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インタビューは、さらに核心へと近づいていく。編集者は、二人の完璧な回答にすっかり気を良くしているのか、何の悪気もなく、次々と地雷を投下し続けた。
「では、逆にお互いに対して『もっとこうしたら良いのに』とアドバイスしたい部分はありますか?」
その質問に、スタジオの空気が一瞬だけ、ぴりついた。それは、数時間前の楽屋での口論の引き金になった、まさにそのものだったからだ。
渡辺は、一瞬だけ言葉に詰まった。脳裏に「もっとシンプルにやれば?」と言った自分と、「翔太こそ浮かれてる」と返してきた宮舘の顔が交互に浮かぶ。しかし、ここで黙るわけにはいかない。
「…いや、特にないですよ。彼は彼なりの美学で、常に完璧なパフォーマンスをしているので。俺が口を出すことなんて、何もないです」
それは、最大限の皮肉だった。「お前のやり方には口を出さない」という、暗黙の拒絶。
次にマイクを向けられた宮舘も、少しの間を置いてから、静かに口を開いた。
「…そうですね。彼も、常に自分の信じる道を突き進んでいる。その姿を、俺は尊敬しています。アドバイスなんて、おこがましいですね」
それは、最大限の突き放しだった。「お前の道と俺の道は違う」という、無言の宣言。
二人の間には、笑顔とは裏腹の、冷たい火花が散っている。
「なるほどぉ…では、少し質問を変えまして、お互いのキャラクターで『ここを真似してみたい』と思うような部分はありますか?」
(もう、やめてくれ…)
マネージャーの心の叫びも虚しく、インタビューは続く。
渡辺は、笑顔をキープしたまま答える。
「彼の、あの…ロイヤルなところじゃないですかね。俺には絶対真似できないんで。すごいなって思いますよ」
棒読みにならないよう、細心の注意を払って。
宮舘も、優雅な笑みを崩さずに返す。
「翔太の、誰とでもすぐに打ち解けられるところ、ですかね。彼のコミュニケーション能力の高さは、時々羨ましくなります」
プロとしての仮面が、今にも剥がれ落ちそうだった。インタビューの終わりは、まだ見えない。