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ヒリついた空気が最高潮に達した、その時だった。
「なるほどー…。それでは、少し視点を変えまして、メンバーさんたちについての質問に行ってみましょう!」
編集者が、雰囲気を変えようと明るい声を出した。それは、地雷原のど真ん中に現れた、一筋の細いあぜ道のように見えた。
「では、お二人から見て、Snow Manのメンバーの中で、一番『頼りになるな』と思うのは誰ですか?」
平和な質問。のはずだった。いつもなら、迷わず「照かな」とか「ふっか」と答えられるはずの質問。しかし、今の二人には、違う意味で重くのしかかる。
(今、こいつは誰の名前を出すんだ…?)
お互いに、相手の答えを探り合ってしまう。
先に口を開いたのは、渡辺だった。
「…やっぱり、照じゃないですかね。なんだかんだ、あいつが締めるところは締めてくれるんで」
楽屋での、岩本の「頭、冷やせ」という声を思い出す。それは紛れもない事実だった。
次に宮舘が答える。
「…俺は、深澤ですかね。彼は、いつもグループ全体の空気を読んで、バランスを取ってくれるので」
先ほど、自分たちを仲裁しようとしてくれた深澤の顔が浮かぶ。これも、本心だった。
しかし、お互いの名前は、決して出てこない。
「ありがとうございます!では、お次は…メンバーの中で、一番『面白いな』と思うのは誰ですか?」
(頼むから、もうやめてくれ…!)
マネージャーが天を仰ぐ。この質問も、一見すると平和だ。だが、今の状況では、答え方一つで棘が生まれる。
「…佐久間じゃないですかね。あいつの周りは、いつも笑いが絶えないんで」
渡辺が答える。
「…俺は、向井ですね。彼の作る空気感は、彼にしか出せないものなので」
宮舘が答える。
楽屋で一蹴してしまった二人の顔が、脳裏をよぎる。その答えは、まるで先ほどの出来事への、ささやかな罪滅ぼしのようにも聞こえた。
平和なはずの質問なのに、その答えの裏には、先ほどの喧含の記憶がべったりと張り付いている。インタビューは、穏やかな表情のまま、静かな地獄として続いていた。