刺さっているのは右胸の上だから思うように刀を抜けない。
隠れていた玄弥が上弦の壱に向けて銃を発砲するが、瞬く間に両腕を切断され、胴体も上下真っ二つにされた。
「玄弥ーーっ!」
そこに不死川さんと悲鳴嶼さんが来て上弦の壱と戦う。
僕は必死で柱と自分を引き離し、右胸の上を貫通した刀を引き抜く。
「………っ!」
激しい痛みに声も出ない。そりゃそうだ。身体に穴が空いているんだから。
やっとの思いで患部に布を巻いて止血し、再び刀を握り締めて玄弥と共に上弦の壱のところへ向かう。
不死川さんは指を2本斬り落とされ、悲鳴嶼さんも全身血だらけだ。
片腕を失い失血も重なり、僕に残された時間はもう殆どない。
茉鈴…ごめん……。僕、ここで死ぬかもしれない。
…いや、まだだ。最後まで戦うんだ。まだ動けるうちに、役に立てるうちに…急げ!!
僕の意図を組んで、不死川さんと悲鳴嶼さんが動きを合わせてくれた。
3人で一気に上弦の壱との距離を詰める。
抜けろ!間合いの内側に入れ!
くぐれ!!折り重なった攻撃の隙間を!!
ドッ!!!
上弦の壱の身体に日輪刀を突き刺す。 それと引き換えに僕は片足を失った。
玄弥の南蛮銃から放たれた弾が上弦の壱の身体にめり込み、血鬼術で木の根を生やし、敵の身体を固定した。
そこに悲鳴嶼さんと不死川さんが攻撃を仕掛けたその瞬間。
上弦の壱がとてつもない咆哮と共に身体中から刃を出した。
あ…、死ぬ……!
そう思った。
“霞の呼吸・伍ノ型 霞雲の海”
ズギャギャギャギャッッ!!
敵の攻撃を刃で跳ね返すような音と共に、“誰か”が現れた。
!!…茉鈴…!
自分も使う呼吸と剣技を同じように使う彼女。姿は見えないけれど、茉鈴がいる!
相変わらず上弦の壱は刃を放っている。
ギィン!
ガガッ!
ガギィッ!!
飛んでくる斬撃を受けて流す。けれど別の刃を食らってしまったみたいだ。
ハラリ
何かが描かれた紙が落ち、茉鈴の姿が露わになった。
薙刀の日輪刀を持った、隠の格好の茉鈴。
『無一郎くん!』
「茉鈴…!」
まだ戦いの最中なのに、死ぬ前に茉鈴に会えたことに胸が熱くなった。
『岩柱様!風柱様!私も一緒に戦います!玄弥くんもしっかり!』
「宝生か!」
「助かるぜ、茉鈴!」
茉鈴が加わり、一気に攻撃を仕掛ける。
上弦の壱が出す斬撃を、刃を、日輪刀で撥ね退けていく。
敵の身体に刀を突き刺しているせいで動けない僕を庇いながら。
フウウウウゥゥ……
ズズズズズ……
「!?」
茉鈴の額や頬に、僕と同じ模様の痣が浮き出た。
鬼殺隊員が1人加わったのに、なかなか敵を倒せない。上弦の壱は今も鋭い刃を放ってくる。
ザシュッ!
ザクッ!
『…ゔっ…!』
「ああっ!茉鈴!」
茉鈴の右目がやられた。真っ赤な血が迸り出る。
覆面も剥ぎ取られて、顔も身体も傷だらけだ。
嫌だ!これ以上傷付かないで!僕が守らなきゃいけないのに!悔しい!!悔しい!!
だめだ。悲鳴嶼さんも不死川さんもきっと死ぬまで戦う。
だけどこの2人を死なせちゃいけない。
まだ無惨が残っているんだ。
みんなの為にもこの2人を守らなければ。
茉鈴のことも僕が守らなくちゃ!
早くこの戦いを終わらせるんだ!
死ぬなら役に立ってから死ね!!
布で右手に固定した日輪刀をぎゅっと握り締める。力いっぱい。
僕の白い刀身が赤く染まる。刀を握る僕の手に、茉鈴の手が重なった。そしてもう片方の手で彼女の日輪刀を上弦の壱の身体に突き刺した。茉鈴の硝子のように透明な日輪刀の刃もみるみるうちに赤く染まっていった。
不死川さんの刀と悲鳴嶼さんの鉄球もぶつかり合って赤くなる。
そして、ついに2人の刃で上弦の壱の頸が落とされた。
…なのに、まだ敵は死なない。
斬り落とされた筈の敵の頭が再生している。
なんでだよ!ここまでしても倒せないのか!?
上弦の壱は、角や棘を生やし、口は裂けて牙が飛び出し、目玉はあちこち向いて、この世の物と思えない程の禍々しい姿へと変貌を遂げた。
更に攻撃を仕掛ける不死川さんと悲鳴嶼さん。
その刀身に一瞬、上弦の壱の姿が映った。
その時だった。突然、敵の身体の一部が崩れ始める。 僕と茉鈴が刀を突き刺した場所だ。
上弦の壱は身体を再生しようにも、血鬼術を使おうにもできないみたいだ。
追い打ちをかけるように柱の2人が技を繰り出し畳み掛ける。
そしてついに、上弦の壱の身体は乾いた粘土のようにぼろぼろと崩れて消えていった。
ドサッ……
地面に倒れ込む僕と茉鈴。
ああ、終わった。勝ったんだ。上弦の壱に。
みんなで力を合わせて。
『…むいち…ろう、くん……』
「まりん……」
腕を伸ばし、僕の刀と固定した右手を再び握ってくれた茉鈴。右目を負傷した彼女は、残った琥珀色の瞳を潤ませて微笑んだ。
《カアァッ!行冥、実弥、無一郎、玄弥、茉鈴、上弦ノ壱、撃破!撃破ァッ!!》
《不死川玄弥、上弦ノ壱トノ戦闘ノ末、死亡!》
鴉からの報告に、知らせを聞いた隊員たちは喜ぶ者、涙を流す者、様々だった。
愈史郎は銀子の案内で先程無一郎たちが黒死牟と戦っていた場所に赴き、傷付いた彼らの応急処置を行った。
酷い有り様だった。無一郎は左手と左足を切断され、右胸の上に穴が空いていた。
実弥は指を2本斬り落とされ、内臓が飛び出してもおかしくない程の深い傷を負っていた。
行冥も身体のあちこち負傷し、その身体の大きさ故に早く止血しないと危ない状態。
自分を護衛してくれていた隠の少女は右目を負傷し、もう視力を取り戻すことは不可能だろう。
『…ぅ……』
気を失っていた茉鈴が目を覚ました。
『痛っ…!』
眼帯がつけられた目元に触れ、痛みに顔を強張らせる。
「眼球がやられてるからな。応急処置はしてある」
『愈史郎さん…。ありがとうございます』
辺りを見渡す茉鈴。
『あっ!無一郎くん!』
「出血が酷かったが、なんとか命は助かった。今のところはな。あとはこいつの生命力次第だ」
『ありがとうございます。よかった…!』
少年の頭をそっと撫でる茉鈴を見て、愈史郎は珠世を思い出していた。
「…!?おい、どこに行くんだ」
『まだ無惨が生きてる。行かなきゃ。またたくさんの仲間が死んでしまう』
「お前も傷だらけなんだぞ。片目も失くした状態で戦えるのか!?」
愈史郎の言葉も聞かず、茉鈴が立ち上がった。
『両目が見えなくなっても、手足がバラバラになっても、無惨を倒すまでは引けない。…愈史郎さん、無一郎くんのことを頼みます。私の特別大事な人なの』
自分の想い人はもういない。しかし、 まだ生きている彼らの未来を守らなければ。
「…分かった。無茶はするなよ」
『はい!』
走り出した茉鈴の背中を見送り、愈史郎はまだ気を失ったままの無一郎に気付け薬を投与した。
安全な場所に無一郎を寝かせ、愈史郎も無惨のところへ向かう。
そこは地獄絵図だった。大勢の隊士が無惨に食い散らかされ、食事によって力を得た無惨と戦い、呆気なく死んでいく。
生き残った柱5人も負傷し、ボロボロだ。
しかし、皆諦めなかった。手足が千切れても、血を吐いても、戦い続けた。
太陽が登り、巨大な赤ん坊の姿になった無惨は陽光に灼かれ、塵になって消えた。
岩柱、蛇柱、恋柱は息絶え、空へと旅立っていった。
それからがまた大変だった。無惨の細胞が残った炭治郎が鬼となり、つい先程まで共闘していた仲間たちと戦うことになってしまった。
人間に戻った禰豆子が必死に兄を止め、蟲柱の継子の少女が鬼を人間に戻す薬を炭治郎に打ち込み、ようやく彼はこちらに戻ってくることができた。
やっと、やっと。鬼殺隊は鬼の始祖を倒した。
多大な犠牲を払って。
生き残った者たちは仲間の死を悼む間もなく、遺体を安置し負傷者を蝶屋敷へと運び、戦いの後処理を行う。
ようやく手に入れた、鬼のいない平和な世界。しかし、生き残った者の心には一生消えることのない大きく深い傷が残った。
続く