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―僕を襲った男を雇ったのが鈴子だって?―
浩二の体はガタガタ震えた
―鈴子が?まさかっ―
今や浩二は真っ青になっていた、再びズキズキし出した腹の傷を片手で押さえた、全身で良平の言う事を否定しようとした
―いいや!彼女はそんな事をする女じゃない!・・・だが待てよ
寂しいと泣いて街宣にいかないでくれと浩二にすがる鈴子の顔が思い浮かんだ、講演会が多すぎるとむくれる鈴子の顔も思い浮かんだ、さらに自分に黙ってマネージャーの良平を呼びつけて、僕の講演会を減らすように命令した?それの損害分を払うと言ったのか?彼女が?
「あの女はお前に落選してもらいたがってたぞ」
浩二は良平の言葉にショックで倒れそうになった
―いったい何を考えているんだ!鈴子は―
・:.。.・:.。.
いくら待っても浩二が来ないため、鈴子は中華料理屋のディナーをキャンセルして、慌ててコンドミニアムに戻って来た
「浩二?いるの?」
玄関ドアを開けると、寝室から衣擦れの音が聞こえた、すると浩二は寝室で荷造りをしていた、まだ傷が治り切っていないため、ぶきっちょな動作でスーツケースの蓋を閉めている所だった、怒りのせいで乱暴な動きをしているせいか、額に汗が浮かび、息が荒い、そして顔色がすごく悪い
「ああっ!よかった浩二!いたのね、あなた連絡しても全然でないから私・・・」
鈴子は靴を脱ぎ散らかし、寝室に駆け込んだ、だがその時、浩二が振り向いた、浩二はまるで赤の他人を見るような目で鈴子を睨みつけた、瞳は凍りつき、唇が引き結ばれている
「今日で僕は出て行く」
鈴子は驚いて目を見開いた、ハッと息が止まる
「何を言ってるの?どうしたの?浩二?あなたはまだ良くなっていないわ」
浩二はスーツケースの鍵をカチリと鳴らし、立ち上がった、脇腹が痛むのか、わずかに顔を歪める